「にらがわの里」社会福祉法人圓(まどか)会との団体交渉
2021年2月9日、太田市で特別養護老人ホーム「にらがわの里」を運営する社会福祉法人圓(まどか)会との第1回団体交渉が開かれました。
組合員となったAさんは、2018年2月にソーシャルワーカーとしての仕事を嘱望され、採用されました。圓会が太田市から2018年4月から新規業務委託を受けた韮川地域包括支援センターに配属され、業務立上げの作業に中心的に携わります。
しかし同法人理事長園田哲男氏は、従来型特養「にらがわの里」に「生活相談員兼介護福祉士」としての異動を発令します。それまで社会福祉士としてのデスクワークしか知らなかったAさんに、本職の業務を与えず、カンファレンスへの参加もさせず、職務グループ・命令系統・情報系統から一切排除して、おむつ交換と入浴介助・食事介助だけのルーティン業務だけをやらせ続けました。本業は全くに関係しない不慣れな業務につかせた挙句、突如として2020年3月4日、具体的な事実も示さずに「訓告(注意指導)」なる文書を交付したのです。
その内容は職業能力を否定し、名誉感情を否定するもので、「将来を戒めるもの」などと明確な記載がある懲戒処分としか受けとめようのないものでした。
群馬合同労組は、悪質なパワハラであると認識、Aさんに加入してもらって、「訓告」の撤回、ソーシャルワーカーとしてのAさんを否定した不当配転であるからとして、異動通告の撤回を要求し、団体交渉の開催を求めました。
団体交渉には圓会からは園田哲男理事長、施設長、事務局長、総務グループリーダーの4名が出席しました。組合からは、当該A組合員・清水執行委員長先頭に感染対策で人数を絞って6名が出席しました。
団交開催前、開口一番に、とても穏やかな感じで、園田哲男理事長は、「私は利用者の安全第一で、職員のことも考えながら7年、理事長職をやってきました、今日はよろしくお願いします」とあいさつしました。団交は、太田グランドホテルを法人側が指定しての開催、事前に要求通り就業規則・賃金規定・36協定書の写しが組合に送付もされていました。
第1回団体交渉では、まず包括支援センター社会福祉士から実質的には特養介護福祉士業務への異動に関して、業務上の必要性についての説明が行われました。Aさんと同僚B(行政名管理職)が口論をしていることが目立ち、雰囲気が悪いとの利用者のクレームを受けて、業務受託先の太田市から「厳重注意」を2回受けたというものでした。法人としては解決を図るために、メンバーを集めて、コミュニケーションを取ること、話し合いによる解決を指導したが、繰り返されたと言います。これが事実だと仮定しても業務上の必要性を説明するものではないため、既に不当配転です。降格人事の制裁ということも出来ます。
Aさんは「そもそも口論だとされているやり取りは、無軌道な行動(幾重を告げずに外出をする、報告連絡相談をしない、事実と違う内容を内外に喧伝する、無断欠勤、遅刻・早退)を繰り返すBに対して、メンバー内で朝夕、昼休憩の時間に話し合う場を作るように努力要請をしていた」のであって、それが達成できるための仕組みづくりを構築し、実施の提案をしたうえで「作業協働と報連相をしましょう」と繰り返していたのだ、と事実を訴えました。Bの日に日に増悪していく無軌道行動を前に、Aさんが地道な試行錯誤が達成されずに精神的に追い込まれるまでに悩んでいたことについて、理事長は(聞いたかもしれないが)覚えていないと言いました。理事長は、そばに控える事務局長とグループリーダーにその場で、確認を取ると両名は「そのような事実は聞いています。報告も差し上げています」と言いました。状況改善の努力をしていたのは管理者Bではなく、Aさんだったことが確認できました。社会福祉士としての名誉と仕事を奪われたことに関しては納得のいく回答はありませんでした。
団体交渉の要求事案のうち、もうひとつのAさんへの「訓告」の問題に関して、園田哲男理事長は、「懲戒にするには、就業規則には賞罰委員会を開くとなっている。賞罰委員会を開いていないのだから懲戒ではない。そもそもこれは懲戒処分の通知ではない。」と繰り返しました。あくまでも「注意指導」だったと居直りました。
組合は、「注意指導」であるならば、なぜあえて表題に「訓告」とつけたのかと問い詰めると、表現、言い回しの間違いに過ぎない、そこは申し訳ないと理事長は言います。
Aさんは、この居直りに対して、「題名だけの問題ではなく、本文に懲戒処分である明示があるじゃないですか。懲戒処分であるか否か、専門職にとって、一人の労働者にとってどういう問題になりますか。履歴書に「前科」がつくかどうかの問題なんですよ。」というと、園田理事長は「(懲戒ではないので)履歴書に書くなんて考えていません」と答えます。これにはAさんも怒って「考えていないで出していい書類ではないですよ!」と弾劾します。
当時、この訓告通知を交付したというのは施設長だったと言います。Aさんは、施設長に「この書類を交付されたとき、私は、申し開き弁解の場であるか、もしくは懲戒手続きはいつどのように行われたのか、を尋ねましたよね。確認ですが、施設長は当時、この書類をどのような認識で私に交付したのですか。」というと施設長は口ごもりながら「注意だから・・・。これは…。そういう認識です」と明確な返事を示しません。
Aさんは、「1年間、この処分をずっと心に置きながら、穏やかに、多くを語らずも、いつか誤解が解けるまで。まずは目の前の仕事をこなそうと。そう誓ったんだ」と、と訴えました。そして、はじめは不慣れな肉体労働の限界から終業後のロッカールームで一人、へたり込んだ夜が何度もあった。それでも若手のいうことを聞きながらでも、どんなに理不尽に感じても我慢してやってきた。その事実をどう感じていますか。ニコニコなにごとなかったようにと努めていましたが。どんな気持ちか、想像することができますか。」と、感嘆の言葉を極めて冷静になろうと努めて訴えていました。
実はこの「訓告」の文書は、「課題提出」と称して、期限を定めて反省文の提出を指示しています。さらに理事長は提出期限を待つまでもなく、Aさんを呼び出して「法人に多大な迷惑がある事実、どう思っているんだ、利用者様の苦情だ、課題はどうなっている、などと提出を促していたのです。懲戒の種類としては、「訓告」のもう一つ上の厳しい処分「戒告」相当にであることは明白です。
そもそも文書の中には「職務義務を逸脱する行為」「法人に多大な損失ないし迷惑をもたらした言動・行為」「厳しい処分」「反省および改善がな(い)…場合には厳重な懲戒処分が科せられる」「今回の賞罰」云々と書いてあるのです。賞罰委員会を経ずして、このような通知をし、繰り返し理事長面接を要請するといった時点で、解雇(自主退職)に追いやろうという退職強要の意思は明白であると言わざるを得ません。
さらに悪質なのは、この「訓告」を出す前、園田哲男理事長が介護のリーダー・サブリーダーに、Aさんの言動を監視させ、記録を残すように指示を回させていたと自白したのです。
Aさんが、群馬合同労組に相談を寄せた時一番に悔しく思い、不当だと思う、そう、訴えてきたのは、その懲戒理由の具体的な「言動・行為」が何も示されていないこと。職業的名誉感情を傷つけるばかりで、何をもって指摘しているのか、なにか指導があったというのか、自分でもさっぱりわからない、反省しようにも、具体的に何をどうしたのかがわからないということでした。
にもかかわらず、圓会は反省文の作成を業務命令で要求、強要し、挙句に労働者にとって刑事罰に匹敵する社会制裁である懲戒処分を処断したのだから話になりません。
組合は、具体的な問題の「言動・行為」を示せと強く、要求しました。すると、要求書に対して園田理事長は、「懲戒ではありません」と回答を繰り返し、具体的な内容の提示要求に応え得ることから逃げようするばかりなのです。
組合の怒りは爆発します。福祉だとか人権だとかいいながら、Aさんがどれだけ苦しんだかわからないんですか?「訓告」出して苦しめておきながら、組合から問題糾弾され、回答を迫られたら「懲戒ではありませんでした」とは?それで、福祉を名乗る資格があるんですか?と弾劾します。なおも追及されると、それまで饒舌に独自の理念を語っては論点をすり替えようとした園田哲男理事長は黙り込みました。
回答が得られないため、「いわれのない誹謗中傷」「仲間外し」「研修等の機会・情報を与えないこと」など、いわゆるモラルハラスメント・過小要求の是正要求について、謝罪と補償を求めたことについて議題を転じました。
圓会の回答は「そのようなことはない」。すると、Aさんが「一例を示します」と前置きし「例えば、私はこの一年、一度もカンファレンスにも参加したことがない」と話すと、出席者の誰もがその事実を知らなかったと言います。組合は、追及を緩めることなく「仲間外し」の事実について、調査したのかと聞くと、「現場介護職リーダーに聞いたら「ない」と言っていた」と回答しました。
組合は、一般論で応じます。いじめと同じで、虐めている当事者に聞いて「やってない」で終わりならば、調査ではありません。「いじめています」というはずがない。団体交渉要求の何を確認したんですか?圓会の安全配慮義務はどうなっているんですか?そちらの組織の問題解決責任者はいったい誰ですか??と質問を投げかけるが、誰も答えませんでした。恐ろしい無責任体制だと言わざるをえません。
ここで時間切れでした。
群馬合同労組としては、再度文書での回答を求めて、第1回団体交渉を終わりました。組合は圓会・園田哲男理事長の福祉を語る欺瞞に満ちたインチキを許しません。Aさんを苦しめた責任を取ってもらいます。
みなさん。どうでしょうか?同じような話はないでしょうか?今回Aさんは、けじめをつけたい、このまま終わらせたくないと、群馬合同労組に相談・加入してくれました。
団交をやり終えて、A組合員のお礼のメールには、「組合員の皆様と縁あって知り合えたこと」が最大の成果だとありました。福祉・介護労働者はつながり、団結して、まともな職場を作るためにともに闘いましょう。
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