岡本工作機械事件、救済申立てを群馬県労働委員会が棄却

18 3月 by gungoroso

岡本工作機械事件、救済申立てを群馬県労働委員会が棄却

 2021年3月15日、群馬県労働委員会から、不当労働行為救済を申し立てて争ってきた株式会社岡本工作機械製作所事件の命令書が送達された。残念ながらの棄却である。正確に言うと団体交渉拒否の2点に関して不当労働行為に該当すると判断したが、救済には当たらないというもの。

 2019年6月に、岡本工作機械の請負会社A社の社員として、機械の搬入・搬出等の業務を行っていたO分会組合員が、岡本工作機械の女性社員から誤解されてハラスメント疑惑をかけられて、「出入り禁止」とされ、退職に追いやられてしまった。

 これを岡本工作機械は、Oさんが組合員であることから自ら調査をすることなく、雇用主であるA社に対して、調査の上「出入り禁止」の措置を取るように強い調子で要求したのである。果たして、A社は有無もなく、形ばかりの事情聴取の上、O組合員に「出入り禁止」を通知、通勤可能なエリアに他の事業所もなく、結局O組合員はメンタルをやられて退職せざるを得なくなったのである。

 この際に岡本工作機械がA社に対して要請した文書が不当労働行為であるから撤回せよとの救済命令を求めて、組合は労働委員会で闘ってきた。それとこれに関する団体交渉の拒否である。

 争点としては、O組合員の直接の雇用主ではない岡本工作機械の「使用者性」であった。群馬県労働委員会は、命令文で以下のように述べる。

「業務の少なくとも一部について、日常的な指示等をしていたことが認められる」

「雇用主以外の者であっても、例えば、当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、その限りにおいて労組法第7条の「使用者」に該当すると解すべき」

「本件文書の内容は、申立外会社(A社)に対し、ハラスメント疑惑に関する調査を依頼し、調査の結果を踏まえた、申立外会社(A社)の規程にのっとった処分等を依頼するものである。その依頼の内容自体は、自社従業員がハラスメント被害を受けた企業の依頼として自然なものであり、その依頼の内容自体に使用者性を認める余地はない。もっとも、組合は、会社と申立外会社(A社)との間の委託取引における優越的地位を考えると、単に依頼をしただけでなく実質的に申立外会社(A社)にOの「出入り禁止」を押しつけたものであるとも主張している」

「「出入り禁止」は、Oの就業場所の変更を余儀なくさせるものと解することができる。そうすると、…Oの就業場所につき、会社が雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたと判断できる場合には、本件文書の手交について会社の使用者性を認める余地がある。」

「これについては、確かに、会社がOにその業務の少なくとも一部について、日常的な指示等をしていたことが認められるのは…述べたとおりであるし、また、申立外会社(A社)は一定程度会社の意思を尊重する立場にあったことが推認される」

「しかしながら、本件文書の内容のみならず、上記文書の手交時における会社の申立外会社(A社)への対応等をみても、会社はハラスメント疑惑に関する調査並びに当該調査の結果及び申立外会社(A社)の規程にのっとった処分等を依頼したに過ぎないと認められるし、申立外会社(A社)がOとの面談を実施し、Oが事実関係を認めたことをもって「出入り禁止」の指示等を行ったことも認められる。これらのことを踏まえると、会社がその優越的地位を利用して一方的にOの就業場所の変更を余儀なくさせたとまでは認めることはできない。」

そして結論として「少なくとも本件文書を手交したことに関する限り、会社は、Oとの関係において労組法上の使用者とはいえない」と述べた。

この「使用者」性の否定を前提にすると、団交拒否も成立しないということになる。そういうことでの棄却である。

請負労働者が、親会社の団結破壊と闘うのは難しい。韓国のAGC(旭硝子)工場で働く請負労働者が労働組合を作って立ち上がった時、AGCは請負会社との請負契約を破棄して会社を解散させてしまった。そんな要求でも呑んでしまうのが請負会社と親会社の関係なのだ。これを突破するために旭非正規職支会は6年闘い抜いて、いよいよ正社員として職場復帰する展望をつかんだ。ここに希望があるし、日本の労働者も負けずに闘う中で希望をつかむしかない。

そう考えると、O組合員と群馬合同労組の闘いは、とても重要な闘いの前進を勝ち取ったと総括できる。

  • O組合員がつぶされなかったこと。退職を余儀なくされたが、健康を取り戻して、今は新しい職場で新しい闘いを切り開いている。
  • 岡本工作機械の下請けに対する悪らつな優越的地位の濫用を暴き出したこと。それまで2人分の請負料金で3人を働かせていた。A社は赤字で回していた。組合が偽装請負の是正を要求した結果、偽装請負の解消と請負料金の是正をさせた。A社には組合に感謝してもらいたい。
  • 請負会社の労働者に道路交通法違反の仕事を強制していたことを暴いて是正させた。時間を守らず請負の運転手を何時間待たせても平気だった状況も改善させた。
  • 今後の分会に対する不当労働行為は許さないことを会社に突きつけた。

O組合員の新しい職場でも、この業務請負の問題が入ってきている。労働者を、労働者として扱わなくてもいい、というのが業務請負だ。これに対して、労働者として、労働組合として闘いを作り出していくことが問われている。O組合員の闘いは、必ずこれからの闘いに引き継がれる。請負・派遣の労働者、フランチャイズで働く自営業者は、群馬合同労組・合同一般労働組合全国協議会に結集してともに闘おう。

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