最低賃金は介護事業者が支払え!~梁瀬の郷(安中市)と第1回団体交渉!

安中市の介護施設・小規模多機能ホーム国衙の郷(こくがのさと)で働く2人の介護労働者が群馬合同労組に加入して運営会社である有限会社梁瀬の郷に対して要求書を提出、2025年2月18日に第1回団体交渉が開催された。組合から8名、会社からは代表取締役、社労士、税理士、事務職員、各施設の管理者、合計10名が出席した。
会社は2024年12月1日に職員に対して新たな労働条件通知書を交付したが、A組合員は処遇改善加算が5,000円上がる代わりに基本給が5,000円下げられた。時給のパート労働者であるB組合員は処遇改善加算が時給20円上がる代わりに基本時給が20円下げられた。そもそも基本時給が最低賃金を下回っている。群馬合同労組は、基本給の減額は一方的な不利益変更であり許されない、また基本時給が最低賃金を下回っている状況(処遇改善加算を加えて最低賃金を超える状況)を是正しろと要求した。
またA組合員の夜勤の回数が減らされたことの是正、未払いの休憩時間についての支払いも要求した。
有限会社梁瀬の郷は、2024年7月にA組合員とB組合員を含めて国衙の郷の従業員の処遇改善加算の月額を引き上げた。
これは国・厚生労働省が、介護職員の人材確保、介護労働者の賃上げ・ベースアップをはかるとして、2024年6月以降処遇改善に係る加算の一本化と加算率の引上げを行ったことに対応するものだ。厚生労働省が示すパンフレットには「今般の報酬改定による加算措置の活用や、賃上げ促進税制の活用等を組み合わせることにより、令和6年(2024年)度に+2.5%、令和7年(2025年)度に+2.0%のベースアップを実現いただくようお願いしています。」とある。賃上げ促進税制とは「事業者が賃上げを実施した場合に、賃上げ額の一部を法人税などから控除できる制度」「大企業・中堅企業は賃上げ額の最大35%、中小企業は最大45%を法人税などから控除できる」という制度である。
要するに事業者の負担にならずに賃上げをできるように、国が制度的に補償を行っているのだ。
しかし実態はどうなのか?今回、介護労働者の処遇や賃金は全く怒りなしには語れない状況である。
A組合員の賃金は確かに2024年7月に改定され、処遇改善加算部分の増額があって5800円余り上がった。率にすると3%弱のベースアップになる。現在の時給は1,300円余りになる。しかし、夜勤が減らされたり、休憩時間が取れずに不払い労働がさせられていたりで、怒りと不信は強い。そこに処遇改善加算額の増額に合わせて基本給を減額する労働条件明示書が新たに交付されて黙っていられないとなった。合意なき不利益変更であるので許さないと組合は突きつけた。
パートのB組合員の時給は1,065円。群馬県の最低賃金は985円だが、基本時給は940円に下げられ、処遇改善加算125円を加えてこの時給である。
そもそも処遇改善加算は、介護労働者の賃金水準を上げるための補助金であり、基本時給にこれを加えてやっと最低賃金をクリアするという状況は許せない。最低賃金分は事業者が支払えと組合が要求するのは当然である。
今春、いくつかの介護事業者との団体交渉を重ねているが、同じ問題にぶつかる。ほとんどの介護事業者が、違法ではない、経営が厳しく仕方がないと居直りを決めこんでいる。
確かに最低賃金(全国加重平均額)は2002年の663円から2023年には1004円へと1.5倍以上になっている。対する介護報酬は上がるどころか下がっていたりする。経営が厳しいというのはウソではない。
しかしながら、処遇改善加算は処遇改善交付金が始まったのが2009年で、形を変えながら15年以上続いている。最低賃金は事業者が負担するのは当然の前提で推移してきた。これを変更して、厚生労働省が最低賃金に処遇改善加算を加えてもよいとQ&Aで示したのが2018年。以降、最低賃金に処遇改善加算を使わないと損だとばかりにほとんどの事業者が自分では最低賃金も負担しないという態度を取り始めた。
政府・厚生労働省はあくまで「当該加算の目的等を踏まえ、最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行っていただくことが望ましい」とし、「介護報酬については、介護職員に支払われた給与に係る費用を含めた介護サービスに要する平均的な費用の額を勘案した上で定めており、介護事業者は、介護報酬を原資として、最低賃金法も含めた労働基準関係法令を遵守して労働者に対して賃金を支払うべきものと考えている」と国会答弁している(2023年6月23日岸田内閣の衆議院答弁書)。
そもそも最低賃金が2002年から2023年までに1.5倍になったと言っても、同じ期間に民間の平均給与はまったく上がっていない。要するに介護業界は、最初から非正規労働者、とりわけ女性の非正規労働者を無権利に安く(最低賃金で)働かせて利益を上げるというビジネスモデルだから破綻するのだ。そして破綻したらまたもや非正規労働者にしわ寄せするのだ。もちろんその根っこには国と資本家階級による福祉切り捨て政策があり、それは日本の戦争国家化とつながっている。

2023年の民間給与の平均は460万円
有限会社梁瀬の郷は、2008年に名前を変える前は有限会社小野という会社名であり、建築・土木工事、不動産取引を主に行う会社だった。介護を始めたのはちょうど処遇改善交付金が始まるのと同じ頃なのは偶然なのだろうか?
今回の団体交渉で、泊まり勤務(夜勤)が、深夜に「仮眠時間」として3時間の休憩時間が設定され無給とされている問題を指摘して是正を求めた。これに対して会社は、休憩は取れている、A組合員がこの時間帯に利用者のいない空き部屋にいた、防犯カメラの映像の証拠もあると答えた。休憩時間は管理者の指揮命令の下に置かれておらず自由に使える時間でなければならない。「ではこの時間に家に戻ってもいいのか?ワンオペなのに?」と組合員が追及すると会社は答えられなくなってしまった。
こんなやり方で労働者は安く使われ、簡単に追い出される。また労働者同士がいがみ合い対立させられる。介護労働者が誇りをもって、仲間と団結して利用者を守っていける職場を作らなければいけない。管理者も苦しんでいる。管理者も労働者だ。組合に加入していっしょに声を上げよう。