暁工業とSUBARUは外国人派遣労働者に対するパワハラ解雇の責任を取れ!
群馬合同労組は日系ブラジル人A組合員に対する暁工業のパワハラ解雇を絶対に許さない。またそれに加担するSUBARUも許さない。
A組合員は、SUBARU大泉工場において通訳・翻訳の業務を行う派遣労働者として、2021年9月23日から暁工業との雇用契約を締結した。しかしA組合員は、2024年7月に上司のB氏から「解雇してやる」と言われ、同年8月23日に暁工業から「抵触日満了(9月23日)で解雇」と言われる。9月3日にはA組合員が使用する職場のパソコンのネットが切断されるなどの嫌がらせを受けた。A組合員は、これらのパワハラと嫌がらせを受けて、うつ病を発症して9月4日から休職せざるをえなかった。A組合員はインターネットで群馬合同労組を知り相談加入、組合は9月7日付で暁工業に解雇の撤回を求めた。
これに対して暁工業は、代理人となった弁護士法人せせらぎ法律事務所(太田事務所)の小川昌幸弁護士の名で要求を拒否する回答を行い、さらにA組合員が仕事探しをしていることが判明したとして、休職を解除、あわせて「さく病」・虚偽報告であるとして5日間の出勤停止の懲戒処分を通告した。会社のパワハラでメンタル発症して休職している労働者に休職を取り消して懲戒処分、しかも仕事ができない、仕事を与えない労働者に出勤停止だ。そして解雇に抗議するA組合員に対して、10月31日付で雇止め解雇を通告した。
問題点はいくつもある。
まず第一に、派遣労働者の3年の期間制限の問題である。
A組合員は上司のB氏からにらまれ、解雇してやると言われた上、当初3年の派遣の抵触日を理由に雇止め解雇を通告された。実はA組合員はこの3年の期間の途中で60歳の誕生日を迎え、期間制限は消滅していたのであるが、暁工業は60歳以上の適用除外を知らずに雇止め解雇しようとした。だからSUBARUとの派遣契約は2024年8月末で終わりになっている。通訳・翻訳は業務の専門性が高く、3年を超えても、あるいは60歳を超えても、暁工業の社員として雇用を継続して業務に当たらせるのが暁工業の常であった。A組合員を3年の期間制限を理由に解雇しようとしたのはでたらめであり、パワハラである。期間制限がないことをA組合員に突きつけられ、パワハラを否定するために暁工業は解雇の理由を様々にでっち上げてパワハラを上塗りしたのである。
派遣労働者の3年の期間制限は、ともすると派遣労働者の無権利の問題としてとらえられ、派遣労働者なんだからあきらめなければいけないと思いこまされているが、そうではない。3年を超えて継続するような業務を派遣労働者で低コストで回すというような脱法行為を派遣先企業に禁じるというのが法の趣旨である。
韓国の旭硝子支会(旧旭非正規職支会)が9年に渡る解雇撤回闘争の末に正規職としての復職と正規職の基準賃金でのバックペイを勝ち取った。製造業務への違法派遣(偽装請負)だったからだ。日本でも派遣労働者が3年を超えて同じ職場で同じ業務で働けば正社員化・直接雇用など雇用安定義務が派遣元・派遣先に生じる。労働組合として闘えばそのような展望が開けることを旭硝子支会は教えてくれた。
群馬合同労組はA組合員の問題をそのような問題ととらえ、暁工業の拒否回答とパワハラを受けて、派遣先であるSUBARUに直接雇用せよと要求書を提出して実質的な団体交渉を行った。しかしSUBARUは60歳を超えていること、そして雇用安定措置を講ずる義務は派遣会社にあるとして直接雇用を拒否した。
第二に、暁工業とSUBARUとの派遣契約自体がインチキである。派遣契約は、指揮命令者は派遣先のSUBARUでなければならない。ところが一切の指揮命令を行ったのは暁工業であった。A組合員は派遣契約書に記載されたSUBARUの指揮命令者の顔を知らない。就業場所も他の工場に行かされたり、業務に使うパソコンもSUBARUのものではなく暁工業のものである。
偽装請負がよく問題になる。請負という契約で請負会社の従業員が、実質的に派遣先の指揮命令の元で働く、すなわち派遣労働を行うのである。派遣法の縛りを逃れて、派遣先は安くて使い捨て出来る労働者でずっと現場を回すことができる。A組合員の場合は逆である。派遣契約なのに請負の業務形態で就業していた。指揮命令者が契約書と違うという問題は安全配慮義務の問題になる。
実際暁工業が組合に示した回答書で、雇止め解雇の理由の一つとして、SUBARUの管理職から受けたクレームがあげられている。ある現場で(通訳なので色々な現場で業務を行う)、A組合員がSUBARUの正社員の私物を勝手に使って暁工業がクレームを受けたという。コロナで感染症対策に敏感になっていた頃、使用したテーブルをアルコール消毒するのに置いてあったティッシュをA組合員が使った。そのティッシュが私物であり、問題だというのだ。あきれた。これはSUBARU・派遣先によるパワハラだ、謝罪しろと要求したがSUBARUはパワハラには該当しないと居直った。これがSUBARUなのか、外国人労働者に当たり前にこういう理不尽なことが行われているのではないのか?
こういうことが起こるのは派遣契約がインチキだからだ。SUBARUが暁工業と締結した派遣契約と、暁工業がA組合員と結んだ派遣契約の内容が違うのである。SUBARUと暁工業の派遣契約における業務内容は「構内業務における通訳、翻訳業務」であるが、暁工業がA組合員に示した就業条件明示書では「作業補助業務」である。通訳・翻訳は専門業務であり、決して作業に手を出してはいけない業務であるが、作業補助業務は作業に手を出す業務である。また個別派遣契約期間もSUBARUと暁工業との契約は2024年8月末で終了とされていた。暁工業が離職票で示したA組合員の雇止め解雇日は10月31日である。なんでこんな違った契約になっているのかとSUBARUに問いただしても、暁工業が派遣労働者とどのような契約を交わしているかまでは関知していないと逃げるばかりである。
通訳・翻訳というのは高い専門的能力が求められる。「熱中症」をポルトガル語に通訳できる人は自分の他にはいなかったとA組合員が言ったが、それに加えて業務や作業や工具や部品の通訳をするのは経験とスキルが必要だ。A組合員は自信も誇りも持って仕事を行ってきた。それを暁工業は上司が勝手な理由をつけてでたらめなやり方で追い出して病気に追いやった。SUBARUも外国人労働者の主力を占める日系ブラジル人の通訳・翻訳を暁工業に安易に一任して、結局暁工業を擁護して、SUBARUの責任を否定した。しかし派遣法違反の事実は残っている。群馬合同労組は、外国人労働者に対するこのような仕打ちを許さない。
A組合員は11月3日の全国労働者総決起集会に参加して、もう一人の日系ブラジル人組合員といっしょに組合旗をもって壇上に上がった。A組合員一家がブラジルに移民したのは戦後だという。戦争がどのように民衆を苦しめたのか身をもって知っている。だから絶対に戦争反対だという。群馬合同労組は外国人労働者との団結と連帯のためにさらに闘う。暁工業とSUBARUはA組合員に対するパワハラ解雇の責任を取れ!