群馬県労働委員会が棄却命令(中央タクシー事件)
2021年7月19日、群馬県労働委員会から中央タクシー事件の命令書の写しが届いた。不当な棄却命令だ。
2020年1月、群馬合同労組T組合員が定年を迎えるにあたり、中央タクシーはこれまでの慣例を破って労働条件を変更した。空港への送迎は行わず、客の自宅とドック点の送迎に限定して残業もない、賃金は時給1000円にするというもの。賃金は4割減った。
群馬県労働委員会は不利益取扱いであること、会社が組合に対して嫌悪感を持っていたこと、手続き上も問題があったことを認めながら、不当労働行為とまでは言えないと結論した。
その理由は、「稼働手当」(固定残業手当)をめぐる対立によって「膠着した雇用関係を打開し」、他の従業員との均衡を図るためにこのような再雇用契約を提示したことには一定の合理性がある、経済的合理性から理解できる、というのだ。
「稼働手当」をめぐっては2020年4月に前橋地裁で判決があり、納得しがたいものであったが、コロナ解雇も重なって控訴して争う力がT組合員にも組合にもなかった。判決は、「稼働手当」は固定残業代であると入社説明会で説明しているなどと証拠もなしに決めつけるなど大きな問題があった。実際には求人票には「残業なし」「年俸制」と記載されていたことなど、労働委員会では、雇用契約時に説明などされていないことを証拠も出して明らかにしてきた。
群馬県労働委員会にはここも含めて踏み込んで判断をするべきだった。裁判で確定しているとはいえ、真実を見てほしかった。そこを避けたが故に、納得しがたい反動的な命令になっている。
さらに団交拒否についても不当労働行為と認めなかった。
新型コロナで空港が停止、中央タクシーは休業、全員解雇と矢継ぎ早に従業員を切り捨てた。緊急事態宣言がはじめて発令される直前で、組合は団交を要求し、解雇説明会への抗議行動に立ちあがった。そんな状況での団交拒否。
群馬県労働委員会は「会社は団体交渉を拒否したと言わざるを得ない」とした上で、不当労働行為とは認めなかった。
いわく
「当時の日本社会には…誰も経験したことのないような混乱、不安等が生じていた」
「団体交渉開催について否定的な態度をとったとして会社を非難するのは躊躇される」
「当時の状況は団体交渉拒否の正当理由となると言うべき」
この群馬県労働委員会の棄却命令は労働者にとって禍根を残すものだ。例えば、群馬合同労組はその後他の会社とオンライン団体交渉なども行っている。特別な社会状況とはいえ、あるいは初期的で切羽詰った状況だからと言って、団体交渉拒否が容認されてよいはずがない。群馬県労働委員会は自分の顔に泥を塗ったのではないか。
群馬合同労組は、今回の群馬県労働委員会の棄却命令を許すことができない。T組合員の怒りと悔しさを思うと胸が痛む。
しかしながらT組合員はがんばり抜いた。分会の闘いが多数派に届く新組合結成の段階に入ると分会長が未明の出勤時に背後から襲撃される事件が起こり、分会長が就業できず、新組合も崩壊した。T組合員は孤立を余儀なくされ、次は自分が襲われるかもしれないという不安にさいなまれた。そんな中で最後まで節を曲げず堂々と闘い抜いた。群馬合同労組はT組合員の闘いに心から敬意を表したい。T組合員の闘いをさらなる組合の団結の糧にして闘う。
中央タクシー分会の闘いはこれでいったん終わる。しかし分会の闘いは日本の労働運動にとっても大きな展望を切り開く偉大な闘いだった。これを発展・拡大する闘いはこれからだ。みなさん。ともに闘いましょう!