吉ヶ谷専務・田村智、証人尋問で固まる
2023年11月28日、群馬県労働委員会で、高齢者介護施設・吉ヶ谷事件の第2回審問が開かれて、株式会社吉ヶ谷・専務の田村智の証人尋問が行われた。詳しくは文字起こしした調書が労働委員会から届いてからにするが、簡単に報告したい。
不当労働行為意思が明白に
すでに吉ヶ谷経営陣・田村親子が組合に対して敵意=不当労働行為意思を持っていたことは、田村智が永木裕介代理人(足立法律事務所)に宛てたメールが証拠で出されていて、ここに露骨に表現されていた。
これは2022年12月21日付のメールで、内容は以下のようなものだ。
「労組はA、Bが判明していますが、他の職員は未加入であると考えています。Bを中心として指導事項を守らないという職場の雰囲気となっております。そこで指導者として秋間事業所からM(秋間の看護師)を派遣し、磯部事業所からC、D(Bと比較的仲がよく、業務不熱心なところが共通しています。…)を人事異動してはどうかと話し合っております。労組員ではありませんがトラブルのもとになるのであれば様子を見たいとも考えております。」
このメールについて、質問されると、田村智は、それは確実に私が送ったものなんでしょうか?とすっとぼけたことを言う。
確かに出所ははっきりしていないが、会社の代理人も嘘はつけないので認めて、会社側も証拠としても提出している。この期に及んで、自分が出したものだと認めないのか?と組合から追及されて、しどろもどろになる田村智。労働委員もあきれ顔だ。
「人事異動してはどうかと」、誰と話し合ったのかと聞いても答えようとしない。社長、会長、Mと相談したことはこのメールを見ればわかる。「指導事項を守らない」とはどういうことかと聞いてももちろん答えられない。組合憎し、組合つぶしの労務管理を行っていた動かぬ証拠なのだ。
田村智は、だいぶ練習をしてきたようで、永木弁護士の主尋問にはよどみなく答えていたが、組合の反対尋問に入ると、すぐに答えられず固まってしまった。
この日は時系列の流れが重要な争点となった。流れとしてはこうだ。
- 2022年9月19日 田村智がAに30日後の解雇を通告
- 9月20日夜 組合が電話で加入通告と解雇撤回の申入れ。田村智はそれには答えず、「事件にいたします」「傷害事件かもしれないので」と言明した。
- 9月21日朝 Aに磯部から秋間への配置転換を命令。以後秋間での嫌がらせ、いじめが始まる。
9月19日の通告の時点で田村親子3人の経営陣でAを解雇にする合意が成立していたのは、解雇通告の録音から明らかである。ところが20日夜に組合から加入通告と解雇撤回の申入れがなされた。これで解雇の強行はまずいと判断して、翌21日朝に秋間への配置転換を通告して嫌がらせで追い出すという方針に切り替えたのが事実だ。
ところが労働委員会で配置転換が不当労働行為と認定されないために、配置転換を決定したのは19日の夜だというストーリーをでっち上げた。会社は、19日の解雇通告の場には社長がいなかった、それで19日の夜に社長・会長・専務の田村親子が集まって、社長の和子に解雇通告の報告をした、その時に社長が解雇は厳しすぎるからと言って、解雇を退職勧奨に切り替えてあわせて秋間への配置転換を決めたというのだ。
田村智専務は、母親の田村和子社長が、団交にも労働委員会にも一度も出てこないことをいいことに、和子の一存で解雇を取りやめ、配置転換を決めたというのだ。「私の上司ですから」という。とんでもないウソだ。和子は、すでに9月19日にAさんは解雇で辞めると通知して、Aさんのシフトの交代体制を取らせた。解雇したんだから穴を受けるのは当然のこと。しかし、組合が登場して解雇できなくなって、そのまま秋間でいじめて追い出すつもりだった。和子は、21日の配転を告げる面談の中で、「更生するのであればまた、役員で考えます」と言ったのだ。それに続いて息子の智は、会社がつぶれる、おれはうつ病になる、また組合に報告するのか、いっしょに仕事ができないなどと、遠回しに組合をやめろという話を延々と続けた。それが無駄だとわかった時に、和子が言ったセリフが「もうだめだよ」「勤めたいのなら勤めたらいい。…その代わりずっと監視が付きます。」「会社をつぶしてほかの従業員も路頭に迷わせるようなことはできないからね。うちの会社がよくて勤めたいんであれば考えればいい。」…これである。「解雇通告は撤回」など決して和子の頭にはない。配転通知はパワハラ・いじめ・不当労働行為の宣言でしかない。その結果、A組合員もB組合員もメンタル疾患でドクターストップで退職を余儀なくされた。そもそも和子社長の気分次第なやり方でどれだけ利用者も職員も嫌な思いと苦しい状況を強いられてきたことか、である。和子こそ責任を取らなければならない。
田村智の反対尋問で、そもそも社長も解雇通告に同意していたのではないのか、あなたははっきり社長の同意を得ているという言い方をしている、と文字起こしの証拠を示して問い詰める。固まってしまう田村智。社長の同意の上の解雇通告だったのか、社長の同意なく解雇通告をしたのか、どちらなんだと聞いても、答えられない。ごまかそうとして、組合員からも怒声もあがる。ごちゃごちゃ言って、結局「わからない」というのが結論だ。ウソをついているから答えられないに違いないのだ。
しかしそうすると次の問題が起こる。19日の夜に解雇通告を取り下げると決めたのであれば、20日の夜の組合からの通告と解雇撤回の申し入れに対して、解雇通告は取下げましたといえば済んでいたのである。会社はこれまで「解雇通告は取り下げる」などと回答したことは一度もないのである。20日朝の磯部支所申し送りで施設責任者がAさんは実は解雇されたと話している。これも追及されるや「行き違い」でごまかした田村智。何もまともな答えを出せない。
さらにA組合員に対するいじめのやり方である。吉ヶ谷は2023年9月13日に起こった利用者Eさんの出血事故について、A組合員が利用者に対して、暴言を吐きながら暴行をしてけがをさせたという「傷害事件」「暴行」ととらえ描き出した。第1回団体交渉の回答書でも「身体的虐待・心理的虐待・性的虐待」があったと決めつけていた。尋問で、市の調査結果は身体的虐待なしだということを職員も家族も知らされてないんじゃないか?と聞かれて「そう言われればそう…」と認めた田村智。あなたもEさんにけがをさせてますね?と聞かれて、A組合員は「死ね」とか暴言を吐きながらけがをさせた、受傷させる目的で受傷させたと答えた。しかし事実は安中市の調査結果をみれば明らかだ。暴言があったのは事実だが、「傷害事件」などという描き方は事実無根のでっち上げだ。11月29日、吉ヶ谷は利用者の家族を集めて事件の説明会を開いた。これを聞いた利用者家族のアンケートには、安心して預けられない、解雇せよ、処分せよ、等の言葉が並んだ。同じ11月29日、安中市は「身体的虐待」「性的虐待」は認められないという調査結果を吉ヶ谷に交付していた。これらはほぼ同時刻だという。なぜ安中市の調査結果を待たずに家族への説明会を行ったのかと追及されて、必要なら何回でもやればいい、と平然と言ってのけたのが田村智だ。
コロナ感染対策で団交を延期したなんて話もとんでもないウソだ。社長・会長は親戚を引き連れて能登半島へ旅行に行った。団交ができないなどと誰が納得するというのか?
こんな田村一族経営陣を相手にA組合員もB組合員も決して泣き寝入りはしなかった。悔しい思いで吉ヶ谷を去っていった医療福祉労働者は数知れない。同じような状況でがんばっている労働者が全国にいる。吉ヶ谷に必ず違法行為、不当労働行為の責任を取らせる。みなさんの支援・連帯をお願いします。