読売新聞足利西部店を労働委員会救済申立て
2021年2月4日、群馬合同労組は、読売新聞足利西部店(株式会社辰巳)を不当労働行為で群馬県労働委員会に救済申立てを行った。2020年9月30日付でA組合員が解雇された不当性を争う。たかが新聞配達アルバイトの解雇かもしれない。しかしこの闘いは新聞配達労働者・新聞関連労働者の未来をかけた闘いだ。
そもそも新聞資本は、大きな危機・岐路に立っている。スマホ、インターネット、SNSの普及によって紙媒体の新聞購読数は減少の一途だ。そうなると新聞の利潤源である広告収入もネット広告に奪われる。そこに来て、この新型コロナ感染拡大で、広告収入が激減した。
販売店も同じだ。すでに、経営をあきらめて経営権を売却する経営者が増えていたが、今後一気にこの流れが進むだろう。新たにこの経営権を買い取る経営者は、これまでの常識を引っくり返して、激しく配達件数を上乗せした上、賃金の削減に走っている。借金を背負って住居にも困っている労働者を全国的に集め、文句を言う労働者を掃討して、とんでもない労働強化を強制し始めたのだ。
Aさんはまさにこれに直面した。
Aさんは読売新聞小俣店(栃木県足利市)で2012年から配達アルバイトで働いてきた。2019年10月にこの経営権が、読売新聞足利西部店を経営していた千葉県在住の栗野励氏が代表取締役を務める株式会社辰巳に売却される。前の店長代理からは給料は変わらないと説明を受けた。雇用主が変わるというきちんとした説明はなく、雇用契約書も労働条件の明示もなし。それどころか、新しい雇用主がどこの誰か、店の誰に聞いてもわからなかった。
2020年になって、配達部数が増える、賃金は下がるという話が店長からされ、賃金に遅配や不払いが出た。Aさんは群馬合同労組に相談して加入して闘う決意を固める。
組合は、ネット情報などから経営者が栗野氏だということはわかったが、会社名はわからない。栗野氏が経営している会社がひとつ判明したので、登記簿を取り、千葉県の会社住所に加入通知と要求書を送付した。
回答を待っていた2020年1月31日、A組合員は店長から突然2月からは配達部数は270から400に増やすと通知される。4人が辞めた。組合は、撤回を求め、強行する場合はA組合員の指名ストで闘うと緊急の通告を社長の自宅と足利西部店に行った。そのままストに突入。第1回団体交渉が開かれる2月13日までストライキと出勤時間深夜のビラまきを続けて、従業員にいっしょに闘おうと訴え続けた。
この闘いに動転した栗野社長は、組合に初めて電話で連絡をして、団体交渉に応じる。違法な部分には謝罪する、と応じた。雇用主が株式会社辰巳であると、組合は初めて知った。
それから2020年8月に入るまでは、栗野社長は、団体交渉で組合の要求に向き合い、就業規則の作成には組合の意見を受け入れながら、労働者代表としてA組合員の意見を付すなど、組合との合意を尊重する姿勢を示した。組合としても、新型コロナ感染拡大で店の経営が大変であることは理解するつもりだった。
ところが2020年8月に入って、状況が一変する。一つの転機は、A組合員が、休みと間違えて無断欠勤をやったこと、そしてその直前に8・6ヒロシマの反核行動に二日間の有給休暇を行使したことだ。
8月21日に予定されていた第3回団体交渉は、作成された就業規則と2回に渡る団体交渉に基づいて、労働条件の確定をするために設定されていた。ところが、会場の足利西部店に組合が行くと、社長はおらず、「春日」を名乗る人物が待ち構えていた。弁護士ではないが、弁護士事務所の者だと思っていい、などと言う。弁護士法違反であることは明白だが、労働条件の確定を急ぐために、交渉の席に着いた。後でわかったが、この人物は春日大輔といい、山梨県富士河口湖町で「株式会社ベストアイサポート」なる保険代理店を兼ねた経営コンサルタント業を営んでいる人物である。
春日大輔は、社長が雇用契約も結ばなかったのはたいへん問題であった、私は全員ときちんと雇用契約を結ぶために委任されたなどと言いながら、色々事情を聴いた。そして突然、A組合員の無断欠勤を問題にしだした。これは「欠配」だ、横領・着服に匹敵する大問題、これが読売本社に知れてしまって、本社の指導でA組合員を2週間自宅待機にしなければならない、と言い出したのである。そしてA組合員の給与水準は高すぎる、これでは店の経営が成り立たない、時給を元に計算するのではなく、元の足利西部店の従業員と同じ月給制でやってもらいたい、自宅待機中に反省しながら検討してほしい、というのである。組合は当然にも、それは受け入れられない、これまで労働条件について、話し合いを重ねて、就業規則まで協力して作ってきた、なぜそれを引っくり返されなければならないのかと話した。
8月30日に第4回団体交渉が開かれた。栗野社長、春日大輔、店長が出席。栗野社長と春日大輔は、月給制の労働条件通知書を作って用意していた。15万円を11万円に下げたものだ。冗談ではない。組合とA組合員は受け入れられないと拒否をした。すると、仕方がないと、別に用意していた解雇通告書を出してきた。上等だ。受けて立ってやろうじゃないか。これが解雇の顛末である。
その後、栗野社長は、解雇撤回の組合の要求書に対して、東京の弁護士二人を代理人として雇って、第5回団体交渉に臨んだ。この場で驚くことがわかった。何と春日大輔が語った読売新聞本社の訪問店舗で無断欠勤が問題にされたという話が、嘘の作り話だったというのだ。「あんなのに頼むんではなかった」とぼやく栗野社長。しかしすべての責任は自分にあると認める。
この解雇から、現在の間にも、この栗野社長は、愛知県豊橋市にも「支店」を設けて、新たな販売店の経営権を買い取っている。A組合員の時給は1000円。夜間割増をつけて1250円。他の人に比べて多少配達は遅いかもしれないが、さぼっているわけでも、極端に遅いわけでもない。これを栗野社長と春日大輔は「高給取り」と言った。月給制だと休日出勤も残業代も出さないで済むと思っているようだ。有給休暇なんて冗談じゃないというのが本音だろう。新聞配達労働者には労働基準法もないのか?絶対に許せない。必ず解雇撤回して職場復帰する。みなさんのご支援をお願いしたい。新聞配達労働者は、群馬合同労組、合同一般労働組合全国協議会に結集して、いっしょに闘おう!
これからは直接的に経営者との闘いになると思います。
従来ですと本社が傘下の各販売店をある程度サポートはするが、経営に介入もしていました。
しかし今は全国紙資本にもその余裕は全くありません。
私の地域でも、ブロック紙である西日本新聞の販売店が10年ほど前に朝日新聞に吸収されたり(一応看板は朝日、西日本と並んでますが)、一昨年は毎日新聞が地元の長崎新聞に委託になったりしました。
また今年暫くしたら、読売の2店舗が朝日に売られ、私の職場から5分の所にある長崎新聞も朝日新聞に買取られるとの事。
そして読売であるうちの経営者も朝日と西日本新聞を買取るらしいです。
と言うのも、もはや紙媒体の新聞は先が見通す事の出来ない状態なのです。
経営の困難な販売店は経営権を本社に売り戻すのですが、本社としても自社管理店にするのはお荷物になるので、経営してくれるのなら他社でも構わないと云う事なのでしょう。
当然そこでの労働者は労働条件が引き下げられる事が予想されます。
新聞社の枠を超えた、かっての全臨労のような闘いが求められていると感じています!
佐藤さん。コメントありがとうございます。新聞資本も販売店も生き残るために必死ということですね。新聞配達労働者も生きるためには闘わないと生きていけないという時代が来たのだと思います。全臨労の闘いはすばらしいと思いますが、全く新しい団結と闘いのあり方を作り出していかなければなりません。ともにがんばりましょう!