中央タクシー残業代裁判が結審

28 10月 by gungoroso

中央タクシー残業代裁判が結審

 中央タクシーを相手に固定残業代制度のインチキを暴き、残業代と深夜割増賃金の不払い分を支払えと闘ってきた裁判が、10月9日結審した。判決は来年1月15日に出される。

 これに先だって、7月31日に証人尋問が行われた。原告のTさん、Sさん、被告会社の代表取締役、宇都宮司社長が順番に証人席に座った。

 2015年6月に長時間労働とパワハラに苦しむ労働者の相談から始まった中央タクシーの闘い。長野、群馬、新潟を主な拠点として、成田・羽田両空港への直接送迎の乗合ジャンボタクシー事業を運営してきた会社だ。群馬営業所の3人が群馬合同労組中央タクシー分会を結成し闘いを開始した。組合員に対する乗務外し、固定残業代の8万円減額などの激しい組合つぶしとの闘いだった。ストライキをはじめとする職場での闘い、労働委員会への救済申立、地域を席巻するデモなど組合の全力をあげて闘った。労働委員会闘争に勝利して、すべてを取り戻した。そして職場まるごとの組織化に手をかけたとたんに起こった分会長への襲撃事件。組合は大きな傷を受けながらも負けずに団結を守り抜いてきた。その総括をかけた残業代裁判でもある。

 中央タクシーの賃金体系は、こうだ。基本給16万円、稼働手当114,600円、それに空港実車手当(数千円程度)と通勤費がつく。この稼働手当が固定残業代であると会社は主張する。

 しかしこの「稼働手当」には大きな問題があった。

 ひとつは、そもそも労働時間管理がなされていなかったこと。運輸労働者には、実際に運転をしていない待機時間をどのように扱うかという大きな問題がある。休憩時間なのか、労働時間なのか、これで賃金に大きな差が出る。労働時間管理とは、運転時間がどれだけで、労働時間としての待機時間がどれだけで、賃金の発生しない休憩時間がどれだけか、ということを個々の労働者ごとに把握しなければいけない。ところが中央タクシーの「稼働手当」は114,600円払ってるから細かいことは言うな、という形で、実際には残業代や深夜割増をごまかしてきた。

 もうひとつは、群馬合同労組の分会が闘いを開始するまで、賃金規定に「稼働手当」の規定が存在せず、「調整手当」と記載されていたこと。

 もうひとつは、この「稼働手当」は、2013年6月まで固定額ではなく毎月違う金額で、これとは別に「時間外手当」と「深夜手当」が支払われていたこと。添付の当時のAさんの給与の表を見てほしい。一見、「時間外手当」も「深夜手当」もちゃんと支払われているように見える。しかしこの表の作成を通して、これがインチキだということが判明する。エクセルの自動計算で「時間外手当」と「深夜手当」と「稼働手当」の合計を計算したら、なんと毎月114,600円の固定額だったのだ。つまり、「時間外手当」も「深夜手当」もきちんと計算して支払っているかのように装い、その実は、労働時間管理など行わず、114,600円を固定残業代としてジャンボタクシー部門の全員に同額を支払っていた。賃金規定に「調整手当」とあったのはそのからくりから付けられた名称だったのである。そして労働者は誰もその事実に気がつかなかった。分会長でさえ、以前は「残業手当」が支払われていたのに、支払われなくなった、と思っていた。

 これらにふまえて裁判では原告は、「稼働手当」は残業代・深夜手当ではなく、時間外割増賃金の算定にあたって算定基礎額に算入される手当であると結論付けている。

 この「稼働手当」と名付けられた固定残業代制度は、「定額働かせ放題」の制度だ。たちが悪いのは、このように中央タクシーは、きちんと残業代・深夜割増を支払っているかのように偽装することから始まった詐欺的な制度だということである。

 そして偽装は、それだけではなかったのだ。長時間労働に関する国土交通省基準の違反を隠すためにタコグラフの改ざんをも行っていたのだ。そのやり方は、乗務開始から乗務終了までの合計時間が15時間を越える場合には、タコグラフを途中で抜き取って、2枚目に入れ直す、というやり方である。15時間以上のタコグラフを勤務終了後に運行管理者に提出すると、「不可」と赤字で書いて返される。そしてそれを手書きで書き直せという指導が行われていた。

 こうした偽装はもちろん会社ぐるみ、社長の指示で行われたことは間違いないのだが、社長は証人尋問でしらを切った。こういう指導がされていることを、知らなかった、と。組合に指摘されてから、やめるように言った、と。

 しかし原告代理人の弁護士から「運行管理として、労働時間の管理がきちんとされてなかったという実情があったんじゃないですか?」と聞かれて、宇都宮社長はこう答えるしかなかった。「そうです。」

 裁判では、Tさんが毎日記録していたノートの労働時間の記録としての証拠価値や、休憩時間の実態と扱いについての問題など、重要な争点について、完全に勝利したと思う。

 このとんでもない人でなし企業によって、実際に、業務中の運転手の死亡など、過労死と疑われる事態も起こった。健康を破壊された労働者がたくさんいる。運輸労働者の置かれている現実は、どの会社でも同じだと思う。労働者が団結して闘うことが現実を変える道だ。生きるために、闘う労働組合に結集して、ともに闘おう!群馬合同労組・合同一般労働組合全国協議会にぜひ相談を!

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