メディカル・ケア・プランニング株式会社との第1回団体交渉報告
2021年2月3日、ハーモニーライフ北橘(サービス付き高齢者向け住宅)を運営するメディカル・ケア・プランニング株式会社との第1回団体交渉が開かれた。会社から、新型コロナ感染予防の見地から、裁判所も導入しているMicrosoft Teamsによるウェブ会議での会見による団体交渉が提案され、東京の顧問弁護士をホストとしたオンラインでの団体交渉となった。組合は当該のA組合員、清水委員長はじめ6人が組合事務所に机を並べて、カメラとモニターに向かう。会社は東京の代理人弁護士2名、事業本部長、ハーモニーライフ北橘の責任者であるB統括マネージャー、社労士がそれぞれの拠点からウェブ団交に参加した。組合は、Microsoft Teamsは初めてで、会議に接続したものの、スピーカーがうまく機能せず、始まるまでにてこずる。
ハーモニーライフ北橘は群馬県渋川市北橘町八崎(ほっきつまちはっさき)にある、特定入居者生活介護サービス付き高齢者向け住宅だ。渋川市北橘町八崎と言えば、2009年に10人の死者を出した高齢者施設「静養ホームたまゆら」の悲惨な火事を思い出す。東京で一人で生活できなくなった高齢者が区や市から生活保護を受け、群馬のこうした施設が受け入れる。そうしたビジネス構造は変わっていない。
Aさんは、ネットの求人募集をみて応募、昨年10月に管理職候補として採用された。しかし、新入りで試用期間、年上が多く、職場でうまくいかない。指導や研修してもらいたかったが、社会人中途採用で、この業界はそんな余裕はなく、オン・ザ・ジョブ・トレーニングが基本だという。しかしこの職場では自分でわかるようになれ、わからなかったらわかる人に聞けというだけのようだ。シフトを作るように言われたが、古株の反感を買い、「パワハラ・嫌がらせ」としか思えない状況に立ち至る。B統括マネージャーにSОSを出すが、有効な対応をしなかった。絶望したAさんはB統括マネージャーの上の事業本部に相談して窮状を訴えた。しかし事業本部もすぐに動かず、結局B統括マネージャーに話を戻した。
B統括マネージャーは、管理職候補として採用したんだから自分で解決能力を身に着けることを求めた。精神的に追い詰められたAさんは労働局などに相談した挙句、群馬合同労組に相談・加入することとなった。結局B統括マネージャーは、Aさんをこのまま管理職採用するわけにはいかないと、3カ月の試用期間の延長を通告した。見ると、雇用契約書が、3カ月の有期雇用契約書になっている。「更新する場合がありうる」とも記載されている。要するに「正社員雇用契約書」という名前の3カ月の有期雇用契約書になっている。最近は多いのだ。こういうおかしな雇用契約書が。
最初の要求書に対して、会社から回答書が送られ、さらに第2要求書を提出した。この日の第1回団体交渉は、これに対する回答を聞きながら、議論する形の交渉になった。
主要に二つの問題について、報告したい。
ひとつは、糖尿病を患う利用者さんに、ケアマネージャーがAさんにインスリン注射をするように指示したという問題。会社の回答は、医行為を介護士が行うのは違法、インスリン注射は医行為、それを会社が指示をすることはあってはならないし、してもいない。当該ケアマネージャーが誤解を与えたことは問題であり、厳重注意を行った、とした問題。組合からは、自己注射ができない健康状態に立ち至った利用者を、退院後戻したことが問題であり、その責任について、会社の見解を求めた。しかし、その点については、A組合員の労働条件にはかかわらない、義務的団交事項ではないという理由で明確な回答は示さなかった。しかしA組合員ならびに組合の主張は真摯に受け止めるということだった。
もうひとつは、Aさんは求人サイトでハーモニーライフ北橘での求人を見つけ応募したが、このサイトには就職が決まれば就職祝金を出すという制度があった。これをB統括マネージャーは求人サイトには不採用と報告した問題。結果、Aさんは就職祝金がもらえなかった。この問題を要求書で指摘されると、B統括マネージャーは、就職祝金は会社が出すから、いくらなのかわかったら言ってくださいと言っていた、遅くなってしまったが払うつもりだった、すぐに5万円を払う、採用までに期間が長かったので不採用と報告したという回答をした。しかし、Aさんはそんな話は聞いていないという。実際に聞いていれば、就職祝金がいくらもらえるはずなのか、言わない理由などあるわけがない。結局、ここでも、言った言わないの言い合いになる。しかし、組合としては、就業までに時間がかかるとしても、採用の方向でという話をしているのに、なぜすぐに不採用と報告したのか、納得がいくわけがない。
就職案内の口コミ投稿サイトにメディカル・ケア・プランニングの書込みがいくつか見つかった。(https://en-hyouban.com/company/10105753539/23/)
「給与水準:10年弱前の話ですが、正社員の募集で応募したものの、いつまでたっても試用期間(パート扱い)のままでした。ほかにも同様の状況で働く同僚が多くいました。さらに、採用後に別の職種(デイサービス相談員→有料ホーム介護職)への異動を指示されましたが、異動後の給与明細を見たら、時給が50円下がっていました。説明を求めても結局返事はなく、辞めることになりました。」
「働き方 勤務時間・休日休暇:デイサービス勤務の際、イベントやレクリエーションの準備を残業してやっていましたが、全てサービス残業でした。」…
メディカル・ケア・プランニングのたくさんの労働者が、A組合員と同じように辛く、苦しい思いをしてきたのではないだろうか?また群馬・全国の施設で同じような状況で苦しんでいる介護労働者がたくさんいるのではないだろうか?そんな施設で利用者が、最後の人生を明るく楽しく生活できるだろうか?
A組合員は、泣き寝入りしたくないと、群馬合同労働組合に加入して闘う道を選んだ。そして、しっかり闘い、自分を守った。団交に参加した組合の仲間も、自分も同じ思いをしてきたからこそ、自分のことのように一緒に闘った。労働者は、一人ではいけない。労働組合に結集して、団結して立ち上がろう!
追加報告として
当事者のAです。皆さん本当にありがとうございました。
翌日、インスリンの一件は群馬県介護高齢課に相談し、
担当者が指導にはいると明言されていました。
その話の中で「利用者さんに虐待はありました」と聴かれたので、「身体的はないと思うが、心理的と介護放棄の疑いはあると思う」と答えました。渋川市と連携をして調査するとの連絡がありました。