読売新聞足利西部店は不当解雇撤回せよ!県労委最後陳述書

24 2月 by gungoroso

読売新聞足利西部店は不当解雇撤回せよ!県労委最後陳述書

 読売新聞足利西部店(株式会社辰巳 栗野励代表取締役)がアルバイト配達員として働いてきたN組合員を解雇したのは、労働組合組合員であることを理由とした差別的不利益取扱いであるとして、2021年2月に群馬県労働委員会に救済申立てを行って闘ってきた。2022年2月18日にこの事件が結審をした。群馬県労働委員会の命令は5月をめどに出される予定である。結審を前に群馬合同労組が県労委に提出した最後陳述書を掲載する。

群労委令和3年(不)第1号

株式会社辰巳不当労働行為救済申立事件

2022年2月9日

群馬県労働委員会

 会 長   清水 敏 様

                 申立人  群馬県高崎市柴崎町60-2

                      群馬合同労働組合

                       執行委員長  清水彰二   

最後陳述書

1  被申立人が申立人組合員Nを解雇したことは、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いに該当する。

A 本件解雇の合理性・相当性は存在しない

第1 本件解雇に理由はない

(1)被申立人は本件解雇理由を「N氏の不着や欠配、無断欠勤、能力不足による」(準備書面(1)5頁3行目)とする。第2回審問において栗野代表取締役は「もう、万策尽きたと」「もう、教えることもできない。早く配達させることもできない。そして社員の負担を減らすこともできない。これはもう、そして反省もしない。辞めていただくしかないと」判断したと証言する(第2回審問証言速記録第3冊14頁下から16行目~)。しかしながらこれには理由がない。

(2)栗野代表取締役は、同じ証人尋問の別のところでは、「この欠配がなければ、そういう(雇用を継続する)考えがまだ続けていられたかな?」と問われ、「そうですね。」「全然、いたと思います。」と、欠配がなければ雇用を継続するという考えでいた(第2回審問証言速記録第3冊41頁6行目~)と証言した。

(3)F店長は、第3回団体交渉に臨むにあたって、「その欠配とか不着があった後になりますので、…こちらの条件を飲まなかったら解雇も視野に入れるっていう認識で、はい。」(第2回審問証言速記録第1冊40頁下から4行目~)などと証言し、月給制の条件をNがのまなかったら解雇も視野に入れるとの、栗野社長・春日大輔氏と打ち合わせを行ったことを証言した(第2回審問証言速記録第1冊40頁下から12行目~)。

 またF店長は、月給制の条件をのむならば「もうそのままじゃよろしくお願いします、こっちも指導をしっかりしていきますって流れ」(第2回審問証言速記録第1冊41頁下から8行目~)などと証言している。

(4)したがって、事実経過として、被申立人は、Nの無断欠勤を契機として、労働条件を他の従業員と同じ月給制で同じ賃金水準に引き下げることを企図したことが明らかである。しかし、それは、申立人との間で交渉を通じて、Nの労働条件について決定するという合意を反故にするものであった。であるがゆえにNと申立人がこれを拒否したのを受けて、被申立人は「N氏の不着や欠配、無断欠勤、能力不足」を無理に理由にでっちあげてNを解雇したものである。

第2 「欠配」(無断欠勤)について

(1)2020年8月11日のNの無断欠勤は、休日と勘違いして飲酒してしまったことが原因である。Nは反省し、謝罪もしている。それでも看過できなければ、就業規則の規定に則り、懲戒処分を発令すべきであった。被申立人の就業規則では「正当な理由なく欠勤したとき」は「けん責処分とする」(甲25号証12頁第40条1項)と規定されている。また被申立人は、この無断欠勤について、Nの弁明の機会も設けず(第2回審問証言速記録第3冊37頁3行目~)、また、適用すべき懲戒の種類について検討したこともない(第2回審問証言速記録第3冊41頁22行目~)。よって無断欠勤は解雇の理由たりえない。

(2)被申立人・栗野代表取締役は、「Nさんの「遅配」や「不着」を改善するために皆でこれだけ頑張ったのに、Nさんの仕事のミスで皆にたくさん迷惑がかかっていて、Nさんも迷惑がかかっていることを自覚しているであろうに、何故、この人は無断欠勤をして更に迷惑をかけるのだろうと、プツンと糸が切れてしまいました。」(陳述書、乙19号証9頁下から8行目~)と陳述する。また無断欠勤が解雇の主な動機、「諦めるきっかけ」(第2回審問証言速記録第3冊41頁10行目~)と証言して、これを契機に「能力不足により解雇」を検討するようになったと言う。この点を検証する。

(3)被申立人は、無断欠勤の理由が「前日酒を飲み過ぎて起きられないと驚くべきものであった」(被申立人準備書面(1)4頁下から11行目)と主張するが、それは事実ではない。

 Nは基本的に毎週火曜日が休日であった。それでシフト表で休日が変更になっていることを失念・勘違いして、2020年8月11日の火曜日は飲酒をしてしまった。出勤時間になってもNが出勤していないことにF店長が気づき、電話をかけたが、すでに飲酒してしまっているので、欠勤となった。

 そこを問われて、被申立人・栗野代表取締役は「だからそこを、集中的に怒ってるということ、僕はないです」(第2回審問証言速記録第3冊36頁4行目~)、「そこよりも、本当に怒っているFに対して、せせら笑うとかそういうところですよね」(第2回審問証言速記録第3冊36頁下から3行目~)と証言した。

(4)被申立人は、第2回審問において以下の通り、証言した。

    1. 「笑ってたとかそういうのを聞いたもので、解雇も視野に入れる、入れました」(第2回審問証言速記録第3冊10頁下から1行目~)
    2. 第3回団体交渉の前の打ち合わせに関して、「自宅待機っていうのは、反省の色がない場合は、させることもあるというのは、Fに、Fと事前に話はしておりました」(栗野代表取締役、第2回審問証言速記録第3冊38頁15行目~)、
    3. 「そこよりも、本当に怒っているFに対して、せせら笑うとかそういうところですよね」(栗野代表取締役、第2回審問証言速記録第3冊36頁下から3行目~)、
    4. 「第3回目の反省の、ちょっと、さっきも言った言葉が悪い、反省の色がないと、いうふうに判断したのはFです。」「それで、もう店に出てきて欲しくないと、なった、から、休ませたと、これは事後報告で聞きました。」(栗野代表取締役、第2回審問証言速記録第3冊37頁下から13行目~)
    5. 「(春日さんが言い出した話ですよね)…そうなんですか」「(団交の、議事録読んでますよね)読んでます」「すいません。本社の訪店っての、完全に盛ってますね。」「自宅待機っていうのは、反省の色がない場合は、させることもあるというのは、Fに、Fと事前に話はしておりました。」(栗野代表取締役、第2回審問証言速記録第3冊37頁下から6行目~)
    6. 「その欠配とか不着があった後になりますので、…こちらの条件を飲まなかったら解雇も視野に入れるっていう認識で、はい。」(F店長、第2回審問証言速記録第1冊40頁下から4行目~)
    7. 「自宅待機は自分が決めたことになります。」「(いつ決めた?との問いに対して)それは事前に自分達が条件を出して、それに合わなかったら自宅待機してもらって最終的には普通解雇じゃないですけどそういうところの話に持っていくっていう、になるしかないなと思ってました。その中の一つですね、自宅待機って。」(F店長、第2回審問証言速記録第1冊20頁8行目~)

(5)明らかなこと。

    1. 第3回団体交渉において解雇を視野にNを自宅待機にさせたのは、「反省の色がない場合」には、F店長の判断で自宅待機を命じるという、栗野代表取締役とF店長の事前の打ち合わせによるものだったこと。
    2. しかしながら、第3回団体交渉記録(甲28号証)を見ると、Nは反省と謝罪を繰り返し、弁解や居直りは一切ないこと(20頁15行目、28頁15行目、同25行目、32頁下から10行目)は明らかである。ちなみに、被申立人は「Nさんが、Fさん教えてくんなかったから不着したんですよねというような発言をされております」(中野代理人、第2回審問証言速記録第1冊10頁最後の行~)、「…、で、不着教えてくれなかった。正直、何をもう、5時半前に終わってるってことは何を教えればいいのか自分もわからない状態でした」(F店長、同11頁5行目)「早く、ならないんで、言っちゃってるわけですよね。早くならない。教えてくれないからだって。」(栗野氏、第2回審問証言速記録第3冊13頁9行目~)と主張する。しかし該当するN発言は「着いた時(注:F氏が後ろに付いた時のこと)もまああれね、Fさんおしえてくんなかったら不着してたんですよね」(甲28号証20頁5行目、一軒配達を飛ばしそうになったのをF氏が指摘して不着にならずに済んだことを指す)が正しく、被申立人の悪意ある誤読である。被申立人はこの誤読と歪曲をもってNが自分にはできないと言った、反省していない、「前向きな姿勢」(F店長、第2回審問証言速記録第1冊13頁下から7行目~)がないとでっち上げて、解雇を正当化しようとしている。
    3. 第3回団体交渉においてF店長が自宅待機を命令する発言も、関与する態度表明も一切ないこともまた明らかである。またF店長の「所長と春日さんの電話で話したりもしてたので、そこで訪店の話とかそういう段取りができていたのかなと。要は訪店は実際あったのかなと。自分思いました。」(F店長、第2回審問証言速記録第1冊20頁2行目~)との証言にあるように、F店長は第3回団体交渉の自宅待機を命じる理由について知らされておらず、判断を下す責任者ではなかった。
    4. F店長は「自分達が条件を出して、それに合わなかったら自宅待機してもらって最終的には普通解雇じゃないですけどそういうところの話に持っていく」という認識であり、反省がないという判断の余地はなかった。
    5. 無断欠勤の翌日の勤務で、Nは一番にF店長に謝罪をしたが、それに対してF店長は「分かりました気をつけてくださいって」答えている。その時の反省の様子については「その時は何か指導があったんじゃないですかね。分かんないですけどなんかその電話の時とは全然違いました」(第2回審問証言速記録第1冊38頁8行目~)と、反省していないという認識を持っていなかった。

(6)よって、「欠配」(無断欠勤)は、解雇の主な動機、「諦めるきっかけ」(栗野代表取締役、第2回審問証言速記録第3冊41頁10行目~)との主張には理由がない。

第3 不着が多いことについて

(1)第2準備書面 第5(4)不着について(23~26頁)を参照されたい。

====第2準備書面 第5(4)====

(4)不着について

  • 差別的取扱いであること

 不着がなぜ起こるのかについて、Nの「不着・遅配・欠配についての陳述書」(甲57号証)、ならびにNIの「陳述書」(甲58号証)に詳しい。被申立人の構造的な問題が積み重なって現場に困難を強制した結果として、不着が発生しているのである。

 解雇の理由として、被申立人は、Nが特別に不着が多く、向上の見込みがないと、最大の問題にしている。被申立人・栗野励代表取締役は、第4回団体交渉では「ま、決定打は欠配です。」(甲29号証19頁2行目)と言明したが、「欠配」による懲戒解雇がむずかしいとわかると、不着が多いこと、改善しないことを最大の解雇理由としたのである。

 Nが特別に不着が多いと言えるのかを検討する。Nは、YC足利西部店の6区を受け持つことになったのが、2020年2月22日である。「欠配」を理由に自宅待機を指示されたのが2020年8月21日であり、6区を配達したのは6カ月である。

 甲52号証は2019年8月から2020年4月までの被申立人・YC足利西部店の不着メーターの写真記録である(Nが撮影)。

 これによると3区のHD氏は2019年8月以前から3区の配達を担当しているが、2019年9月に9件(甲52-2)、2019年10月に12件(甲52-3、甲52-4)、2019年11月に7件(甲52-5)、2019年12月に10件(甲52-6)、2020年1月に11件(甲52-7)の不着が確認される。Nと同じように担当6カ月目に11件の不着である。

HD氏は2020年4月に退職しているが、これは解雇ではない。業務がきつくて、体調不良による自己都合退職である。この一事をとっても、Nが差別的に不着を理由に解雇されたことは明らかである。

 また被申立人は乙2号証の不着メーターを、Nが他の従業員と比べて特別に不着が多い証拠としてあげているが、Nは、2020年2月22日から小俣店から異動して新しい区域を担当している「新人」であることを明確にさせる必要がある。他の従業員はすでに自分の担当配達区域に熟達した者であり、順路帳が整理もされず、まだ覚えきっていないNとは違うのである。

 新しい区域を、280部から360部に増やされて配達するNに対して、ストライキ後に職場復帰する合意をした第1回団体交渉の中でも被申立人は、責任をもって指導をすると言明している(甲26号証41頁5行目)。しかしながら被申立人は指導らしきことは全く行っていない。むしろ問題を放置して、現場の混乱を拡大した。不着には理由があり、被申立人の責任が大きいのである。

 

 Nの不着の大きな原因のひとつは、被申立人の作成した順路帳に間違いが多く、信用できないという問題がある。つまりNの能力以前の被申立人の問題である。

 以下はNの陳述書からの抜粋である(甲57号証1~2頁)。

「足利西部店の順路帳は信頼できないものであった。」

「足利西部店の順路帳は書かれたとおりに配ると同じ道を何度も行ったり戻ったりしたり、道路を何度も右折で横切る、スムーズにやろうとすれば歩道に乗り入れたり道を逆走したりすることを想定したようなところがあった。」

「順路帳は同じ名前が二か所にある、契約切れの名前が書きこまれたままになっている、アパートの部屋番号が違うなど間違いが多いが、それを手書きで直しているという状態だった。しかしせっかく直した順路帳は、次の月にはパソコンで打ち直された際に間違った状態になってしまう。」

「辰巳ではF店長以外の専業が順路帳を訂正する権限を持っておらず、すべての区域においてF店長が責任者であるが、顔を合わせることも少なく、順路帳に書き込みをしても翌月に反映されないような状態で、管理できていなかった。順路帳を見ても混乱してしまい、頼りにできるものではなく、不着の原因となった。」

  • 指導教育体制がなく、指導教育がなされていない問題

 Nの不着の原因には、被申立人の新人教育がほとんど行われていないという問題がある。新しい店の新しい配達区域であること、配達部数が格段に増やされたこと、長年慣れていた組み作業ができなくなったことなど、Nに対してしっかりした新人教育は絶対に必要であった。それは余裕のある人員配置の上で、マンツーマンによる指導が不可欠であるが、そもそも被申立人にはそのような体制がなかった。

 以下はNIの陳述書(甲58号証5~6頁)よりの抜粋である。

「2021年2月22日、早朝、Nが足利西部店に入ると、F店長がいて、『今日から6区をやってもらいますので、(臨配の)Sさんの後ろについてください』と言われ、6区の順路帳を渡された。その順路帳は前の臨配のSTさんが使っていたものをSさんが譲り受けたもので、ボロボロな状態で、セロテープで修理したようなものだった。」

「その日、アルバイトのINさんが『6区はどんどんアルバイトが入れ替わって、人が全然いつかない区域なんだよ』と教えてくれた。」

「その後、臨配のSさんが6区を配る後ろをバイクで必死に追尾した。臨配が配達しているのを追いかけるばかりなので、配達先の家と順路帳を突き合わせるのも困難だった(本来、最低限、店の従業員がゆっくりと順路を回って指導すべきだったのに、何一つそうした指導が無かった。)」

「2日目。F店長が、新しい順路帳に、前のボロボロの順路帳の順路記号(以前の臨配STさんが書き込んだもの)だけを書き写して、Nに渡した。」

「以後、毎朝毎朝、順路帳を片手に、Sさんが配達する後を追尾する日々が続く。順路帳は間違いだらけ、F氏の書き込んだ順路記号も間違いだらけ。地図にも間違いがあり、本当にひどい状態だった。」

「しかたがないので、Nは昼間、店に行ってバイクを借り、地図と順路帳を持って、一人で1軒1軒配達先を探し回り、順路を書き換えた自分用の順路帳を作り、やっとその区域を覚え切った。」

「第1回団交で、栗野所長は、『できるようになるまで指導する』ということを言明した(甲26号の41ページ5行目)。だから2月22日、Nは西部店に出社した。しかし、その後、店からはほとんど一切の指導が行われなかった。」

「例外として、店側は、<2020年5月30日に行われたF氏による追尾、飛ばした家の指摘、終了後のコメント>を「指導である」と主張しているが、これは組合側が第2回団交で要求した「確認作業」の一環に過ぎない。」

「まとめ。2月22日、Nが西部店に勤め始めて以来、辰巳に、店としてNに対する責任ある新人指導体制は存在しなかった。順路を覚える指導さえ、日々の配達のある臨配に押し付けた。また、順路を覚えた後、5月30日にF店長がNを追尾(第2回団交で決まった「労働時間確認のための追尾」)した時以外、不着、遅配を防ぐための指導は行われなかった。」

  • 不着に関わるその他の問題

不着が多く、改善に時間がかかる原因は他にも多くある。代配体制の不備、逓送体制の不備、区域管理者との連絡体制の不備、数出しに被申立人が責任を取らない問題、入り止め管理上の不備、早入れの要望、バイクに関わる問題、組み作業ができない問題、荷崩れが多発する問題、不着対策上の不備などである(甲57号証、甲58号証)

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(2)審問における証言で明らかになったこと。

    1. 不着の多さに関して8人中3人がちゃんと配れない状況だったこと(F店長、第2回審問証言速記録第1冊25頁2行目~)。
    2. 同じ客に対して不着を繰り返して注意されるのはNとA氏に特定される(F店長、第2回審問証言速記録第1冊2頁下から13行目~)との証言が事実ではないこと(F店長、第2回審問証言速記録第1冊27頁14行目~)。
    3. 「Nが不着を複数回繰り返し」てクレームを受けたとされるものの中にはN以外の不着も含まれていること(F店長、第2回審問証言速記録第1冊28頁2行目~)
    4. 不着とクレームが多かったA氏の不着に関しては、F店長がA氏本人に再配達と謝罪に行かせていたこと、よってA2氏の再配達と謝罪の件数にはA氏の分は含まれていなかったこと。(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊5頁10行目~)
    5. H氏も不着とクレームが多かったが早くに辞めてしまったこと(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊5頁下から2行目~)。
    6. A2氏が体調不良となって医師の診察を受け、退職したいと会社に相談した原因は、客のカスタマーハラスメントが原因であったこと(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊19頁下から9行目~)
    7. 体調不良になったクレームのひとつ、Tさんの不着に関しては、前任者の不着が原因の一つであったこと(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊19頁17行目~)
    8. 当時の6区の順路帳が正しくなかったこと(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊7頁下から4行目~)

(3)よってNの不着が多いことには、様々な理由があり、指導改善の余地があり、解雇の理由たりえない。

4 遅配について

(1)申立人第2準備書面 第5(3)遅配について(21~23頁) を参照されたい。

====第2準備書面 第5(3)====

(3)遅配について

 解雇理由としての遅配に関しては第4回団体交渉で以下のやり取りが行われた。

甲29号証15頁12行目~

清水:うん。あのー、この解雇理由でだから不着及び遅配?があった?不着についてはこの間も聞いて今月11件あったと。いう話は聞いてます。あと遅配?遅配があった?

栗野:遅いって苦情がお客さんのほうからありました

清水:それは何回ぐらいあったんですかね

栗野:何回ぐらい?

清水:うん

栗野:あの6時までかかるとさすがにちょっと遅いって言ってきます。で、継続でもらえなかったりとか。やつがあるんで、連絡あったやつが遅配ってわけじゃないです。でそれは僕許しては一応してましたはじめ。早くなるんであればと思って。

清水:で具体的にだからどれぐらいあったかっていうことはわからないの。遅配のクレームがいくつあったとかってのは

栗野:ああだそうとおもえばいくらでもだせますけどね

清水:クレームが?

栗野:クレームです

清水:クレームの数?

栗野:はい。契約もらえなかったお客さんに聞いて配達どうでしたかって聞いて出てきます

清水:うん遅配があったって?それなんか報告書がある?

栗野:え?

清水:報告書があるの?

栗野:え、ああ、出せます僕

馬場:そういう問題が起こった時は本人に対してどういう対処をしていますか

栗野:いや早くするために指導を行ってきましたよ

清水:その度に?

栗野:その度にっていうか、うちの社員がクレーム出たときは頑張ってついてったつもりです

N:ん?

栗野:うちの社員が指導

N:いつでしょう

栗野:Fがしましたよね

N:ああ一回、あれですよねついてまわったやつですよね

清水:一回ついて回っただけでしょ?それのこといってんだよね。それのこといってんの?

N:それのこといってるんですか

栗野:それとか歩く練習とかいろいろやってますよね

N:いや。

清水:一日だけでしょ?

N:一日だけで。その時は特に何も言われなかったですけど

 遅配については、はっきりと明文化された規定は存在しない。実際被申立人は、それまでは遅配について問題を指摘したことがないにもかかわらず、第4回団体交渉で解雇が通告されるタイミングで遅配の問題を言い出した。それも「連絡あったやつが遅配ってわけじゃないです。でそれは僕許しては一応してましたはじめ。早くなるんであればと思って。」「契約もらえなかったお客さんに聞いて配達どうでしたかって聞いて出てきます」というものであった。

 配達部数が多いと、配達順番が遅い客に対して、配達時間が遅くなるのは当然の話である。

 しかも辰巳(小俣店と西部店)のある足利市の西部は、大きなマンションもなければ、塀ポストの連なる大きな住宅地もない。北側には集落が点在する比較的高い山地が何ヵ所かあるが、それ以外は、ほとんどが「低い山地に建てられた小さな集落」と「平地に建てられた複数の小さな住宅地」、小さな高層団地と2~3階建てアパートと小さなマンションと小さな商店が混在した地域である。「100軒配って最低1時間はかかる」というのはこの地域の新聞配達員たちの常識であった(甲58号証13頁16行目~、甲56号証)。遅配は被申立人が、一人当たりの配達部数を300~400という過大な数字にしたことが必然的にもたらしたことである。決してNの能力がとりわけて劣っていたという問題ではない。

 被申立人は、団体交渉においてもNの配達終業時間がとりわけ遅いかのように主張してきたが、それは事実ではない。甲51号証は2020年7月1日から同年8月19日までの被申立人YC足利西部店の配達終了時間等を記載した報告書の写真記録(Nが撮影)である。これを区(担当者)ごとに表にして平均配達終了時間を計算したのが甲54号証である。確かにNの6区が一番遅くて6時05分(1分未満切り捨て、以下同じ)であるが、1区5時48分、2区5時30分、3区6時3分、4区5時44分、5区5時55分、7区5時51分、8区4時39分、全体平均5時39分である。被申立人・栗野励代表取締役は配達の平均的な時間について「3時間かかりません」(第4回団体交渉、甲29号証23頁下から13行目)、「時間内に普通に終わってますから」(第5回団体交渉、甲30号証30頁12行目)と虚偽の言明をして、Nの「遅配」を殊更に問題にして解雇の理由にした。よって当該解雇が不当な解雇であることは明らかである。

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(2)「意図的な遅配で、改善の見込みがない」(準備書面(4)11頁6行目)との主張について

 被申立人は、2020年5月30日のF氏の追走を受けて、準備書面(4)で「意図的な遅配で、改善の見込みがない」と主張し、あるいは審問で「何か早く終わらせると、不利なことでもあるのかなと正直感じました」(F店長、第2回審問証言速記録第1冊6頁20行目~)などと証言した。

 しかしながら、「いつも全力で」配っていた(N、第1回審問証言速記録第1冊29頁10行目~)などのNの証言通り、そのような事実はない。

第5 能力不足について

(1)指導できないというウソ

第2回審問においてNの解雇理由について、栗野代表取締役は「もう、万策尽きたと」「もう、教えることもできない。早く配達させることもできない。そして社員の負担を減らすこともできない。これはもう、そして反省もしない。辞めていただくしかないと」判断したと証言する(第2回審問証言速記録第3冊14頁下から16行目~)。能力不足はどうにもならないというのである。しかしながら、F店長は、月給制の条件をのむならば「もうそのままじゃよろしくお願いします、こっちも指導をしっかりしていきますって流れ」(第2回審問証言速記録第1冊41頁下から8行目~)などと証言している。つまり指導しても改善しないというのは、解雇の理由としてでっち上げられたものにすぎない。

(2)ラッピングマシンの導入はNの能力不足対策ではなかった

 被申立人は、Nの遅配対策・能力不足対策としてラッピングマシンを導入(増設)したと主張してきたが、審問を通じて、事実ではないことが明らかになった。

  1. 店長の証言 第2回審問証言速記録第1冊32頁1~10行目
  2. Nの証言 第1回審問証言速記録第1冊25頁下から9行目~26頁4行目)

第6 被申立人の「多大なる損害」、あるいは他の従業員の負担について

(1)申立人第3準備書面 第4「Nの不着とクレームの実態、従業員の疲弊について」(2~6頁)を参照されたい。

====第3準備書面 第4====

第4 Nの不着とクレームの実態、従業員の疲弊について

 被申立人は、N組合員の解雇理由は、「正当な理由無く、配達業務において不着および遅配、そして欠配をし、会社に多大なる損害を与えたため」とし、「N組合員の「不着」や「遅配」の問題について色々な指導を試みたが改善がされなかった」(被申立人準備書面(2)13頁)としている。そして「多くの従業員に負担がかかっている」として当該解雇が普通解雇として正当であると主張する。

 「遅配」について、具体的な証拠が提出されておらず、「欠配」については勘違いからくるミスであって、「不着」問題こそが、当該解雇の正当性のカギをなしている。

 この件に関して、本質的な問題は、業界全体の問題であると指摘をしているのが、「メディア黒書」の記事(甲64号証、http://www.kokusyo.jp/oshigami/13544/)である。

2018年11月12日 (月曜日)

 人件費のカットで新聞配達員に大きな負担、投函ミスが急増し、購読中止を招くケースが続出

 新聞販売店からの情報によると、新聞の実配部数が大幅に減っている背景に、紙媒体からインターネットへの移行が進んでいる事情だけではなく、販売店の経営そのものが困難に追い込まれている事情があるようだ。

 「人件費をカットせざるを得ない状況になり、その結果、ひとりの従業員の負担が大きくなったり、士気が低下して、配達が大幅に遅れたり、投函ミスが増えているのです」(都内店主)

 投函ミスというのは、新聞を届けるポストを間違えたり、「不着」といって、投函そのものを忘れる事故を意味する。店によっては、1日に4件から7件ぐらいの投函ミスが発生するという。

 「以前は不着を発生させでも、それを理由に購読を止められることはあまりありませんでしたが、最近は、契約期間中でも即刻に止められるケースが増えています」(前出の店主)

 平均すると1店で、1日に3件か4件は、不着による購読中止が発生していると話す関係者もいる。

 販売店の経営が苦しくなり、人件費を抑制せざるを得ず、その結果、1配達員の負担が大きくなり、投函ミスが増えているのだ。それがますます部数減に拍車をかけている。新聞発行本社は、販売店に副業を奨励しているが、副業ができる状況ではない。

 新聞業界は悪循環に陥っている。

 このように、「人件費のカットで新聞配達員に大きな負担、投函ミスが急増し、購読中止を招くケースが続出」という問題が日本中に広がっているのであり、被申立人におけるNの問題があるとするならば、この問題の一環であり、本質的にNの個人的な能力の問題ではないのである。

 それに踏まえて、具体的にNに対する指摘を見ていく。

 被申立人準備書面(2)3頁の第2として「N組合員が他の従業員を疲弊させていたことについて」述べられている。いわく、「N組合員は、「不着」の件数が多く、何度指導をしても、同じ顧客に対して「不着」を繰り返していた。また、色々な方法で「遅配」の解消を試みても、一向に「遅配」が改善されなかった。そのため、N組合員が配達した6区の顧客から、被申立人に対して寄せられるクレームの件数や、同じミスが繰り返されることで激怒してクレームを入れる顧客の数が激増していた(乙5の1、乙5の6、乙7)。」

 そしてそのことによって従業員が疲弊して精神的にも肉体的にも異常を来したというのである。

 ここではとりわけ、同じ顧客に不着が繰り返されることによる被申立人の損害が強調されている。

 Nの不着とそれによるクレーム、従業員の疲弊は事実なのか、証拠を元に検証する。

 乙5号証の2020年3月から8月までの「電話連絡帳」を元に、月日と顧客名、「受信者」(電話の対応者)をエクセルの一覧表にしたものが甲66号証である。

 ここで注意すべきは、Nが2020年2月13日の第1回団体交渉で職場復帰で合意、小俣店ではなく足利西部店にて就労すると確認、同年2月22日から就労し同年3月5日までは臨配のS氏の配達について回り教えてもらったが、同年3月6日からまだ順路を覚えていない中で、順路を覚えたかどうかの見極めや確認もなく突然S氏が東京に帰ってしまい、一人立ちをさせられた(甲68号証6頁(8))。

 よって乙5号証の1のうち、2020年3月5日まではNは見習い期間である。不着は指導役のS氏の責任であった。また乙5号証には、6区のクレームが抽出されて提出されているようであるが、中にはNが休日で休んでいる日のクレームも含まれている。7/25である。これは乙4号証のNのタイムカードを参照すればわかる。甲66号証ではこれらの明らかに配達がNではないものをオレンジ色で色分けをした。

 またこれら「電話連絡帳」やタイムカードから明らかにNの責任に関わる不着の「繰り返し」(複数回)と思われるものを黄色で色分けした。

 そうすると、不着が複数回になる顧客は7件である。

まず指摘をしなければならないのは、3/5、3/6、6/3の「T」さんである。3/5、3/6はスポーツ新聞の報知新聞の不着である。3/6の「電話連絡帳」には「昨日も不着で激怒」と書かれている(ちなみに受信者は「NM」)。被申立人が準備書面(2)で「同じミスが繰り返されることで激怒してクレームを入れる顧客」との表現があるが、証拠に「激怒」の表現が出てくるのはこの件だけである。

 まず3/5はNは見習い中であり、不着の責任はS氏にある。「指導」役のS氏が突然東京に帰ってしまう中でNは翌3/6に同じ不着を繰り返してしまった。まだ「うろ覚え」で「不安な気持ち」の中にあるNに、一人立ちできるかどうかの見極めも点検も本人確認もせずに一人立ちさせた被申立人の責任である。(甲68号証6頁(8))

 また日付が記入されていないが、乙5号証の1、7枚目、3月初旬(3/9?)の「O」さん。「電話連絡帳」には「厳重注意」「何回もだと言われました」と記載されている。これに関しても、「T」さんと同様であり、前任の臨配のS氏の責任に関わるクレームである。またまだ一人立ちするのは無理な状況でNに一人立ちをさせた被申立人の責任でもある。

 乙5号証の2(14枚目)の4月冒頭の「O」さんの「電話連絡帳」にも「何回もあり注意」とあるが、これも同じことを言っているものである。

 数にいれていないもので、乙5号証の2(20枚目)に6区「H」さんとあるが、Nの不着メーターには記載がなく、「3/23、3/31 続けて不着 怒っている」と記載されているが、「Kさん伝」とあるように代配のK氏の不着と思われる。少なくとも3/31はNは休日であり、K氏の不着メーターに記載されている。

 残りは「OT」さん、「SD」さん、「T2」さん、「NG」さん、「H」さん(5/22の「電話連絡帳」に「火ようも不着」と記載)である。

 「SD」さんに関して、8/13(47枚目)に「ここ数カ月で4~5回ある。電話するのも気が引けるほど多い」と記載されている。しかし、Nによる不着かどうか、いつ頃の不着なのかは証明がないので、すぐにNの責任によるものとは断じがたい。やはりNが一人立ちする以前の不着の繰り返しが影響している可能性が高いのである。ちなみにNが休日の2020年3月17日(火)にはF店長が代配をして40件の不着が出て対応で店中が大変だったと退職したOO氏から、Nは聞いている。この時の「電話連絡帳」が乙5号証の中には見られないが、この時の不着もクレームには含まれている可能性が高い。

 その他の「電話連絡帳」の記載を見ると、クレーム内容が具体的に記入されているものはなく、ことさらに問題となったクレームは存在しないことが伺える。

 逆に、証拠として提出されたものだけを見ても、他の従業員に関わるクレームが散見される。通し頁数(以下同じ)2頁(3/3)6区「OS」「集金クレーム」、同10区「KD」「昨日も届いていない」、35頁(日付なし)10区「KM」「ホーチが今日も届いてない」、同12区「OG」「新聞がやぶけていた」、36頁(6/8)13区「KS」「3、4回あり」、39頁(6/16)2区「OZ」「何回もある」…。被申立人は、同じ顧客に対して不着を繰り返すことは「N組合員以外の従業員ではほとんどないこと」(準備書面(2)2頁8行目)と言明しているが、Nに対する意図的な誹謗中傷であり、被申立人は嘘を承知で証拠をでっち上げているとしか言いようがない。

 また、乙5号証からわかることは、17頁(4/18)2区「HY」「新聞 門ポストから半分出ていてぬれていた」、同14区「OD」「朝刊雨でぬれて読めなかったとのこと」「ビニール袋に入れて下さい」、18頁(4/20)2区「NK」「朝刊雨でぬれていました。門ポストに完全に入れて下さい」との記載がある。

 被申立人は、申立人とNの「遅配」改善のためにラッピングマシンを導入したとするが、顧客からのぬれて読めないとのクレームが殺到する中で、ラッピングマシンを導入したという経緯は明らかである。

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(2)過重で過負担な職場状況

 他の従業員の負担を考える場合に、そもそも読売新聞足利西部店の各人の業務が過重で過負担な状況にあったことを押さえる必要がある。審問で明らかになったのは以下のような状況である。

  1. 辞める人が多いことに関して「ダブルワークの人とかが多いので、やっぱり時間早く終わんないと駄目だから」と退職理由に関するA2氏の証言があった(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊6頁9行目~)
  2. A2氏も自分の業務について「かなりきつい仕事」をしていると認識していること(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊6頁9行目~)
  3. 手空きの人を毎日置けなかった職場状況。(F店長、第2回審問証言速記録第1冊16頁14行目~)
  4. 読売新聞足利西部店では栗野氏に経営者が代わって従業員が20人から10人に減ったこと(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊9頁下から12行目~)
  5. 読売新聞足利小俣店では栗野氏に経営者が代わって16人のうち12人が辞めたこと(N、第1回審問証言速記録第1冊3頁5行目~)
  6. クレームの多いA氏についてはクレーム対応は「自分で行け」とF店長が指示していたこと(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊5頁11行目~)

(3)A2氏の体調不良はNの不着が原因とは言えない

 A2氏が体調を崩して医師の診察を受け、F店長に退職したいと相談したのは、30分にもわたって、自分で配ったのではないと言っているにもかかわらず、てめえ、この野郎呼ばわりされるというカスタマーハラスメントが原因である(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊19頁下から9行目~)。

 またNが一人立ちした2020年3月6日のT氏によるクレームに関しては、その前任者の不着にも原因があり、Nの責任とは言い切れない。(A2氏、第2回審問証言速記録第2冊19頁下から13行目~)

(4)よって、Nの無断欠勤・不着・遅配が他の従業員に負担を与えたとしても、Nの責任に帰することはできず、解雇の理由にはならない。また被申立人に損害が生じたとしてもNの責任に帰することはできない。

B 被申立人の反組合的感情等の有無

(1)被申立人の不当労働行為意思

申立人第4準備書面 第4「被申立人の不当労働行為意思についての補強」(23~28頁)を参照されたい。

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第4準備書面

第4 被申立人の不当労働行為意思についての補強

  • 労働基準法違反を繰り返してきた申立人は西巻萌の申立人組合加入を嫌悪していた
  • 労働基準法違反が常態化していた被申立人

 被申立人と栗野励代表取締役は、悪質な労働基準法違反を繰り返してきた。2020年1月13日にNが申立人に相談加入した原因は、就業規則や雇用契約がないことや賃金計算のおかしさなどであるが、そもそも雇用主の名称・住所もわからなかった。この点は、YC足利小俣店の従業員の誰もが知らなかった。申立人は調査の上、株式会社ラックスが雇用主と判断して要求書を提出したが、栗野励代表取締役は対応を拒否したまま区域編成と労働条件の変更を強行しようとした。(甲73号証1頁~2頁10行目)

 そもそも被申立人は、YC足利小俣店の新聞販売権を柏原新聞店店主から引き継いだ際には、まだ会社設立をしておらず、事業主としても重大な矛盾と問題をはらんだままスタートをしている。

 被申立人が、Nの申立人労働組合への加入を嫌悪していたことは明らかなのである。

  • 就業規則作成の意味を理解せず、西巻萌の個別的労働条件と考えていた被申立人

 被申立人は、申立人に協力を要請して、メール等で協議しながらいっしょに就業規則を作成したのであり、申立人の意見を嫌悪していない、可能な限り対応をしたと主張する(準備書面(3)16頁「18」)。

 しかしながら、被申立人は、「パートタイマー就業規則」がパートタイマー全体の労働条件を規定するものであることを理解せず、Nだけに適用すると考えていた。

 「僕、他の皆さんと、ね、労働契約結び直しますが、他の人いじるところじゃないので、Nさんに対して話している。よろしいでしょうか?」(甲27号証18頁16行目~)

「Nさんですよね?」(甲27号証19頁6行目~)

 そして実際、「パートタイマー就業規則」を労働基準監督署に提出するに際して、意見を聴取する労働者代表をNに指名して、労働者代表としての他の従業員の承認を得る手続きを行わなかった。

 また被申立人が準備書面(3)で示したT3氏の就業時間は「午前1時15分~午前5時30分(うち60分は休憩時間)」(6頁)となっている。被申立人は、Nを解雇したことですでに甲25号証の「パートタイマー就業規則」は効力がなくなったと考えていると判断せざるをえない。

 つまり被申立人にとって、「パートタイマー就業規則」はNとの個別労働条件という意味しか持たず、これを申立人の協力の上で労基署に届け出て手続きを踏めば、他の従業員の労働条件は変更せずに済むというように考えていたと言わざるをえない。

 よって、就業規則の作成の協力を申立人に要請したからと言って、申立人を嫌悪していなかったとは言えない。むしろ他の従業員と分けて特別に扱ったのである。

  • 就業規則の作成に申立人の協力を仰いだことと、申立人とNの要求と活動に嫌悪の念を抱くことは何ら矛盾をしない

 第3準備書面17頁5行目~21頁16行目に既述した通りである。

 第5回団体交渉では、栗野代表取締役は、就業規則の意見書で、Nが労働時間管理の方法として「タイムカード打刻時刻」を「一資料とする」として軽視することに反対の意見を記載したこと(甲25号証16頁)に対して、以下のように、あからさまな嫌悪感を表明している。(甲30号証70頁下から9行目~)。

「要求でなければ、なぜ書いたんですか?」

「意見と要望(要求)、どう違うんですか?」(甲30号証71頁下から10行目~)

  • 労働時間に関する交渉に被申立人は嫌悪感を抱いていた

 被申立人は、時給制で就業時間を決めるということについて、第1回団体交渉から一貫して嫌悪感を表明している。以下の通りである。

第1回団体交渉

「ええ、あ、じゃ、そこの時給の件、僕、こういうことあんまり言いたくないんですけど、Nさんの配達区域、何時間、あの、なんか4時間で計算なさっていますけど、」「どう考えても1時間半。」(甲26号証9頁下から3行目~)

「ま、広さと、あ、まあ、いや時間も勘案しますけど、基本的には、じゃあ、広さと部数ですね、その2択であれば。」(甲26号証16頁9行目)

「ただし、休憩時間は、どれだけなされているか、もうちょっとわかってない状態のものなんで、」「やっぱり、みなしの部分ってあるんですよね。」「休憩、配達時間に休憩してるかもしれない。逆に、僕はNさんがそんなに時間かかってるとは、正直思ってないんですよ。」(甲26号証22頁下から14行目~)

第2回団体交渉

(甲27号証13頁17行目~)

栗野:で、凄く長めの時間を、例えば、本当に、あの、分からないですけど、スーパーマンが配ったら、2時間で終わるかも知れない。でも、普通の人は3時間超えることが、あんまりない。で、僕、4時間とってるつもりではあるんです。で、まあ、2時間で終わるなんて、全く思ってないですけど。長めにとってるつもりではあると。で、それが、区域。まあ、区域差ってありますけど。まあ、うちの店で言ったら、平均的な、区域だと思います。

(甲27号証20頁13行目~)

清水:ね。で、それで、まあ、いいよ、就業規則でとりあえず「休憩時間30分」って入れるなら入れるで、良いけども。だけど、これは、ちゃんと。これね、だから休憩時間じゃなくて、だから、5時半にすればいいじゃん、終業時刻を。なんで休憩時間30分、無駄な、

栗野:いやいや休憩しますよ。お前、するだろ?

SN:しないよ。

F:うーん、そうですね。

NI:30分も休憩しませんって。新聞屋さん、配達の人は。

栗野:まあ、まあ、それは調整としてって思ってるだけなんですけど。」

(甲27号証21頁3行目~)

清水:「休憩してください」っていうのと、「その分賃金払いませんよ」っていうのは、違うから。

栗野:休憩時間も払わなくちゃいけないんですか?

清水:休憩時間って。うん、だから、休憩時間は、ちゃんと休憩時間を指定しなくちゃいけない。何時から何時までっていう風に指定しなくちゃいけない。

栗野:指定しましょうか。じゃあ、10分、1時間20分とか。指定すればいいですか?

(甲27号証28頁下から5行目~)

清水:何れにしても、さっきの、「1時15分には来い」って言われて、その分は、支払われていないわけだよね。

栗野:それは、お支払いいたします。うちからの、命令でしたから。はい。

清水:だからさ、「平均時間で」ってゆう前にさ、それ、払っていてね、払ってて、「これから平均にしてくださいね」って言うんだったら分かるけども。最初から決めてさ、サービス残業させておいて、「じゃあ、平均ですからね」って言うのは、順番がおかしいんだよ。

栗野:はい。まあ、今のは、お支払します。申し訳ない。

清水:ね、うん。先ずそこから、そこは確認してくださいよ。

栗野:はい。

栗野:それ、多少、早歩きも含めて、して頂かないと、

N :早歩きもしてますから。

栗野:してるんですか?

N :早く歩いてると思いますけどね。

清水:それはね、実際、「もっと早く終わるはずだ」って言われても、まあ、実際にね、それだけ掛かっている事実が有るんですよ。ね。それについては、ね、払ってて、ね、「掛かり過ぎだよ」ってゆうのは分かるけども。払ってないのに、「掛かりすぎだよ」っていうのは、おかしいでしょってってゆう事なんですが。(56:03)

栗野:まあ、この話しと、ちょっと、論点変えませんか。あの、これは、ごめんなさい。僕も30分だと思い込んでましたけど。それがね、15分だったってゆう事実。これも確認しましたので、そこはごめんなさい。で、逆に、1時15分と決めさせていただいた、まあ、決め直すのでね。その場合は、5時45分で・・・・

(甲27号証35頁6行目~)

N :休憩とは認識してなかったんで、・・・・・ちょっと、ここらへんで、順路帳見たり、直したりとか、そうゆうのをやってましたよ。

栗野:まあ、まあ、それで働いていたと、仰るんであれば、それは分かるんですけど。僕は、さっき言った、僕の、休憩と思っていた時間は「実は働いていたよ」というのであれば、これは、お支払しなきゃいけないってゆうのは勉強しました。

N :拘束してるんですよ。

栗野:「拘束の前に、休憩はしてください」と、言っているはずなんですよね。

 さらに2020年5月30日の追走の結果は、休憩を取らずに配達して終業時間(タイムカードの打刻時間)が午前5時32分であった。(甲69号証)追走したF店長も問題がなかったことを認めている。この日は被申立人が主張するように通常よりも早く終了している。しかしそれでも、実労働時間は4時間17分である。これは被申立人が主張していた労働時間4時間では足りないことが証明されたということに他ならない。また休憩時間として30分を差し引くことに合理的理由がないことが証明されたのである。

 このことは、第3回団体交渉以降において、賃金と労働時間の確定に大きな影響を及ぼすことを意味していた。しかもそれは他の従業員の労働条件にも大きく影響を及ぼすことが明らかであった。

よって被申立人は、この問題を指摘される前に、解雇するか、時給制から月給制への変更に合意させることが必要であったのである。

ちなみに被申立人は、第2回団体交渉において始業時刻の指示は午前1時30分ではなく、1時15分であると申立人から指摘されて直したが、終業時刻をその分15分早めると言明している。4時間しか払わないという姿勢は明らかであった。

(2)無断欠勤に対する被申立人の対応は不当労働行為意思の表れ

 被申立人は、Nの解雇の理由として、無断欠勤をしたことが「決定打」(第4回団体交渉での栗野励代表取締役、甲29号証19頁2行目)であると言明した。しかしながら、被申立人は、そうであるならばこの無断欠勤に関して、懲戒規定に則って迅速に事実調査を行い、けん責の懲戒の手続きを行うべきであった。(甲25号証12頁「第39条(1)、第40条1(1)」)

被申立人は、そのような手続きを行わず、「不着」や「遅配」とセットにして、能力不足として、普通解雇をした。

しかもそれを、団体交渉の場で持ち出すという通常ありえないやり方で行った。またその団体交渉が、いつもとは違うだまし討ちのやり方で設定されていた。

 Nの解雇通告は2020年8月30日、解雇日が一か月後の2020年9月30日である。それはたまたま第4回団交の日時が清水と春日氏のやり取りで2020年8月30日に設定されたからである。

 被申立人は、準備書面(3)にて、西巻萌との労働条件が「雇用期間 2019年10月1日~2020年9月30日」(10頁「7①」)であったと主張している。そうであるならば、解雇日はちょうど雇用期間の満期終了日と同日になるのである。被申立人は、普通解雇であり、解雇回避努力で月給制の提示をしたと主張しているが、雇用期間満了の雇止め解雇だと言わないのはなぜなのか。

 それは、被申立人が、Nの無断欠勤を奇貨として、これに乗じて、解雇するか、時給制を白紙に戻す合意を取り付けようという意図から強引に解雇が行われたということに他ならない。

 

 以上から、被申立人の不当労働行為意思は明白である。

 

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(2)月給制の提案をのまなければ解雇

 F店長は、第3回団体交渉に臨むにあたって、「その欠配とか不着があった後になりますので、…こちらの条件を飲まなかったら解雇も視野に入れるっていう認識で、はい。」(第2回審問証言速記録第1冊40頁下から4行目~)などと証言し、月給制の条件をNがのまなかったら解雇も視野に入れるとの、栗野社長・春日大輔氏と打ち合わせを行ったことを証言した(第2回審問証言速記録第1冊40頁下から12行目~)。

 またF店長は、月給制の条件をのむならば「もうそのままじゃよろしくお願いします、こっちも指導をしっかりしていきますって流れ」(第2回審問証言速記録第1冊41頁下から8行目~)などと証言している。

 これは、①復職を前提に労働条件整備を両者で協議していくとの第1回団体交渉の合意、②始業時間、終業時間、休憩時間について協議して決めるとの第2回団体交渉の合意、という二つの合意の破棄を条件として、雇用を継続するというものであり、明白な不当労働行為意思の表明であった。

 なぜならば、被申立人が雇用継続の条件として提示した労働条件は、月給制(基本賃金11万円)で労働時間が3時間30分というものである。これは、申立人と協議しながら作成した就業規則に違反する労働条件であり、また2020年5月30日の追走の実働時間が4時間15分であったことも無視する労働条件であった。被申立人は「月給制」と表現し、春日氏は「時給制の撤廃」とも表現した(春日氏、第3回団体交渉、甲28号証41頁4行目)。つまり、申立人が被申立人と団体交渉などを通じて作り上げてきた就業時間に関する合意と協議をすべて反故にせよと迫るものであった。

(3)読売新聞本社からの指摘をでっち上げ

 しかもそれを申立人が拒否をすると、代理権もない春日氏が、読売新聞本社から訪店で指摘をされたとの嘘を口実にして、Nに自宅待機を命じて、解雇への道を開いたのである。

 また本件事件においては、この点について被申立人は、決定したのはF店長であり、反省がないとの判断に基づくものであるなどと、虚偽の主張を繰り返している(1 A 第2(4)で既述)。不当労働行為意思は明白である。

(4)被申立人は要求書に対する回答を用意していなかった

 被申立人・栗野代表取締役は、第3回団体交渉において、2020年7月26日付要求書(甲19号証)に対する回答を用意せず、F店長とも春日大輔氏とも打ち合わせもしていなかった(第2回審問証言速記録第3冊33頁下から11行目~)。F店長は、次回まで預からせていただく、自分にはわからないと答えている(甲28号証2頁下から16行目~)。第3回団体交渉は、Nの無断欠勤を突然持ち出し、第1回ならびに第2回団体交渉での合意破棄を組合に呑ませるか、解雇の手続きを踏むかのどちらかの選択肢しか用意していなかったのである。

2  第3回団体交渉(2020年8月21日開催)及び第4回団体交渉(同月30日開催)における被申立人の対応が、労働組合法第7条第2号の団体交渉拒否(誠実交渉義務の不履行)に該当するか

第1 第2回団体交渉までに、両当事者間における合意はあった

(1)第1回団体交渉において復職を前提に条件整備を両者で協議していく合意が成立した(申立人第2準備書面 第2(1~8頁)に詳述)。

(2)第2回団体交渉において、始業時間、終業時間、休憩時間についての協議が行われ、以下のことが合意された。

  1. 実際の配達に平均で何時間かかるかデータを取ること(甲27号証、36頁下から14行目~)
  2. 始業時間を1時30分から1時15分に変更すること(甲27号証、20頁11行目~)
  3. それまでの一日15分の未払い賃金について支払うこと(甲27号証、28頁下から5行目~)
  4. 就業規則に休憩時間30分と規定すること(甲27号証、27頁6行目~)
  5. 就業の平均時間として4時間が妥当なのかどうかを協議すること(甲27号証、29頁15行目~)
  6. バイクの速度がスピード違反しないでどのくらいかかるのかを確認すること(甲27号証、38頁下から2行目~)
  7. F店長が追走して休憩の状況と配達時間を確認すること(甲27号証、36頁下から8行目~)
  8. 追走時に撮影・録画すること(甲29号証、38頁17行目~)
  9. GPS測定を導入すること(甲27号証、25頁6行目~)
  10. 平均就業時間を元に時給1,000円(深夜割増で1,250円)で日給を決めること(甲29号証、48頁1行目~)

第2 第3回、第4回団体交渉における被申立人の対応は、当該合意を反故にするものであった

 第3回ならびに第4回団体交渉における被申立人の対応は、Nの無断欠勤を理由とした解雇に言及をし、第1(1)の合意、ならびに第1(2)①⑤⑥⑨⑩の合意を反故にするものであった。

 F店長は、第3回団体交渉に臨むにあたって、「その欠配とか不着があった後になりますので、…こちらの条件を飲まなかったら解雇も視野に入れるっていう認識で、はい。」(第2回審問証言速記録第1冊40頁下から4行目~)などと証言し、月給制の条件をNがのまなかったら解雇も視野に入れるとの、栗野社長・春日大輔氏と打ち合わせを行ったことを証言した(第2回審問証言速記録第1冊40頁下から12行目~)。

 またF店長は、月給制の条件をのむならば「もうそのままじゃよろしくお願いします、こっちも指導をしっかりしていきますって流れ」(第2回審問証言速記録第1冊41頁下から8行目~)などと証言している。

 第3回団体交渉で申立人は、Nの無断欠勤を突然持ち出し、解雇の可能性に言及して脅して、月給制という形で第1回ならびに第2回団体交渉での合意の破棄を組合に呑むことを迫った。申立人が、当然のごとくそれを拒否するや、自宅待機を命じて解雇の手続きに入ったのである。

第3 第3回団体交渉は、被申立人側からの出席者や交渉内容から団交拒否と評価し得る不誠実な団体交渉である

(1)代理権のない春日氏を中心に交渉に当らせたこと

 被申立人は、代理権のない春日氏を第3回団体交渉に出席させて、交渉に当らせ、Nに自宅待機を命じた。被申立人は、交渉の責任者・自宅待機の決定者はF店長であったと主張するが事実ではない。

 春日氏が解雇の可能性に言及しながら月給制を呑むように要求したこと、それを申立人が拒否するやNに自宅待機を命じたこと、読売新聞本社から訪店時に指摘を受けたとの嘘についてF店長が黙り続けたことなどから、それは明らかである。虚偽のストーリーでNを解雇に追い詰めるという春日氏の悪らつな不当労働行為を被申立人は全面的に承認して、団体交渉の流れを春日氏に委ねたのである。

 またこの点に関して申立人が第3回団体交渉の開催に同意したことで、被申立人の責任を回避したいようであるが、それは成立しない。被申立人が、事前に栗野代表取締役の欠席、およびNの無断欠勤について協議したいとの意向を事前に申立人に通知していれば、団体交渉は延期の手続きを行ったことは間違いがない。被申立人はそれらの通知を意図的に行わず、だまし討ちのようなやり方と虚偽のストーリーで春日氏の交渉における主導権を確保したのである。

 春日氏・栗野代表取締役の以下の発言がそれを裏付ける。

  1. 「栗野社長から委任を受けましたので私も株式会社辰巳の人間という立場で喋らせてください。」(春日氏、第3回団体交渉、甲28号証2頁下から10行目~)
  2. 「まあちょっと今回の話は、春日、Fにもちょっと任せているところもあるんで、現場でちょっと実際に不着欠配があったっていうことは、今後社員をこれからも用意しなくちゃいけないという状態になりますので、ええ。」(栗野代表取締役、第3回団体交渉での電話の会話、甲28号証42頁下から3行目~)
  3. 「なにゆえに今回こういう形で、私が社とつながりのある人間であるにもかかわらずこういう形で間に立つのか、仕切り役で入ってきたかの説明はこないだしたので、ここでは省きたいと思います。」(春日氏、第4回団体交渉、甲29号証2頁4行目~、栗野代表取締役が同席中の発言)
  4. 「今回何故ここでわたくしが入って来、この一週間弱Nさんに自宅待機という形でえースタンバイしていただいたか。その理由もこないだ説明しましたので、これも一応社長のほうに共有してありますので、そこは省きます。」(春日氏、第4回団体交渉、甲29号証2頁8行目~、栗野代表取締役が同席中の発言)

(2)交渉内容における不当労働行為性

 第3回団体交渉で被申立人・春日氏は、Nの無断欠勤を突然持ち出し、解雇に言及して脅して、月給制という形で第1回ならびに第2回団体交渉での合意の破棄を組合に呑むことを迫った。申立人が、当然のごとくそれを拒否するや、自宅待機を命じて解雇の手続きに入った。事前の提示もなく団体交渉で突然持ち出すというやり方、虚偽のストーリーで解雇への道を開いたやり方は、不当労働行為意思の表れであり、不誠実交渉である。

 春日氏の発言

  1. 「これをまず要望として、私の方から、あくまで意見として上げさせてください。で、委員長、いっしょに同席した春日というやつがこんなことを言ってたんだけど、それは本当かね?と、栗野社長に確認してもらって全然OKです。一応私が聞いた中味?の中で、今話した結論としては、まず時給体制を基本形態でほかのスタッフと同列にしていただく、それを飲んでいただく。2つ目、280部というのに対して15万という給料はとてもじゃないけど払い続けられるものではございません。…」(第3回団体交渉、甲28号証30頁1行目~)
  2. 「逆にそれが呑めないということであると、現在のこの不着率、あとそういう先ほどの順路帳とかをメモとか持ったりしながらやっているのにもかかわらずのこの不着率に、更に効率的な問題、あと更に開店前後に勧誘活動もしたいというご要望、」(第3回団体交渉、甲28号証31頁1行目~)…「そして私が今、両方から聞いた…を今計算しながら、自分なりの判断を出して、これでもちろんあとで社長の方に許可を取りますけども、私の方の今日のご意見としては、Nさんには今のこの賃金体系で勤務を続けることは不可、非常に困難だと判断いたします。」(第3回団体交渉、甲28号証31頁下から2行目~)
  3. 「いやだからその給料から勘案した時に、この不着率だったり、先ほどから話を聞いた結論としての、私の見解なんです。」(第3回団体交渉、甲28号証32頁11行目~)
  4. 「団体交渉をするために会社は経営してるわけではない。」(第3回団体交渉、甲28号証32頁18行目~)
  5. 「この給与に見合う仕事内容になっておりません。」(第3回団体交渉、甲28号証32頁32行目~)
  6. 「いやそれをだからそこで二度とやらないということで約束してそれでもうはいはいって言っていたら、たとえば従業員同士のランク付けどうやって分けるの?人によって甲乙どうやってつけるの?」(第3回団体交渉、甲28号証32頁下から5行目~)
  7. 「この給料を払うにあたって、私の意見として、栗野社長の意見の代弁という理解で結構です。私の方から言えるのは、この給料、この仕事内容、そしてこの配達部数を考えた時に、第3者的に見た時に、とても経営者として採算が合わない。」(第3回団体交渉、甲28号証33頁下から6行目~)
  8. 「まあ私の意見として先ほど言いましたように、表現段階において、私の方から今この後社長と電話で確認を取った上で、明日にでも正式に通知させる予定でいますけれども、現状この給与体系、現状この配達部数状況で、引き続きNさんを雇用するのは困難と判断します。最終判断は社長が決めることではございますが、そう判断します。なのでこの場で落としどころを作ることが私の最初のミッションでありますので、少なくとも、ある基本給に基づいた、他のスタッフとある程度一律化された給与体系での雇用契約書の締結と、あと先ほどおっしゃられた、たとえば個人情報、台帳を持って帰るとかそういうことをしちゃいけない、もちろん欠配とかも絶対しないようにする、逆に欠配した時にはなんらかのペナルテイーをしますというそういう念書等ももちろん入れてもらう。始末書というのは当たり前のことだ。」(第3回団体交渉、甲28号証33頁13行目~)
  9. 「私はさっきも言ったように、落としどころを作るためにここにいるんで、落としどころとして考えているのは、このままだとNさんを解雇せざるを得なくなってしまうと思われますので、条件として今申し上げた他のスタッフと同等レベルの配達クオリテイーおよび賃金体系で応じていただきたいと思います。それらを呑めないということになってしまったら、そういう可能性がありますので、意見としてまずは承ってください。」(第3回団体交渉、甲28号証34頁下から21行目~)
  10. 「これを社長に申し上げて、社長の方から、今はっきり言っておきます。来週の、今日、こういう方法になるという方向で考えていましたので、これは栗野社長に確認していただいて結構なのですけど、今日からNさんは月末まで、有給、会社の特別支給でお休みしていただいて結構です。」(第3回団体交渉、甲28号証35頁下から9行目~)
  1. 「栗野社長がね。今まではNさんのことをそれなりに評価していて、まあいいか、まあいいか、まあいいかと見てきたんですけど、一度欠配ということがあり、それを担当指摘を受けてしまうと、もう大目には見れない、と。とてもじゃないけどもう無理だという風に態度を変えられた、それが先週の14日らしいですよ。」(第3回団体交渉、甲28号証39頁11行目~)
  2. 「今この経緯を説明していただいて、私の提案を伝え、栗野社長の方から、じゃあ月末まではいわゆる自宅待機という形で配達はしない、という形で社に報告して、今回の欠配の話はまあそういう形で会社として、店として処理しましたと社に報告するわけなんですよ。そうするとそれで終わりなんです。問題はこのあとです。社としては、社とはここね。辰巳としては、私が申し上げた先ほどの意向を栗野さんもOKというふうにおっしゃって下さったので、やはり今までの団交の流れは理解します。理解しますが、現状の意見としては、時給制の撤廃、あと部数の調整の上での継続雇用を栗野社長は望まれています。今回の欠配に対して、たとえば給料カットとか、たとえばそういった何らかのペナルテイーを栗野社長は要求はしておりません。ただケジメはつけさせていただく。なので31日までは繰り返しますが自宅待機。かといってそういうペナルテイーを課すようなこともしませんので、給料は勤務した時と同じような形を保証はいたします。その間に今私が提案した中味でできれば応じていただきたいというのが栗野社長のご要望です。それを踏まえて何でしたら電話で確認されたら。どうしますか?」(第3回団体交渉、甲28号証40頁下から5行目~)
  3. 「ただ残念ながら覆水盆に返らずではございませんが、一度その、社の方から指摘を受け、事実として欠配という事実があった以上、そうすると今までの不着率とか、あとその他の従業員との給与体系のバランス、またそういう労働組合員としての勧誘活動等も加味した時に、やはり社としては、何らかの手を打つべしという指摘を受けてしまうのは当然のことだと思います。」(第3回団体交渉、甲28号証44頁16行目~)…「読売新聞本社です。」(第3回団体交渉、甲28号証44頁24行目~)

(3)要求書に対する回答を準備しなかった

 被申立人・栗野代表取締役は、第3回団体交渉において、事前の要求書(甲19号証)に対する回答を用意せず、F店長とも春日大輔氏とも打ち合わせもしていなかった(第2回審問証言速記録第3冊33頁下から11行目~)。F店長は、次回まで預からせていただく、自分にはわからないと答えている(甲28号証2頁下から16行目~)。これも不誠実交渉を構成する。

第4 第3回団体交渉における交渉と被申立人の対応の問題性は、第4回団体交渉においても継続している

(1)第3回団体交渉の延長としての第4回団体交渉

 第4回団体交渉は、第3回団体交渉における春日氏の読売新聞本社の指摘なる虚偽のストーリー、Nへの自宅待機命令を前提として設定された。したがって、第4回団体交渉自体が虚偽のストーリーの上に開かれた不当労働行為意思の表れである。

 第3回団体交渉には栗野代表取締役は出席しておらず、また審問になって栗野代表取締役は「本社の訪店っての、完全に盛ってますね」(栗野代表取締役、第2回審問証言速記録第3冊38頁3行目~)などと言って春日氏を団体交渉に出席させたことも含めて、謝罪の言葉を述べた。しかし、第4回団体交渉において、栗野代表取締役こそが春日氏を使い、読売新聞本社の指摘なる虚偽のストーリーにのっかって、申立人に合意の破棄である月給制の承認・時給制の撤廃を迫り、それが拒否されるや、Nに対する解雇通知を行った張本人であることが明らかである。その意味で、第3回団体交渉よりも悪質な不当労働行為意思が貫かれている。不誠実交渉であることは明らかである。

第4回団体交渉における春日氏の発言

  1. 「(一応読売の本社の意向を受けてっていうことでいいわけですね、との清水の問いに対して)そうです社長含め、及び担当の方とか販売局の方とまあ水面下において、まあ調整もできる立場でございます」(第4回団体交渉、甲29号証3頁23行目~、栗野代表取締役が同席中の発言)
  2. 「あくまで今回Nさんのこないだの欠配のタイミングを一つの契機としまして、社長も当然社のほうにそれなりの指摘を受けまして、お店としてもそれなりの損害を受けたことはこの間お話しした通りです。で、それをふまえて社長のご判断として、今後どうするかという話を…いろいろ相談してこないだここに座ったわけですけど。それでNさんの言い分を聞いたうえで、私は判断すると最初に申し上げたと思うんですけどあの時。なのであれを踏まえた結論として、当面の間株式会社辰巳として、栗野社長としましては、パートタイマー制による雇用は今後は考えておりません。」(第4回団体交渉、甲29号証5頁9行目~、栗野代表取締役が同席中の発言)

(2)春日氏の出席に関して

 春日氏に代理権がないのを承知で、第4回団体交渉においても申立人がなぜ春日氏の出席に同意したか。

 春日氏は、Nの無断欠勤問題について、一貫して読売新聞本社の訪店での指摘があったことを根拠として自宅待機を命じている。つまり、決定は、読売新聞本社の指導・基準に則ったものであるかのように偽って、自らは読売新聞本社の意向を受けているかのごとくふるまった。栗野代表取締役はそれを追認した。

 申立人としては、読売新聞本社の意向を受けたようにふるまう春日氏との交渉をせざるをえないと判断したものである。よって第4回団体交渉は不誠実交渉である。

以上

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