吉ケ谷事件:群馬県労働委員会の救済棄却命令を許さない!前橋地裁に取消訴訟を提訴!
老人介護施設・吉ケ谷(株式会社吉ケ谷、安中市)の不当労働行為救済を申し立てた群馬県労働委員会で、不当な棄却命令が出た。群馬合同労組は2024年7月12日付で群馬県(山本一太知事)と群馬県労働委員会を相手に命令取消を求めて前橋地裁に提訴した。今回の命令は最初から個別の吉ケ谷の行為について、組合差別の証拠がない、疎明がない、として切って捨てて、結論としていっさいの不当労働行為意思を否定してみせた。これはとんでもない偏った判断である。山本一太知事が群馬の森追悼碑撤去に反対している群馬合同労組が憎くてこんな命令を無理やり出したのかと疑いたくなる。
県労働委員会は「会社がA組合員に配置転換等を命じたのは、A組合員が会社高齢者介護施設の利用者に暴言を吐く等した事案(以下「本件事案」という。)に対処することを目的としたもので、業務上の必要性があったと認めることができ、合理性があったと判断」(県ホームページ)、「(配置転換の決定が)組合の電話による加入通告の後であることを判断できる疎明はない」とした。
そもそもことの発端は、利用者の介護中のケガを吉ケ谷が虐待・事件だとして問題にしてA組合員に30日後の解雇を通告したことから始まる。これについて組合は解雇通告は不当なので撤回せよと2022年9月20日に電話で専務に要求した。
確かにこの事件について、安中市は調査の結果、後にA組合員の暴言があったとして心理的虐待と認定する。ただし身体的虐待・暴行事件としては認定しなかった。しかし、吉ケ谷はA組合員を調査も不十分なうちから、解雇を通告したのである。
組合は、吉ケ谷が利用者を守るため、虐待を防止するために、必要な措置を取ることに反対などしない。しかし、吉ケ谷が行った解雇通告は明らかに不当であり、パワハラに該当する。30日後と言われたのであるから早急に団体交渉を開催して解雇を撤回させなければならなかった。
組合から解雇を撤回しろと要求されると、吉ケ谷は電話の翌日にはA組合員に配置転換を通告した。その後も要求から逃げ回って、解雇を撤回するとは絶対に言わず、団体交渉を引きのばした。団体交渉は10月末まで引きのばし、ウェブで行うと一方的に通告した。そしてその間に二人の組合員を追い出すと決め、あらゆる姑息な手を打ったのである。
配置転換先の職場では、A組合員が利用者に暴行事件を起こしてけがをさせたのが事実であるかのように吹聴され、監視といじめが行われた。安中市のA組合員の暴言が心理的虐待にあたる(身体的虐待にはあたらない)との調査結果が吉ケ谷に通知された直後(同日)、利用者家族説明会が開かれ、そこで「身体的虐待」の認定はなかったことは報告されず、それまで同様暴行事件が事実であるかのような報告がされ、解雇せよ、処分せよの声が家族から出された。同じ日に吉ケ谷は施設で走ったとしてA組合員に「指導書」なるものを交付(翌日にも同じような「指導書」を交付)、また同じ日に職員連絡用SNSにA組合員を「元職員」と記載した。結果としてA組合員はメンタル発症を起こして退職をよぎなくされた。
配置転換は合理的という県労委の判断は事実認定としても判断としても間違っている。吉ケ谷は、労働委員会が始まると、解雇の撤回と配置転換は、組合の電話の前日9月19日に決めたとでっち上げた。9月20日の電話での解雇撤回の要求を伝えると、専務は解雇は撤回した、明日から配置転換するなどとは一言も言わず、「事件にいたします」と明言したのである。これが暴行事件にする、そして退職に追いやるという意味であることは証拠から明らかだ。この時のやり取りも録音の証拠があるし、解雇通告時も電話翌日の配置転換の通知時の録音の証拠もある。「30数名のスタッフの生活を守らなくちゃならない。」「こういう形でしてきたってことは、私たちにとって耐えがたいことなんだいね。」(田村和子社長)などと、組合が入ると会社がつぶれる、会社を辞めないなら仕方ない、会社を守るためには監視がつく、厳しくなるなどとのやり取りがいくつも証拠で出されている。会社の説明を受けて暴行事件が事実だと思いこんだ職員が会社といっしょになって嫌がらせや差別を行った。労働委員会の棄却命令を知って、驚いた当時の職員から会社の組合差別についての証言がメールで送られて来ている。不当労働行為意思がないと判断するのは、相当に偏った判断か、最初に結論ありきの判断であるとしか言いようがない。
吉ケ谷がやったことはすべて組合員を追い出すためで一貫している。団体交渉拒否は、解雇通告の30日後を過ぎてからしかやらない、コロナを理由にウェブでしかやらない(社長会長はその前に温泉旅行に行ってたし、施設では厳重な感染予防を取っていたわけではない…)、解雇予定日を過ぎてからウェブで行った団体交渉には誰がそこにいるかもわからない、誰もいないとウソをつく…これを不誠実ではないと判断するのはまともではない。
支配介入についても、群馬県労委は証拠がない、疎明がないとすべて棄却した。とんでもない。すべてつなげてきちんと見れば不当労働行為意思は底辺に確かに流れているのだ。証拠や疎明が弱いのは確かかもしれないが、職場における不当労働行為というのはそういうものである。結果として二人の組合員がメンタル発症して退職に追いやられた。組合つぶしは実行されたのだ。証拠が弱いとしても不当労働行為意思の認定があれば十分救済命令は出せるはずである。今回の命令は、労働組合の団結権を擁護すべき労働委員会が、逆の立場で労働組合つぶしにお墨付きを与えたに等しく、絶対に許すことはできない。
労働者は、この吉ケ谷のように、理不尽に解雇されたり、パワハラを受けたりしても、泣き寝入りするしかない現実がある。吉ケ谷分会の仲間は、声をあげて立ち上がった。群馬合同労組はこのような仲間と団結して必ず勝利する。