群馬バスから賃下げの「お知らせ」が届く
群馬バスから賃下げの「お知らせ」が届く
群馬バスが10%の賃下げを群馬バス労働組合に提案したことはすでにブログで報告したが、本日12月23日、群馬合同労組にも特定記録にて、「給料の改定について(お知らせ)」という株式会社群馬バス・取締役会長兼CEO大島義一郎名の文書が届いた。
これについての説明も何もない。交渉したいとも書いておらず、「お知らせ」なのだ。内容を以下に転載する。
令和2年12月22日
群馬合同労働組合
執行委員長清水彰二様
株式会社群馬バス
取締役会長兼CEO 大島義一郎
給料の改定について(お知らせ)
今般、日本を含め世界中がコロナ禍で多くの会社が、過去に経験したことがないような厳しい経営状況にあります。特に、飲食業や観光業、運輸業は他事業に比べさらに厳しいのが現状です。
当社は、乗合バス、貸切バス、旅行業が経営の根幹であり、今回の新型コロナウィルスによる被害の直撃を受けてしまっています。会社としては新型コロナウィルス感染防止対策として出来ることはして参りましたし、経費の節減にも努めて参りました。
更に従業員の皆さんにも色々と特別な作業をして頂いてきたにも関わらず、上半期だけで対前年8億円を超える売上の減となりました。
下半期においても、雇用調整助成金や政府系の銀行からの多額の借入金により辛うじて事業を継続しておりますが、年間で5億円を超える大きな赤字になると予想しております。今期はこの様な状況で当社は赤字会社に転落してしまいますが、来期においては必ずや黒字を出し、数年間でこの赤字を消さないと当社の継続は難しいと言わざるを得ません。
今後、当社の事業は来期もコロナの影響が予想されますが、当社としては絶対に黒字を出し、会社の生き残りと事業の継続、そして皆さんの雇用を確保するため、給料の改定を下記のとおりせざるを得ないと判断しました。大変、心苦しいことではありますが、ご理解とご協力をお願いします。
記
1、変更内容
(1)基本給と役付手当の改定
①40歳以下 5パーセント ダウン
②54歳以下 10パーセント ダウン
③55歳以上 15パーセント ダウン
(2)ハンドル手当の改定
〔〔1〕の改定と同程度の基準による〕
2、変更時期
令和3年3月16日より
以上
ちょっと待てよ、と言いたい。
そもそも「給料の改定」を一方的に行うことが許されるの?ということから。
結論を確認すると、会社が業績不振になったからといって、会社の一存で従業員の賃金を下げる「減給」をすることはできない。
それを可能にする手っ取り早い方法が、労働組合との労働協約である。組合員の意志を代表して、労働組合が賃下げに同意すれば、賃下げは有効になる。
群馬バスは、群馬バス労働組合に合意を取り付けて、大勢として、賃下げやむなしという労働者のあきらめをつくろうとした。しかしながら、そうはならなかった。すでに長時間・低賃金。冗談じゃないという声があふれている。「話し合い」は継続になった。明日12月24日に組合役員全員と会社の話し合いがもたれるという。組合員の生活と人生がかかっている。安易な妥協は許されない。今日が意見書の締め切りだ。絶対反対と意見を書いて出してほしい。
もし群馬バスとの労働協約が成立しても、それで賃下げができるのは群馬バス労働組合の組合員だけである。
就業規則・賃金規程を会社が勝手に改定した場合、それが有効かどうかは、雇用している全労働者に周知徹底し、変更内容が合理的なものであるかどうかで法的に判断されることになる。「合理的」かどうか、これは具体的に見なければならない。
その場合のポイントは以下の通り。
- 個々の労働者がどの程度の不利益変更を被るのか、について
労働基準法91条は、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」として、制裁の場合の減額率を最大10%としている。従業員に非があって制裁されるようなケースでの減額が最大10%であるという法的な価値観、温度感から、従業員に非がなく会社の事情による減額の場合に、10%以上の減額をするのは問題外だ。55歳以上は15%の賃下げを群馬バスは提案している。
- 会社が労働条件を変更しなければならない必要性は何か、について
業績悪化は、新型コロナの感染拡大とオリンピック投資の失敗だ。これは一企業の問題ではない。国と行政にまずは責任を取ってもらわなければならない。群馬バスは「来期においては必ずや黒字を出し、数年間でこの赤字を消さないと当社の継続は難しい」と言っているが、そのような見込みを立てて、労働者の給料をカットするなど、冗談ではない。群馬バスは2015年にも賃金規程の改定による賃下げを行っている。
- 就業規則の変更後の内容自体は妥当なのか、について
10%、15%の賃下げ幅、2015年に引き続いての賃下げ、妥当性などない。
- 就業規則の変更に際して労働者側との間で講じた手続きなどの状況
群馬バス労働組合においても十分な説明や協議を尽くしたとは言えない。労働者には何の説明もなしに、あわよくば群馬バス労働組合の役員の合意を取って決めてしまおうというやり方ではないのか?群馬合同労組に「お知らせ」が届いたのは、群馬バス労働組合に提案があってから一週間以上も経ってからである。しかも55歳以上は15%のダウンだなどと、初めて知らされた。
- その他の事情
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本日12月23日、高崎駅にて、群馬合同労組は、群馬バスの労働者に、賃下げに反対しようと、ビラまきを行った。共感する声がいくつも届いている。群馬バス労働組合の役員のみなさんにお願いしたい。賃下げでローンが払えなくなる労働者も出てくるはずだ。生活が、家庭が破綻するかもしれない。決して、一人もそのような組合員を出してはいけない。労働組合の役員として、組合員にしっかり責任を果たすように、しっかり考えていただきたい。
群馬合同労働組合と同群馬バス分会は、もうすでに生活も健康もボロボロな状態で事業と会社を支えてきた群馬バス労働者を守るために、全力でともに闘う。