吉ケ谷、ハローワークがパワハラを認定
安中市の老人介護施設・吉ケ谷(よしがたに)。群馬合同労組は、2名の組合員が吉ケ谷の組合つぶしとパワハラで、メンタル発症から退職に追いやられたとして、県労働委員会で争い、現在前橋地裁で不当命令の取消訴訟を闘っている。今回、退職に追いやられたA組合員がパワハラによる離職と、ハローワーク安中で認定された。裁判にも重要な意味を持つ。
今回のハローワークの決定はいわゆる特定受給資格者と言われるもので、A組合員が「上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者」に該当して、「事業主からの働けかけによる正当な理由のある自己都合退職」に該当すると認定したことを意味する。
この認定にあたり、当初ハローワーク安中はA組合員の訴えを受けても、特定受給資格を認めなかった。群馬県労働委員会で不当労働行為が認定されなかったことで、会社の言い分を認めたのである。ちなみに労働委員会では、組合差別を認定しなかっただけであり、パワハラがなかったと認定したのではない。吉ケ谷は労働委員会がパワハラを否定したとデマを流している。
これに対して群馬合同労組がA組合員に立ち会いハローワークと交渉をした。そして、パワハラを現認した同僚2名による「証言書」の提出があれば判断材料にする、「証言書」は雇用主には秘密にするという話を引き出すことができた。
重要だったのは、「証言書」の提出は会社には「秘密にする」という確認が取れたことである。「証言書」には「この証言書に記載された個人情報につきましては、申し立て者の離職理由確定業務以外に使用せず、離職前事業所(※吉ケ谷のこと)及びハローワーク外部に情報を提供しません」との記載がある。これが決め手になった。
パワハラ現場を目撃・同席したという2人の元同僚から「証言書」を提出してもらうことができ、A組合員はめでたく吉ケ谷のパワハラ・いじめによる離職であると認定されたわけである。これは言うまでもなく、組合差別の証言でもある。
群馬合同労組はこれまでにもたくさんのパワハラの相談を受けてきた。多くの場合は、当事者がメンタルをやられて苦しんでいた。職場で闘おうと組合は提起していっしょに闘う道を模索してきた。パワハラ・メンタル疾患に対して、これだけが勝利の道であると組合は信じている。しかしながら、実際には、病気の深刻さの前に当事者が離職・退職を選ばざるをえないことが多い。
そうした時にやはり、せめて特定受給資格者として認定させようとハローワークと交渉してきたのだが、雇用主にはないしょの「証言書」という、今回の制度を知らなかった。ハローワークの担当者がそのような制度の話をしたことがないのだ。この制度を知っていたら救われた労働者がたくさんいただろうと思わざるをえない。
とりわけ「証言書」について「離職前事業所及びハローワーク外部に情報を提供しない」という決まりは重要である。多くの場合、当事者に同情はしながらも、「証言書」を出すと雇用主にばれて自分がにらまれることを怖れて、協力できないという同僚が多いのである。このルールを知っていたら、協力しようという労働者はもっと増えるはずだ。みな、明日はわが身、という不安を抱えているのだから。
現在進行している前橋地方裁判所での吉ケ谷の不当労働行為を争う裁判でも、問題はこの組合差別のパワハラ・嫌がらせの事実の認定が問題となっている。群馬県労働委員会では不当にもこの事実認定において組合差別の証拠不足を理由に棄却命令が出されている。どこでも雇用主の悪意あるパワハラ・いじめで、労働者が理不尽に解雇され追いつめられる。労働者は闘う労働組合に団結して闘うことで証拠を確保して勝利することができる。吉ケ谷との闘いは、会社・事業主のパワハラや違法行為に苦しんでいる労働者すべての希望をかけた闘いである。
吉ケ谷の次の裁判は11月22日(金)15時から前橋地裁で開かれる。たくさんのみなさんの傍聴をお願いしたい。労働組合は、職場で労働者が団結することで大きな力を発揮する。戦争をとめる闘いを労働組合の力で作りだそう。職場の問題などお気軽に群馬合同労組へご相談を。
※「証言書」について、後日、群馬県労働局雇用安定課に問い合わせたところ、統一の制度というものはない、各地域のハローワークがそれぞれの方法で認定を行っている、との回答だった。この方法はしかしぜひ全国に広げてもらいたいものである。