上州貨物自動車分会長民事裁判、準備書面提出で勝利へ進撃!

16 9月 by gungoroso

上州貨物自動車分会長民事裁判、準備書面提出で勝利へ進撃!

 上州貨物自動車高崎営業所のK所長がA分会長を「名誉棄損・侮辱」で220万円を支払えと訴えた民事裁判が始まった。代理人のコスモス法律事務所吉野晶弁護士が準備書面1を提出して、K所長の提訴が不当で、労働組合の団結権を侵害するものであることを明らかにした。勝利へ大きな一歩だ。

令和5年(ワ)第159号損害賠償請求事件

原告 K

被告 A

準備書面1

2023年9月7日

前橋地方裁判所高崎支部民事部D係御中

被告訴訟代理人弁護士吉野晶 外2名

第1 請求の原因に対する答弁

1同第1、1は概ね認める。

原告は、本件会社の執行役員という地位のもと、本件労組の団体交渉はもちろん、木件労組に加入した被告をも嫌悪している。

2同第1、2は否認する。

被告は、本件会社と期間の定めのない労働契約を締結した労働者の地位にあり、労働契約法に違反する不当な労働条件切下げの手法等をめぐって本件労組の一員として労働組合活動を通じてその是正を図ることに努めている。

3同第2、1について

団体交渉の要求書(甲3号証)を本件労組が本件会社に送付したこと、本件労組が「通告ならびに要求書(甲4号証)」を本件会社に送付したこと、被告がLINEにより個別の相手方にメッセージ(以下「本件個別メッセージ」という。甲5号証)を送付したことは認める。

4同第2、2について

認める。

5同第2、3について

(1)同(1)について

ア同アについて

本件表現①及び②が原告に対する侮辱行為に該当するとの点は、否認ないし争う(理由は後記被告の主張参照)。

一般的な読み手を基準としても、本件個別メッセージそのものが当事者性のある情報であることが、その記載内容から一見して明らかである。

そうすると、本件個別メッセージは、例えば新聞、雑誌などに掲載された場合とは異なり、その媒体の体裁や記載内容から、被告が紛争の当事者であり、その当事者性を帯びた表現行為として行われていることが明確である。

そのため、本件個別メッセージを後記のとおり絞り込まれた対象者に対してのみ送信しているから、そもそも本件個別メッセージの記載内容に対して、新聞等の掲載にあるような客観性を期待しないのであって、本件個別メッセージの記載内容如何によって、原告の社会的評価が低下することはない。

イ同イについて

高崎営業所従業員のうち、無期雇用契約上の地位を1年間の有期雇用契約上の地位へ切り下げられる危機に立たされた運転手等だけに絞り込んで送信した本件個別メッセージに公然性はない。

(2)同(2)について

ア同アについて

本件表現③は事実の摘示であるが、何ら原告の名誉を毀損する内容ではないから違法行為を構成することはない。

本件表現①及び同④は論評であって事実の摘示ではない。また、何ら原告の社会的評価を低下させる表現ではないから、違法行為を構成しない。

イ同イについて

否認ないし争う。

ウ同ウについて

否認ないし争う。前記(1)イのとおりである。

工同工について

否認ないし争う。

(ア)「原告が詐欺に及んでいること」に言及した事実はない。

本件表現①は、「詐欺の手口で正社員を1年契約社員に変更することは法律で禁止されています。」というものである。

ここで「詐欺の手口」と論評しているのは、本件個別メッセージの「詐欺の手口」との記載の前段部分にある事実を踏まえてのものであるから(後記被告の主張参照)、「原告が詐欺に及んでいること」に言及したものではない。

(イ)「繰り返し一貫して原告が詐欺的行為等に及んでいることを告知」した事実はない。

本件個別メッセージの送信先として絞り込んだ運転手らに対し、本件会社の執行役員である原告による違法不当な労働条件不利益変更の実情を知らせ、注意を促す趣旨を告知しているに過ぎない。

なお、「確定的故意」という表現は、刑事事件における概念であって本件に適切でない。

(ウ)「ウソつきで、ワンマンでやりたい放題のK所長の奴隷にされてしまいます」という本件表現②は、「ウソつきで、ワンマンでやりたい放題のK所長」という点は論評であり、「奴隷にされてしまう」という表現は暗喩であり、悪質性を基礎づける事実関係ではない.

(エ)本件表現③は、労働組合活動が手続を踏んで行われている事実を伝えるものに過ぎない。

(3)同(3)は否認ないし争う。

6同第3、1及び2はいずれも否認ないし争う。

損害額は高額に過ぎる。

7同第4について

(1)同第1段落は不知。

(2)同第2段落のうち、被告の行為が懲戒事由に該当するとの部分は否認ないし争い、本件会社が被告に対して自宅待機命令を命じた事実は認める。

後記裁判例の枠組み(橘学苑事件(横浜地判令和4年12月22日))に従えば、本件表現①~④が懲戒事由とはならない。

8同第5は否認ないし争う。

第2被告の主張

1公然性の欠如

被告は、2023年3月7日、本件会社高崎営業所に所属する運転手(一部積込作業者を含む。)に絞った相手方に対して、LINEにより本件個別メッセージを送信した(甲5号証)。

つまり、本件個別メッセージは、本件会社高崎営業所で実施されているグループラインとは異なり、個別の通信に過ぎないものであり、公然性がなく、「流布」にも当たらない。

2本件個別メッセージの送信目的の記載があること

(1)被告が絞り込んで本件個別メッセージを送信した相手方は、そのLINEメッセ一ジ(甲5号証)の記述内容に直接関係するだろう者に限られていた。

すなわち、元は期限の定めのない労働契約がなされていた運転手らに対して、原告が、本件会社の執行役員であり、高崎営業所の所長の地位にあるにもかかわらず、個別面談時に労働条件の不利益変更(1年間の有期労働契約に雇用期間の定めを変更する内容)がある事実を説明せず、かえってそれを秘匿して、契約書面への署名・捺印を求めていたことを知らしめる目的があったからである(以下「本件目的①」という。)。

(2)また、本件個別メッセージの冒頭にあるように、本件個別メッセージを送信したのは、そのメッセージの相手方である運転手らに、被告が加入する群馬合同労働組合上州貨物自動車分会の結成があったこと(甲4号証)を知らしめるためであり、かつ、不利益な契約に署名・捺印せざるを得ないのではないかという不安を抱えるだろう運転手らに対して、本件個別メッセージ末尾にあるとおり、「職場をよくするカは労働者が労働組合に結集して力を合わせることです。群馬合同労働組合に加入してください。群馬合同労組は皆さんの雇用と生活を守ります。」と記載して(甲5号証)、労働組合への加入を要請する目的のもとになされていた(以下「本件目的②」という。)。

3本件における抗弁事由

(1)憲法28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定している。この権利は、使用者との対抗関係において勤労者に認められる権利であって、国家との関係においてだけでなく、本来的に私人間に直接適用されるものである(佐藤幸治「憲法(第三版)」631~632頁、芦部信喜「憲法(第7版)」288頁)。

本件労組に加入した被告は、本件目的①及び同②のもとで、本件個別メッセージの送信を行ったことが、その文書の記載内容そのものからも明らかであって、本件個別メッセージの送信行為は、勤労者の団結権ないし団体行動権の発露として行われた表現行為(憲法21条1項)であることが明らかであるから、憲法28条により法律効果として民事免責が与えられるものである。

したがって、通常の名誉毀損事案における抗弁事由(真実性、真実相当性)に加えて、正当な労働組合活動であることも、抗弁事由になる。

(2)もちろん、名誉権等との軋礫が生じることから、憲法28条による労働三権の保障を被告が受けられるとしても、その保障に内在的制約が生じることは回避できないが、これについては橘学苑事件(横浜地判令和4年12月22日)の次の判示が参考になる(ただし、事例は懲戒処分に関するものである。)。

「表現行為が、組合活動として行われたものであり、かつそれが正当な組合活動の範囲内に含まれる表現行為(ビラ配布を含む。以下、同じ。)である場合には、それを懲戒処分の対象とすることはできない。」

「そして、労働組合が、労働条件、労働環境等の改善及び使用者の経営方針、活動内容等の改善を求める目的で、それらに係る問題点を指摘し批判をすることは、もとより正当な組合活動の範囲内に含まれるものであるから、これらの問題点を周知し、一般の第三者の理解と支援を得るために行われる表現行為もまた、労働組合の重要な活動手段であり、その表現がされた態様が平穏で、職場の規律を乱すおそれがないのであれば、これも正当な組合活動といい得る。」

「また、上記の目的の下で組合活動として表現行為を行う場合には、その記載表現が厳しかったり、多少の誇張が含まれたりしていても、性質上やむを得ないというべきであり、そのような表現行為によって、使用者の運営に一定の支障が生じたり、使用者の社会的評価が低下したりすることがあっても、使用者としては受忍すべきものであるといえる。」

「そうすると、表現行為が組合活動の一環として行われている場合、当該表現が、使用者の社会的評価を低下させるような事実を公表したり使用者を批判する意見を公表したり、その結果、使用者の運営に一定の支障が生じるものであったとしても、①当該表現行為が、労働条件、労働環境等の改善及び使用者の経営方針、活動内容等の改善を求める目的でされており、②当該表現行為を行った手段、態様などが必要かつ相当なものであり、③当該表現が、虚偽の事実を記載したものであったり、殊更に事実を誇張又は歪曲したりしたものではないなどのときには、正当な組合活動として、懲戒処分の理由にすることは許されない。」

(3)以上に見た橘学苑事件判決の判示する論旨に従えば、被告の本件個別メッセ一ジ送信行為が、民事上、名誉毀損(あるいは名誉感情侵害の侮辱)行為に該当し、かつ、不法行為(民法709条)の故意ないし過失が認められる場合(真実性、真実相当性の抗弁が認められない場合)であっても、①当該表現行為が、労働条件、労働環境等の改善及び使用者の経営方針、活動内容等の改善を求める目的でされており、②当該表現行為を行った手段、態様などが必要かつ相当なものであり、③当該表現が、虚偽の事実を記載したものであったり、殊更に事実を誇張又は歪曲したりしたものではないなどのときには、正当な組合活動として、民事免責(不法行為の違法性の阻却)がなされると考えるのが相当である。

4本件表現①の真実性

(1)本件個別メッセージの記載内容

本件表現①の前提として、本件個別メッセージには次の記載がある。

ア「上州貨物自動車は2020年に運転手に年俸制を導入しました。もちろん契約は期間の定めのない正社員です。」

イ「ところが昨年2022年3月の契約更新の時に突如、契約書の内容を1年の有期雇用に変えてしまいました。」

ウ「K所長(原告)は査定の結果だけ説明して、他は何も変わらないような顔をして、一人一人契約書に署名なつ印させました。」

エ「ほとんどの運転手がこの変更に気づいていませんでした。C組合員もそうです。組合委員長に指摘されて初めて気がついたのです。C組合員が同僚に聞いてみると気づいていた人はわずかでした。」

オ「群馬合同労組はC組合員は正社員・期間の定めのない雇用契約を結んでいる、昨年の1年の雇用契約は無効であり、正社員であることを確認せよと要求書を出して団体交渉で迫りました。」

カ「しかし、K所長(原告)は説明をしている、新しい1年契約は有効であると言い張ります。」

キ「しかしC組合員は昨年の契約更新の面談のやり取りを録音していました。組合は何の説明もされなかった証拠を出して、K所長に対してウソをついたことを謝罪し、正社員と認めろと要求しました。」

ク「それでもK所長(原告)は、署名なつ印があるから有効だと言い張っています。

ケ「冗談ではありません。このような詐欺の手口で正社員を1年契約社員に変更することは法律で禁止されています。」

ロ以上のとおりであって、ここで論評している「詐欺の手口」とは、普通の一般的な読み方を基準とすれば、期間の定めのない労働契約から、1年間の期間の定めのある有期労働契約に変更する旨の原告からの契約変更(これは労働条件の切下げであって不利益変更にあたる。)の申入れであるのに、本件会社の執行役員であり、高崎営業所所長の地位にある原告が、その不利益な契約変更の申入れであることを説明せず(労働契約法4条1項及び同2項違反、同法9条参照)、そのような不利益な契約変更が存在しないかのように振る舞って、契約書に署名・捺印をさせた事実(前記ク)を基礎としていることが明らかである。

また、その論評は、通常の意見論評としての域を逸脱したものでもない。

(2)基礎となる重要な事実の真実性

ア雇用期間のない年俸制が元々の労働契約の内容であったことは真実である(甲2号証の3)。

イそれが2022年3月の原告による面談の際、契約期間1年間の有期労働契約の内容の契約書面に署名・捺印することとなったのも真実である(甲2号証の4)。

ウ労働者にとって、期限の定めのない労働契約が存続期間1年間の有期契約に変更になることは、労働条件の切下げ、不利益変更であることは明瞭である。

工労働条件は、使用者が労働者に理解を深める義務があり(労働契約法4条1項)、労働条件の不利益変更は、就業規則を変更したとしても、労働者と合意することがなければ変更できない(労働契約法9条)。

ここでいう労働者の合意とは、労働者が受ける不利益の内容、程度、労働者が同意に至る経緯、態様、労働者への情報提供、説明内容等に照らし、労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する場合をいう(最判平成28年2月19日民集70巻2号123頁)。

オところが、本件会社の執行役員であり、高崎営業所の所長である原告は、労働条件の不利益変更に際して、不利益の内容、程度などを説明することなく、存続期間1年間の有期労働契約内容の書面に署名・捺印をさせていた(本件個別メッセージの記載の中で摘示された「録音」の存在から、真実性が明らかである。)。

カそれにもかかわらず、原告は、労働条件の不利益変更について個別面談の際に説明を行ったなどと虚偽を述べ、かっ、署名・捺印がある以上、変更後の存続期間1年間の有期労働契約が有効であると労働契約法や判例法理を無視した主張をした。

キこれらの事実はいずれも真実である。

(3)真実性の抗弁

これらを基礎として、「詐欺の手口」と論評したのであるが、本件表現①については、人格非難のような相当性の範疇を逸脱したものとはなっていない。

そのうえ、その論評の基礎となる重要な事実が真実であるため、被告には故意過失がないから、不法行為責任が生じない。

(4)憲法28条に基づく労働基本権の行使としての民事免責

本件個別メッセージの内容は、労働組合が、労働条件、労働環境等の改善及び使用者の経営方針、活動内容等の改善を求める目的で、それらに係る問題点を指摘し、批判をするものである。

また、本件個別メッセージは、上記で指摘した問題点を高崎営業所の運転手らに周知し、理解と支援を得るために行われた表現行為で、労働組合の重要な活動手段であった。

さらに、本件個別メッセージの表現手段態様も、LINEの個別メッセージ送信というものであるから、平穏で、職場の規律を乱すおそれがない。

これらの点を合わせれば、本件個別メッセージの文面の記載内容、態様を踏まえても、本件目的①及び同②の存在が文面から明らかであることを踏まえても、正当な組合活動の範囲内に含まれる表現行為であることは論を侯たない。

そのうえ、このような正当な組合活動のもとでの表現行為として、必要かつ相当なものとして本件個別メッセージが送信されており、その記載表現が厳しいものであったり、多少の誇張が含まれたりしていても、それは性質上やむを得ないというべきで、それによって、本件会社の執行役員である原告(高崎営業所長でもある。)の社会的評価が低下したりすることがあったとしても、それは受忍すべきものにとどまっている。

加えて、本件表現①は、虚偽の事実を記載したものでもなく、殊更に事実を誇張又は歪曲したりしたものでもない。

以上のとおりであるから、本件個別メッセージの本件表現①は、正当な組合活動として違法性が阻却され、民事免責を受けることができる。

5本件表現②について

(1)「K所長にだまされてはいけません」との記述

この記述は、通常の読み手の一般的な理解を前提とすると、前記4(1)を前提とする記述であることが容易に理解できる。そしてその表現は、本件表現①「詐欺の手口」と同様の事実(いずれも真実である。)を前提とする、事実の摘示である。

すなわち、期限の定めのない労働契約上の地位にあったにもかかわらず、K所長(原告)が労働条件の不利益変更であることを説明しない態度をとることから、その態度を信用することで、存続期間1年の有期労働契約上の地位という不安定雇用の立場に置かれてしまうことを指して、「だまされてはいけない」と本件個別メッセージを受領した運転手らに注意喚起をしているものである。

もちろん、意見論評としての域を逸脱した表現でもない。

(2)「あのウソつきで」との記述

これについては、前記4(ユ)力及び同キの事実を前提とする論評であることが、一般的な読者を基準とする普通の読み方で理解できる。

したがって、論評の基礎となる重要な事実関係が真実である。

また、意見論評としての域を逸脱した表現でもない。

(3)「ワンマンでやりたい放題のK所長」との記述

これは、本件個別メッセージを受領した高崎営業所の運転手らであれば皆が把握している事実関係を前提とする論評である。

例えば、①営業所内の鉛筆を営業所外に持ち出した、というただそれだけの事実をもって、懲戒処分としての始末書の提出を(本件会社の執行役員であり、高崎営業所長である)原告が求めることや、②試用期間労働契約書(甲2号証の1)や再試用期間労働契約書(甲2号証の2)にある「秘密書類につき社外漏洩・コピーなどは厳禁とし、漏洩行為者は懲戒処分と違約金200万円以内を請求する」という記述、あるいは、就業規則(甲7号証)1枚目の「秘密書類につき社外漏洩・コピーなどは厳禁とし、漏洩行為者に対して懲戒処分と実損害(社会的信用失墜も含む)の賠償を請求する」との記述をもとに脅すような態度で原告が服従を迫ること等を重要な事実の基礎としているものであり、そのいずれも真実性に欠けるところがない。

もちろん、意見論評としての域を逸脱した表現でもない。

(4)「K所長の奴隷にされてしまいます」との記述

この奴隷とは、暗喩であり、原告(K所長)の言いなりにならざるを得ない労働契約上の地位を指す。

この暗喩は、原告(K所長)は、本件会社の執行役員であり、高崎営業所所長という権力ある地位を濫用し、労働条件の不利益変更の事実を説明しなかったにもかかわらず、説明をしたかのように強弁し、あるいは、労働者の署名・捺印があることを逆手にとって切下げ後の労働契約が有効であると言い張る態度をとっていることが、それぞれ重要な基礎となる事実である(前記4(1)参照。これらはいずれも真実である。)。

そのため、原告の意に添わなければ、有期労働契約を盾に、労働契約が期間満了で終了したとして労働契約上の地位を奪われることとなりかねないばかりか、そのような事態(職を失う事態)を危惧して、原告に対し何も言い返すことができずに唯々諾々と従うだけの労働契約上の地位に甘んじなければならないことについて、本件個別メッセージを受領した運転手らに注意喚起を促すものである。

もちろん、意見論評としての域を逸脱した表現でもない。

(5)真実性の抗弁

本件表現②について、以上のとおり、意見論評としての域を逸脱した表現でもなく、その論評の基礎となる重要な事実が真実であるため、被告には故意過失がないから、不法行為責任が生じない。

(6)憲法28条に基づく民事免責

前記4(4)で検討したところと同様であって、原告が受忍すべき限度を超えるものではないから、正当な労働組合活動として憲法28条により民事免責となる。

6本件表現③にっいて

実際に、差別や嫌がらせを群馬県労働委員会に訴え出ているところ、その事実を記述するものに過ぎず、何ら違法な表現行為ではない(社会的評価を低下させない。)。

したがって、本件表現③が不法行為を構成することがないから、被告が責めを負うことはない。

7本件表現④について

(1)本件個別メッセ一ジについて、「まずいこと」とは、通常の一般的な読み方を前提とする限り、論評であり、労働条件の切下げがあるにもかかわらず、それを説明もせずに無期労働契約から有期労働契約に切り替えていたこと(前記4(1)参照)を重要な基礎となる事実としていることが明らかである。

そして、その基礎となる重要な事実関係は、前記のとおり真実である。また、意見論評としての域を逸脱した表現でもない。

(2)また、「ウソと脅しで押さえっけて来たやり方」とは、通常の一般的な読み方を基準とすれば、論評であり、労働条件の切下げについて説明をしていないにもかかわらず、説明をしたと強弁すること(前記4(1)力参照)、そして、録音で原告が説明を行っていなかった事実を指摘しても、有期労働契約となった契約書面に署名・捺印があるから有効だとして判例法理(前記4(2)工参照)を無視して脅すことを、重要な事実関係の基礎としていることが明らかである。

そして、この基礎となる重要な事実関係は、前記のとおり真実である。また、意見論評としての域を逸脱した表現でもない。

(3)真実性の抗弁

以上のとおりであるから、本件表現④について、意見論評としての域を逸脱した表現ではなく、その識評の基礎となる重要な事実関係が真実であるから、被告には故意過失がなく、不法行為責任が生じない。

(4)憲法28条に基づく民事免責

前記4(4)で検討したところと同様、原告が受忍すべき限度を超えるところはないから、正当な労働組合活動として憲法28条により民事免責となる。

以上

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