上州貨物自動車を許さない!群馬県労働委員会に準備書面提出
上州貨物自動車の不当労働行為を争う群馬県労働委員会令和5年(不)第3号・令和5年(不)第4号・令和5年(不)第5号上州貨物自動車株式会社不当労働行為救済申立併合事件。群馬合同労組は、第7準備書面を提出した。会社の組合つぶしの悪事は明らかになった。労働委員会は調査が次回で終了し、いよいよ証人尋問に入る。
第7準備書面を以下、転載する。
2 就業規則の改ざんについての補強
第7回団体交渉で明白となった事項
佐藤社長と狩野会長は就業規則第38条66項が実態と矛盾する内容であることを知らなかった。
2022年11月28日改ざんの就業規則第38条66項は、「乗務前点呼までに必ず記録紙、電子記録媒体等を装着し作動の確認を行わなければならない」とあり、乗務点呼前のエンジン始動を義務付ける内容となっている。しかし実際にはKはAに対して乗務点呼前の車両点検(エンジン始動)は禁止だと言い、それに違反したとして、Aに対して出社時刻10分前以前の構内入構禁止を禁止してきた(甲14号証27頁15行目~)。
これについて被申立人は以下のように回答して、実態と矛盾する条文であることを理解していなかったことを認めた。
「中身でどうこうってのはさ、やっぱりきちんと理解できるかっていうと、必ずしもっていう場合もあると思いますよ。」(狩野会長、甲94号証55頁22行目~)、「そのポイントはさ、印象に残ってやるけども、それ以外のね、どっちかって言うと平らに近い方はさ、印象に薄くなるんだよね。」(狩野会長、甲94号証55頁30行目~)、「会長が言ったこととほぼ同様ですけれども、やはり、ちょっと、あの、まあ、重要な、重大なっていうポイントには見えていませんでしたので、まあ会長が言ったように、あまり関心を持って見てはいなかったな、というところ。」(佐藤社長、甲94号証56頁5行目~)
山田社労士が最初に被申立人に就業規則改定案を示したのが事実であるとしても、事前にKと山田社労士の相談があったか否かの問いに対して、被申立人は明確な回答をできなかった。それは被申立人の以下の発言に明らかである。
「そこを確認はしていません。」(佐藤社長、甲94号証47頁下から12行目)、「可能性の問題としては私言いましたけど、これ、改正に関しては、あの、彼(※K)は一切関与していないというふうに、私は聞いています。」(朝妻代理人、甲94号証47頁下から3行目)
改訂された就業規則の条文はKと山田社労士の相談によって作成された。
結論として、2022年11月28日改訂の就業規則に関して山田社労士とKの相談があったことは明らかである。
この点に関して、清水彰二が2022年1月22日に日本労務センターに架電の上、問合せを行い、事務職員・D氏との会話をした。結論的には山田社労士は「上州貨物さんはすでにお客様ではないのでこちらからお答えすることはありません」(甲103号証1頁下から1行目~)とのことであった。しかしながら事務職員・D氏に、被申立人が、山田さんが勝手に、誰とも相談しないで、就業規則改定版を作ったと主張していると話すと「それはおかしい。」と発言している(甲102号証5頁下から11行目)。
第3回団体交渉で、懲戒規定本則でも47条・48条の追加、第51条の変更等があったことを知っていたのはKである。(甲43号証24頁)Kは懲戒規定が変更されていたことを指摘されると「まとめただけで変えてないですよ。はい。内容なんて変えてないし、まとめただけですよ。」(甲43号証31頁14行目)と虚偽の回答を行ってごまかそうとした。
被申立人は、就業規則第38条66項が実態と矛盾する内容であることをもって、Kが関与していない証拠であるかのように言うが、それは違う。この条文のように、現場の実態と矛盾する就業規則を作れば現場は大混乱するのである。だから現場責任者との相談もなしに、「乗務前点呼までに必ず記録紙、電子記録媒体等を装着し作動の確認を行わなければならない」などという具体的な業務にかかわる条文を就業規則に盛り込めば、従業員全員が就業規則違反となり、就業規則の正当性を揺るがしかねないことになる。
しかし実際にはこの条文は大きな問題となる条文ではなかった。すなわち2021年11月頃より以前には乗務前点呼までに記録紙、電子記録媒体等を装着し作動の確認を行うという高崎営業所の職場実態が存在したし、現在も高崎営業所においてそのような取り扱いが行われても問題にされることはない(第1回団体交渉 A「他の人たちは、出勤時間、早く出て、点呼前に点検してるんだから。」甲14号証50頁12行目)。
Aに対してのみ、点呼前の車両点検を行ったことを理由として、出庫10分前以前の構内立入り禁止の不当な命令を行ったから「矛盾」が生じただけなのである。しかもこの理由は口実に過ぎず、Kが恐れたのは、Aが「出社始業時間指定前に出社をし、社内秘密保持情報等を持ち出し」(甲14号証27頁17行目~)する恐れがあったからである。山田社労士は、Aに対するこの処遇を知らなかっただけであり、Kがその「矛盾」に気づかなかっただけなのである。
佐藤社長と狩野会長が事業主として就業規則の改定に積極的・具体的に関与していないことは明らかである。よって、事前にKの意向を受けて、山田社労士の手によって改定案が作成されたというほかはない。
違法な就業規則の改定
被申立人は、第4号事件答弁書において、「労働基準監督署に対する届出自体が就業規則の有効要件ではなく、就業規則が有効であることには変わりがない」(5頁17行目)、「2022年11月下旬に就業規則を改定したことは事実であるが、改訂前後で就業規則の高崎営業所での備置は行っており、周知がなされている」(5頁3行目)などと主張する。
しかしながら就業規則の変更に際して労働基準監督署への届出を行うことは、労働基準法第90条に定められた事業主の義務であり、これに違反した場合は、労基法第120条により30万円以下の罰金に処せられる違法行為であり、違法な変更を行った就業規則は無効である。
変更された就業規則の効力に関して
変更された就業規則の効力に関して、周知がされていれば、届出が効力発生要件ではないとの判例があるのは事実であるが、被申立人は就業規則改定の周知をしていない。
被申立人においては、「全面改訂」との認識を持っているにも係らず(甲95号証)、そして同時に行った「育児介護に関する就業規則」の差し替えについては「通知書」を従業員全員に文書を掲示して「周知させていただきます」として周知を行ったにも係らず(甲46号証)、就業規則本則の全面改定を意図的に周知しなかったのである。
届出よりも周知を効力要件とするのは、基本的には労働者の権利保護の観点であり、また周知に関して「従業員一般をしてその存在および内容を周知せしめ得るに足る相当な方法を講じ」(コクヨ事件 大阪高裁 S41.1.20)ることが効力発生の要件である。
周知の方法に関して厚生労働省は、労働者一人ひとりへの配付、労働者がいつでも見られるような職場の見やすい場所への掲示・備え付け、電子媒体に記録し、それを常時モニター画面等で確認できるようにすること、などを上げている。
ところが被申立人は「備置」をしているので周知を行っている、「事務所が空いている時間であれば自由に閲覧できる」「事務所にいる事務職員に閲覧する旨伝えるだけ」(被申立人第3準備書面4頁10行目~)などと言っていて、決して周知の要件を満たしていない。
佐藤社長も狩野会長も第7回団体交渉で言ったように、読むのも理解するのも困難なのが被申立人の就業規則であるにも係らず、被申立人はそのような就業規則を周知徹底させる努力を一切行わず、逆に就業規則でメモやコピーを禁止し、罰則を設けたりして自由な閲覧を阻害してきた。また申立人組合に対して、写しの交付を拒否する対応を繰り返した。
さらに申立人の組合通告が届くとAを泊まり業務専門の配車を行い、事務所が空いている時間帯の出勤をさせないことにより就業規則の閲覧を妨害した。周知しているなど、とんでもない虚偽なのである。
就業規則の変更の隠蔽
被申立人は、第6回団体交渉において、就業規則の変更は届出をしなかっただけであると言い逃れをした(甲93号証15頁)。
しかしながら被申立人は、最初から従業員代表の意見を聞くこともせず、改定の事実を付則に記録もせず、代理人である朝妻弁護士にも知らせなかった(甲43号証29頁11行目~)。山田社労士の日本労務センター事務職員・D氏も「もうヤマダの方は指導させてもらってるので、あとは出せばいいようにさせてもらってあったはず」(甲102号証4頁下から4行目)と証言する。法的な手続きを行わず周知を行わなかったのは、明らかに悪意の故であり、不当労働行為意思の故である。組合員解雇のために就業規則を改ざんして、改定の記録も残さず、団体交渉でもしらばっくれたのである。
Aの解雇を狙った就業規則の改ざん
この改定作業は、申立人からの組合通告(2022年11月18日付)、就業規則の写しの送付の要請(甲1号証)と同時期のものである。また組合員Aに対する点呼前車両点検に関する指導、A担当車両のマフラーの不具合・異音案件の対応をK、佐藤社長、狩野会長で協議を重ね、団体交渉の議題になっていた(第1回団体交渉、甲14号証27頁)のと同時期である。これらに係る項目が偶然であるかのように、付け加えられ、解雇要件とされたのである。
第3回団体交渉において、被申立人・朝妻代理人は「AさんとBさんに関しては、会社の方にそのままお残りになるというのは、なかなか難しいんではないか」(甲43号証24頁16行目~)、「処分、懲戒処分として出してしまいますとね、ま、今後の経歴等々の兼ね合いもありますので、それを出す前に、一度退職について促してみたらどうか、というような、これは私の方の発案です」として退職勧奨を行った(甲43号証24頁16行目~)。改ざんが発覚しないのをいいことに、被申立人が改ざんした就業規則を根拠としてAとBの解雇を行おうとしたことは明らかである。
就業規則改ざんによる組合員解雇の謀略
被申立人のこの就業規則改ざんによる組合員解雇を狙った一連の動きは、悪質な謀略であり、決して社会的に許されるものではない。そしてその発端は申立人組合の2022年11月18日付要求書による組合通告であった。申立人組合に対する被申立人の悪辣な不当労働行為意思がはっきりと存在するのである。
そして申立人に対する、被申立人による、他の救済命令申立事件も、すべてこの不当労働行為意思が根っこにあるのである。
3 懲戒処分の審査と自宅待機命令の補強
申立人は、組合員の雇用契約の問題に関して、2023年1月14日付要求書(甲15号証)にて、同年1月31日までに団体交渉を開催することを要求した。これは被申立人がAとの雇用契約が同年3月末であると主張したことを鑑みれば、当然の要求であった。
ところが被申立人は第2回団体交渉の延期を繰り返した。そして同年3月20日付回答書において「弊社の準備の関係で、令和5年3月24日までの日程で調整することができません。日程候補は別途御連絡いたします。」と申立人に回答した。(甲21号証2頁第3)
そしてまさに同年3月24日付でBとAに対して自宅待機命令を出したのである。
2で述べた通り、懲戒審査自体が改ざんされた違法な就業規則によって企まれた不当労働行為である。
さらに被申立人は、2名に対する嫌疑として就業規則38条123号をあげて、『「上記各号に準ずる違反行為等をしてはならない」として列挙された服務規律違反に準じる行為を禁止する規定であり、列挙された服務規律違反に該当する行為以外の行為が存在する可能性があったため、自宅待機命令書に記載したものです』(甲70号証48頁下から13行目)、「追加してやる可能性はある」(朝妻代理人、同49頁4行目)などとして、自宅待機命令期間の調査中に懲戒事由を探し出して狙い撃ちにすることを隠さなかった。
さらに自宅待機命令は、組合員の雇用契約の要求から不誠実に逃げ回った挙句、違法な就業規則改ざんとでっち上げによって、AとBを高崎営業所と会社に係る一切から切断する目的、A・B・C・申立人組合を分断する目的で用意され、命令されたのである。
よって、懲戒処分の審査と自宅待機命令自体が不当労働行為である。
以上