岡本工作機械の不当労働行為は明白!

10 12月 by gungoroso

岡本工作機械の不当労働行為は明白!

 岡本工作機械の不当労働行為を争う群馬県労働委員会は、3人の証人尋問を終えて、12月14日に結審を迎える。審問計画策定後に岡本工作機械がO総務部長の証人尋問を追加で申請したことで、異例のドタバタ、全く余裕のない審問過程となったが、何とか組合も最後陳述をまとめることができた。あらためて岡本工作機械の不当労働行為は明白になった。最後陳述書を一部省略して掲載する。

令和2年(不)第1号

株式会社岡本工作機械製作所事件

2020年12月7日

群馬県労働委員会

 会 長   清水 敏 様

                 申立人  群馬県高崎市柴崎町60-2

                      群馬合同労働組合

                      執行委員長  清水彰二   

最後陳述書

第1 被申立人が、申立外大黒運輸株式会社に対し、「当社社員に対するセクハラ(ストーカー行為)について」と題する書面を発出したとされることが、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当するか

  1. Oの言動に処分に該当するような問題はなかったこと

 N氏の被申立人・O2総務部長への相談は、セクハラあるいはストーカー行為と呼べるような内容ではなかった。

 N氏の最初の相談について、O2総務部長は「工場で働いている大黒運輸の社員と思われる人から自分の個人情報を探られたり、待ち伏せをされているようなところがあるので、毎日16時頃、出荷場に郵送物を配する業務について、担当を変えて欲しいという依頼がございました」「やっぱり気持ちが悪いし、凄く恐怖を感じていると申しておりました」と証言している(第2回審問証言速記録第1冊1頁22行目~)。

O2総務部長は、N氏に対して、報告書の提出を指示した。この指示で提出されたN氏の報告書の題名は「ハラスメント行為に関するご報告」であり、セクハラという表現はなく、「ストーカーのような行為」という表現が一か所あるのみであった。

 それが、大黒運輸株式会社に対する交付文書では「当社社員に対するセクハラ(ストーカー行為)について」となったことについて、O2総務部長は証言で「私はセクハラ、ストーカーと書きましたけど、その定義がどうこうっていうよりも、一応こういうことがあって、Nさんが怖がっているので、こういう事実が認められたら、しかるべき処置をとってくださいと。で、一番重要視したのは、もしそういう事実があれば、もう今後二度と近づかないっていう、念書をとってくださいというのをお願いしました。」(第2回審問証言速記録第1冊29頁6行目~)と述べている。

 要するに、セクハラあるいはストーカー行為について、法律的に該当するかという判断抜きに、下請け会社に対して、当該文書を発出したのである。

 しかも「事実確認」と言いながら、事実の特定が極めてあいまいである。2019年7月10日付大黒運輸株式会社「回答書」(甲17)には、「(1)女性社員を、終業後ドラッグストア(ウェルシア)でよく見るという話をしたこと(2)女性社員の自宅が、ドラッグストア近くの〇〇モータース(バイク屋)なのか、どの辺なのか聞いた事実があること(3)周りの目がない所で2人でゆっくり話したいと言っていたこと、等の事実」を認めたことが「セクハラ行為と言われても仕様がない」ことであるとして、「事実を概ね認めた」と被申立人に報告している。

しかしながら、これをもって「“セクシャルハラスメント”に該当しうると推定できる」(乙17 3頁17行目~)などとは言えない。ましてやOは「セクハラ」「ストーカー行為」について認めたことはないし、弁明の機会さえ与えられていない。申立人が、被申立人や大黒運輸株式会社に対して、Oの弁明を提出して説明した通り、セクハラやストーカーに該当する行為・言動は存在せず、事実としてはN氏の誤解が大きかったのである。

後に、被申立人は、大黒運輸株式会社に対して、N氏の状況を“会社に行く事は勿論、日常生活において強い恐怖感を感じる状況”であると説明したが、これはN氏の最初の相談からすると、被申立人によって事態が意図的にデカ写しにされたと言うほかない。N氏は被申立人・O2総務部長に相談した時のことを「私としては、以降、工場内でOさんに会わなくて済むように、宅配便を集荷場に届ける担当業務から外してもらいたいと思っただけで、Oさんに対する処分も、謝罪も求めませんでした」(乙16 5頁13行目~)と陳述している。2019年6月17日付の報告書のタイトルが「ハラスメント行為に関するご報告」であるように、セクハラ・ストーカーとの認識をN氏はしていなかったのである。

また「今回のことを会社に相談してから、半年ぐらいは、怖くてウエルシアに行くことができませんでした」と陳述しているが、これは「会社に相談してから」と言っているように、被申立人の対応によって争議に発展した結果である。第3回団体交渉で、被申立人のY代理人は「警察に行けっていってあります」「もし帰りがけに待ち伏せされたら、すぐに警察に連絡しろって、女性従業員にはいってあります。誓約書も出ないし、いつ本当に待ち伏せされるかわからないので」と発言している。ちなみにN氏が当時実際にウエルシアに行っていたのは「2か月に1回くらい」(乙16 2頁下から12行目~)、生活圏にあるOは「週に2~3回」である。

  1. 被申立人の対応は差別的取扱いであること

 被申立人・O2総務部長は、N氏から相談が寄せられると、行為者がOであることは「多分そうじゃないかなと」(第2回審問証言速記録第1冊30頁3行目~)とわかった。N氏から報告書が出ると「(団交のメンバーだから慎重にしなくちゃいけないなと)そう思いました」と証言する。

 そして被申立人の内部通報規定にしたがって指定法律事務所であるY弁法律事務所の代理人・Y弁護士にその旨を含めて報告した。Y弁護士は被申立人の社外監査役である。二人は、組合通告以来、申立人との団体交渉の責任者である。ちなみに、2020年3月期、被申立人が5人いる社外役員に支払った報酬総額は3700万円である(有価証券取引報告書等による)。

 二人は、関係者全員から詳しい話を聞くことに決めた。

まず、O2総務部長は、N氏に対して、報告書の提出を指示した。

そして、通常であれば行為者であるOから事情を聴くところ、そうはせず、「大黒運輸に事情を聞いてもらうことに」したという。「かなり慎重にやらなければいけないと思」った、「ある意味処分権を持っている大黒運輸、要するに雇い主である大黒運輸の方から事情聴取をしてもらった方が、公正で公平な判断がされると思」った、「大黒運輸の社内のルールに従って、処分してもらった方がいいだろう」と考えたと証言した。

 また、「Oさんも既に団体交渉に参加をされていましたので、そういった面も考えて、当社で行うのはいかがなものかなと考えました」「事情聴取をして何らかの処分なり、そういったところを考えるのは、大黒運輸の規程ですとか、大黒運輸の中のルールに沿ってですね、行われるべきというふうに考えました」という。

大黒運輸株式会社の処分権、社内ルールが強調されているが、O2総務部長は「その処分っていうのが、Oさんに対して処罰を与えるっていうよりも、1回大黒運輸に、さっきもお話したとおりですね、Oさんが組合員であるっていうことを知って、何ら処分もなかったという事実があったので、今回はきちんとした対応をしてくださいという意味です。」(第2回審問証言速記録第1冊16頁11行目~)と証言した。

これは2018年12月16日の申立人が大黒運輸株式会社に対して、Oの組合通告を行った時のことを指している。

O2総務部長は「以前に、Oさんが当社の班長であるT君ともめたときに、大黒運輸はですね、Oさんが合同労組の組合員であるという連絡を受けて、その後、Oさんに対して何ら処分をしなかったという例がございました。」(同7頁13行目~)と証言した。

被申立人は、この時のトラブルについて、大黒運輸株式会社が「何ら処分もなかった」のは不当だったと認識しているのがわかる。そして、「今回はきちんとした対応をしてくださいという意味です」と証言したのである。

しかしながら、これこそ、被申立人が申立人とOに対して、先入観をもって特別な対応を行ったということである。

この時のトラブルについて、被申立人は「T班長がOに対し『機械本体を組立ラインに入れてもらいたい。』と依頼したところ、Oは『二人作業でないとできない。』と答え…翌日以降Oは無断で休み、しばらくして職務に復帰した」(被申立人第1準備書面1頁下から2行目~)と答弁している。

この点に関して、被申立人自身が「工作機械の搬入・搬出作業中に事故が起こると、作業員の生命・身体に危険を及ぼしかねないので、被申立人が大黒運輸の安中班に対して一人作業を禁じていたのである」(被申立人第3準備書4頁4行目~)と書いているように、トラブルの原因は規則と安全原則を逸脱して業務を命じたT班長にあるのである。トラブルに発展したとしても、暴力事件や暴言があったわけでもなく、Oが処分を受ける理由は存在しないのである。ところが、被申立人のクレームを受けて大黒運輸株式会社はOに対して自宅待機を命じた。申立人は具体的な要求は大黒運輸株式会社にしなかったが、大黒運輸株式会社は不当な処分が行われれば申立人が黙っていないことを理解したので、処分を行わなかった。

また無断欠勤については、大黒運輸株式会社からの自宅待機の命令に従ったのであり、それこそOには何の責任もない。たとえ事実であったとしても、請負の大黒運輸株式会社の従業員が休んだことを被申立人が問題にすること自体がおかしい。

このように、被申立人・O2総務部長には、申立人とO、さらには大黒運輸株式会社に対する間違った認識・偏見が存在している。被申立人・O2総務部長は、社外役員であると同時に代理人であり、顧問弁護士・指定弁護士事務所所長であるY氏と対策を話し合う中で、大黒運輸株式会社に対して「今回はきちんとした対応」つまり処分をさせるという対応を決定した。

この時すでに、2019年5月17日の第2回団体交渉以降、Oの証拠と証言を契機として、輸送係の廃止、偽装請負の解消が被申立人上層部で議題となっていた。輸送係の廃止は2019年8月1日付であるが、大黒運輸株式会社とは最初に「全て任せる」「受ける」という話がされていた。Oの現場からの告発が被申立人の組織改編にまで発展していた。そのことをO2総務部長ならびにY代理人が意識していないはずはない。

  1. 決定権をもって「出入り禁止」処分を行ったのは被申立人
  • 大黒運輸株式会社への「依頼」が高圧的なものであること

 被申立人は、申立人が「決定権をもってOを『出入り禁止』にしたのは被申立人である」と主張したことに対して、「事実に反する」(第5準備書面2頁下から3行目~)、「事実が確認された場合には、安中工場への出入りを禁止するよう依頼しただけである」(同3頁1行目~)と主張する。

 大黒運輸株式会社のM総務部長の証人としての出廷が、大黒運輸株式会社側の「紛争にまきこまれたくない」との理由で拒否されたとのO2総務部長の証言があった。乙17号証「報告書」(2020年8月3日付)及び甲16号証「回答書」(2019年7月2日付)から大黒運輸株式会社の対応と認識を明らかにする必要がある。

 まず「2019年6月24日に岡本工作機械総務部長のO2氏より至急面談したい旨の連絡を受け」る。そしてその「口調よりことの重大さを感じ」た。「直近の6月26日に岡本工作機械本社に赴き、O2総務部長と同席されたN氏と面談し、以下の状況説明と対応・依頼を受けた。」とする。ちなみに2019年6月26日は被申立人の第120期定時株主総会(乙13)の前日である。被申立人はこの株主総会にからむ業務での多忙を申立人への回答見送りの理由としている(被申立人第2準備書面3頁下から3行目~)。そのような年間最繁忙期とも言える時期に、至急に、重大さを感じる口調で呼び出されたのである。

 その場で、「O2総務部長よりO氏の行動・言動は全く許されないことであると強いご指摘を受け以下の対応と要請を受けた。(1)至急大黒運輸においてO氏と面談をすること。(2)事実確認後、以後岡本工作機械社内への出人りを禁止。(3)更にN氏への“セクハラ(ストーカー行為)”を行わない旨の念書を提出すること。」

 大事なことは、最初にまるで確定した事実であるかのように、O2総務部長から「O氏の行動・言動は全く許されないことであると強いご指摘を受け」たということである。それを前提にして「事実確認後、以降岡本工作機械社内への出入りを禁止」とされている。それに加えて、「セクハラ(ストーカー行為)」を行わない旨の念書の提出である。すでに「セクハラ(ストーカー行為)」は既定の事実として語られたことをこの報告は裏付けている。

 この「要請」に対して報告書は「弊社としては、O氏が勤務先において得意先女性従業員が『“会社に行く事は勿論、日常生活において強い恐怖感を感じる状況”にまでなってしまった。』と申告するほどの行為を行っていたといわれた事は全く予想外のことであった」と記載した。

さらにOからの事情聴取と対応に関して「話を聞く限り、O氏は前日にM、O3がO2総務部長並びにN氏から指摘を受けた行動・言動については概ね認めたが、岡本工作機械でのコミュニケーションの1つであり、それがセクハラ(ストーカー行為)に該当するとの認識はなく、誤解があるならばN氏に直接謝りたい意向を述べた。これに対して、弊社としては、以下の理由からO氏に対して川崎営業所への配置転換を内示した。

(1)N氏が受けたというセクハラ(ストーカー行為)の事実を近くで把握できない状況であり、ストーカー行為と断定することは難しかったもののセクハラに該当すると思われる行為が散見される為、N氏が”会社に行く事は勿論、日常生活において強い恐怖感を感じる状況”にまでになってしまっている状況であることを重く捉えた。

(2)また、弊社は長年に渡って仕事をいただいている関係にある岡本工作機械からの強い要請がある以上、今回の様な信頼関係を破綻させる行為については見過ごすことはできないと考えた。

(3)更には、同時にO氏本人のN氏への行動認識はなんであれ、O氏をこれ以上岡本工作機械で勤務を継続させる事は今後のO氏本人の為にも良くないと思われ、O氏については(弊社は従業員が入社の際には教育DVDを見せ“ハラスメント系”の教育は行っていたが)必要があれば再教育・指導の必要もあると考えた。」

 ここで「長年に渡って仕事をいただいている関係にある」との記載があるが、すでにこの時には、業務全面委託に向けた委託基本契約の改定の話、月額〇〇万円から〇〇〇万円(※約4倍に)への大幅増額の話がなされていたはずである。

 2019年7月2日の「回答書」(甲16)では、被申立人から「会社として当該社員の保護の為、事情聴取の上で、O氏の会社への出入り及び当該社員への接触を禁止して欲しい」と要請を受け、「当面弊社として取りうる手段として」「神奈川県内の営業所への異動を打診しました」とある。

被申立人は、「行為者に対する事情聴取については、かなり慎重にやらなければいけないと思いました。そこで、実際、私が聞くよりも、ある意味処分権を持っている大黒運輸、要するに雇い主である大黒運輸の方から事情聴取をしてもらった方が、公正で公平な判断がされると思いました」「大黒運輸の方が中立的で公平だから、もう大黒運輸に事実調査を任せようと思った」(第2回審問証言速記録第1冊3頁13行目~)と証言している。しかしながら2019年6月26日の面談の場において被申立人が大黒運輸株式会社に対して「公正で公平な判断」を要請した事実はない。逆に、N氏の状況を誇大に強調し、相談時にはなかった「セクハラ・ストーカー」という根拠のないレッテルを貼りつけたのである。

大黒運輸株式会社は「ストーカー行為と断定することは難しかったもののセクハラに該当すると思われる行為が散見される」「長年に渡って仕事をいただいている関係にある岡本工作機械からの強い要請がある以上、今回の様な信頼関係を破綻させる行為については見過ごすことはできない」と考えて、「川崎営業所への配置転換を内示」したと報告している。

  • 「言動が事実であれば」出入り禁止だと、大黒運輸株式会社の規程を無視して指示したこと。

 重要なことは、当該文書では、「顧問弁護士等を通じて至急事実確認をしていただき、その事実が判明した場合は貴社の規程に則り、厳正な処分をお願い致します」との文言で大黒運輸株式会社に対して処分の要請をしている一方、「こういう言動があったという事実があれば、もうその出入り禁止をしろというのが会社の方針」だと被申立人が明言していることである。

(甲33 19頁10~12行目)

清水  これはじゃあ、こういう言動があったという事実があれば、もうその出入り禁止をしろというのが会社の方針ですね、この件について

Y弁  そうです。

 つまり、大黒運輸株式会社に対して、「規定に則り」「厳正な処分」をするようにと言いながら、N氏の報告書にある文言が「おおむね事実」と確認できれば、「出入り禁止」にせよと伝えていたというのである。

 この点は、2019年8月1日に開催された第3回団体交渉において、申立人が処分に値する「セクハラ」「ストーカー行為」があったのかどうかを問題にしたことに対して、被申立人がN氏の報告書にある文言があったのかどうかを専ら問題として、「平行線」だと、不誠実な対応に終始し、その後の団体交渉拒否の理由としたことと重なる。

 したがって、当該文書の大黒運輸株式会社の「規定に則り」というのは飾りに過ぎず、実際にはN氏の報告書にあるOの言動が「おおむね」確認できたならば、その内容が大黒運輸株式会社の就業規則上どのような処分に該当するのかとは関係なしに、「出入り禁止」にせよとの一方的な指示であった。つまり大黒運輸株式会社の「処分権」を尊重せず、踏みにじって、「出入り禁止」通告を行わせたのである。

実際、Oは大黒運輸株式会社と「転勤の可能性なし」として雇用契約を締結しており、「配置転換」には処分としての正式な手続きが必要であることは言うまでもない。しかしながらOに対して処分の手続きがなされたことも、通知がされた事実もない。

 大黒運輸株式会社は、このような指示を受けて、従わなければ「契約解除」という不安の中で、「長年に渡って仕事をいただいている関係にある岡本工作機械からの強い要請がある以上、今回の様な信頼関係を破綻させる行為については見過ごすことはできない」として、言われるがままに形ばかりの「事情聴取」を行い、「おおむね事実を認めた」として、Oに対して、「誓約書」の署名捺印を求め、配置転換の打診をせざるをえなかった。

 これらの点に関しては、第3回団体交渉での、被申立人との以下のやり取りが裏付けである。

(甲33 27頁下から8行目~)

清水  だけどこれは認めてないからね。だけど、認めたってことで、ね、出入り禁止にしてるのは岡本なんですからね。じゃあその調査の結果が出るまで、出入り禁止を解除してください。

O2  それはできませんよ。

清水  なんで?

O2  なんで解除しなければいけないんですか?

(甲33 31頁下から17行目~)

Y弁  来ないでくださいっていう要求ですよね

清水  要求?じゃあはいってもいいんですか?

Y弁  要求に応じなかったら契約解除するかもしれないですね

清水  要求に従わなかったら契約解除。処分ですよね?それはね?

Y弁  処分って、その人事上の処分とは全然ちがいますからね…

清水  契約解除っていうのは大黒と契約解除するんですか?

Y弁  うちはね、うちはね、こういう懲戒処分をしてくれっていうように大黒にいったんではないんですよ。懲戒は、まぁそれは向こうが考えることでね、うちは女性社員がこれだけ嫌な思いをしているから、もう顔を合わせないようにしてくれっていうことをいっているんですよ

  1. 被申立人は大黒運輸株式会社に対して優越的地位にあること

 このような被申立人の大黒運輸株式会社に対する横暴で一方的な支配がなぜ可能になるのか。被申立人は、大黒運輸株式会社にOの出入り禁止を押しつけることはしていない、両者の関係は対等な関係であると主張する(第2回審問証言速記録第1冊6頁下から8行目~)。しかしそれは事実ではない。

 申立人は、被申立人が大黒運輸株式会社に対して行っている取引は何ら対等ではなく、独占禁止法上の役務の委託取引における優越的地位の濫用ともいえる状態であると指摘したが、あらためてその正しさが明らかになった。

 大黒運輸株式会社が3人目としてOを採用したことについて、被申立人は、大黒運輸株式会社が将来の受注業務の拡大を視野に「ただでよいので研修生として働かせてほしい」との申し出を受け入れたものであり、何ら問題はないという立場に固執している。しかしながら、大黒運輸株式会社・M総務部長は明白に「岡本工作機械の弊社への業務依頼内容に応えるため、岡本工作機械内勤務の従業員を1名増員することが必要となり、群馬県安中市のハローワークを通じ募集したところO氏が応募してき」て、採用したと述べている(乙17 1頁1.O氏の採用)のである。

 この場合、優越的地位の濫用とは、言うまでもなく、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」「継続して取引する相手方に対し、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること」である。被申立人は、2年に渡って、大黒運輸株式会社の3人目の従業員にタダ働きをさせ続けてきたのである。

 しかもこれを、大黒運輸株式会社の申し出に従ったまでであり、大黒運輸株式会社からの業務委託基本契約の見直しを提案されなかったからであるとして、放置してきたのである。

 ではなぜ、大黒運輸株式会社は3人のうちの1人がタダ働きで赤字なのに、何も言わなかったのか。あるいは「研修のため」と嘘までつかねばならなかったのか。それは被申立人との関係が対等ではなく、優越的地位の濫用がまかり通る関係だからである。

 両者の関係が対等ではない証拠はいくらでもある。消防検査で危険物が基準を超えて所蔵されているとまずいと、大黒運輸株式会社のトラックに積み込んで「逃がす」、棚卸で不都合があると大黒運輸株式会社のトラックに積み込んで「逃がす」…なぜ、こんなことがまかり通るのか。大黒運輸株式会社に対して、被申立人が優越的地位にあるからである。

 大黒運輸株式会社の女性ドライバーが被申立人社員からセクハラを受けていても問題にもできず、大黒運輸株式会社の従業員が自分たちで守らなければならない。被申立人従業員にちょっかいを出す大黒運輸株式会社の従業員がいれば出入り禁止で、それが問題にもされず、総務部長に報告もない。「一人作業は禁止」と言いながら、現場では一人作業を無理強いする。偽装請負や、道路交通法違反行為も常習的に強制され続けてきた。これらを被申立人に突きつけて、是正させたのが申立人と分会組合員なのである。

大黒運輸株式会社は、2019年8月6日付O宛回答書(甲22号証)にて次のように書いている。「上記令和元年6月27日に、貴殿に署名を求めた誓約書につき、株式会社岡本工作機械製作所より、その提出を強く求められております。貴殿からのご提出がない場合、同社と当社との間の取引関係にも影響を与えかねません。速やかにご提出いただきたいと存じます。」…いったい、どこが対等な関係だというのであろうか。

  1. 差別的取扱いであったこと

 被申立人・O2総務部長は、N氏の相談があると、内部通報規定に従って、Y弁弁護士と協議して対応したという。しかしながら、この2名は、申立人との団体交渉の責任者であり、ここでOが申立人組合員であるからと特別の対応を行ったことに根本的に問題がある。

問題は、Oが被申立人従業員ではなく、請負の大黒運輸株式会社の従業員であったということである。内部通報規定は、被申立人従業員間の問題を想定しており、適当ではない。被申立人・O2総務部長は、被申立人の施設管理権、大黒運輸株式会社との「委託基本契約」の規定に則って適切に対応すべきであったのである。

N氏の相談事由は、被申立人安中工場敷地内での出来事であり、当然に被申立人の施設管理権の問題として、セクハラ・ストーカー対応が求められた。緊急であればなおさらである。当事者からの事情聴取は、被申立人の施設管理権の範囲内で当然になされるべきであった。被申立人・O2総務部長はこの点を証人尋問で申立人から問われたが、答えられなかった。

さらに、大黒運輸株式会社との「委託基本契約書」(乙3)に基づいた対応が必要であった。ここでは、服務として「乙の作業員は、甲の服務規定、安全規則等を準用し、甲に迷惑をかけない様努めなければならない」として、被申立人の服務規定の準用を規定している。そこにはセクハラの禁止も明記している。「入場不許可・退場命令」も明記している。被申立人は、これらの事実を調べもせず、認識もしていなかった(第2回審問証言速記録第1冊12頁)。

被申立人は、被申立人にはOに対する処分権がなく出入り禁止等の対応ができないので、大黒運輸株式会社に事実確認と処分を託したと主張しているが、これは事実ではない。

また、被申立人は、大黒運輸の作業員が業務を遂行するのに適任でないと判断した場合について、大黒運輸に対し、請負契約に基づき、債務の本旨に従った履行を求めるため、作業員の交代を求めることになる(被申立人第2準備書面3頁)と述べている。しかし、被申立人は、このような基本的な対応も取っていない。

このように、規定や契約に従って当然に取られるべき対応が取られなかったのはなぜなのか。それは、Oが申立人組合員であり、特別な配慮が必要であったからである。O2総務部長とY弁代理人は、内部通報規定を利用して、Oと申立人に対して差別的な、でたらめな、特別の対応を行ったのである。

  1. Oが突然に就業を阻害され、生活と健康を破壊される不利益取扱いであったこと

 被申立人が大黒運輸株式会社に対して、当該文書を交付したことによって、Oは大黒運輸株式会社から被申立人安中工場への出入り禁止を通告され、就業ができなくなった。また通勤不可能な川崎営業所への配置転換を打診され、退職を余儀なくされた。これらによって、経済的な損失を被った。

 また、事実でない「セクハラ・ストーカー」犯人のレッテルを貼られ、精神的な苦痛を被り、「自律神経失調症」を発症するに至った。

 被申立人による当該文書の発出は、明白な不利益取扱いである。

  1. 被申立人の不当労働行為意思について

 被申立人は、大黒運輸株式会社との間に業務委託契約を結んだ(乙3)が、実際上は偽装請負であった。この点は、指揮命令者が被申立人・輸送係岡田係長だったこと、大黒運輸株式会社安中班に当初責任者がいなかったことから明らかである。

 この点は、Oら大黒運輸株式会社安中班員の休みの許可を被申立人・岡田係長が出していたこと(第1回審問証言速記録第1冊 2頁下から11行目~)によっても補強された。さらに、労働時間の管理を被申立人が行っていたことも明らかになった。被申立人は、大黒運輸株式会社安中班の日報の存在をもって、大黒運輸株式会社が独自の労働時間管理をしていたと主張したが、日報が大黒運輸株式会社によって管理もされていなければ、所有物でもないことが明らかになった(第1回審問証言速記録第1冊 28頁下から11行目~)。

 しかもこの偽装請負は、被申立人が大黒運輸株式会社に対する優越的地位を濫用して、2人分の料金で3人を2年にわたって使い続ける内容であった。

申立人は、2019年4月11日付要求書において、Oの分会通告を行うと同時に「貴社の責任において、大黒運輸株式会社社員に対して、過積載、道路交通法に違反する業務を行わせないこと。出荷時間が守られず、現場が混乱する状況があり、業務の安全衛生上問題があるので改善策を検討されたい。」(甲5 第2項)との要求を行った。これを受けた第2回団体交渉において、被申立人は、「大黒運輸株式会社社員については、当社が貴組合と協議すべき性質のものではありません。なお、当然のことですが、弊社が大黒運輸株式会社に対して道路交通法違反に該当するような対応を求めることはしておりませんし、今後もすることはありません。」との回答を行った(甲6 第2項)。

しかしながら、第2回団体交渉に出席したOの証言と証拠写真をもって、被申立人は一転して事実を認め、「あってはならないこと」「今後はないようにする」と回答した。

被申立人は、この後、すぐに是正に動いた。

以下は、S製造部長の証言である。

(第1回審問証言速記録第2冊 4頁1行目~)

S  まず、この団体交渉が始まる中で、道路交通法に違反した、あとは出荷時のシュッカジカク(※ママ、「出荷時刻」が正しい)を守れない安全衛生法、そういうことを指摘されまして、上場会社である私どもは、その違法行為を継続すると非常にリスクが高いこともあり、違法したことについては、速やかに対応するということで、やはり、道路交通法にあまり知識もない私どもがやるよりも、大黒運輸に全てお任せしたいということで、輸送係を廃止しました。

Y弁 Oさんの団体交渉での指摘がきっかけになって、専門業者である大黒運輸に全部任したほうがいいと、そういうふうに判断したということですね。

S  はい、そうです。

 つまり、被申立人は「大黒運輸株式会社社員については、当社が貴組合と協議すべき性質のものではありません」と回答しながら、申立人とOからの指摘を受けて、偽装請負の是正に動いたのである。業務委託が正しく行われていれば、被申立人から大黒運輸株式会社社員に対して道路交通法違反などの違法業務指示などは行われる余地はないのである。

Oに関わる申立人の要求は、根本的にこの被申立人の偽装請負ゆえに発生する問題であった。被申立人は、道路交通法違反という違法行為については、すぐに是正の議論を行い、輸送係の廃止に動いたというが、申立人が指摘する偽装請負という違法行為・コンプライアンス違反については議論も行われなかった。(第1回審問証言速記録第2冊 14頁下から2行目~)

これは、被申立人が、上場企業として、コンプライアンスは守ると言いながら、偽装請負の問題にはふたをする、請負会社に対する優越的地位の濫用についてもふたをするという対応であったと言わざるをえない。

Oに関する要求は、上場企業としての被申立人の地位にもかかわる重要な問題であることは事実をもって確認されたのである。であるならば、被申立人はOの問題に関して、誠実に団体交渉に応じる義務がある。雇用関係がない、使用者性がないと、団体交渉には応じないとする被申立人の態度はすでに不当労働行為意思の表れである。

被申立人・O2総務部長は、輸送係の廃止と大黒運輸株式会社との業務委託契約の条件変更は取締役会に提案しながら、これが申立人からの要求・指摘・告発の結果であることを、取締役会には報告・共有していない。偽装請負や業務委託会社に対する優越的地位の濫用の問題が、取締役会や株主に公になれば責任問題に発展しかねないのである。

したがって、Oに関わる要求事項が必ずこの偽装請負問題に発展することを意識して、被申立人・O2総務部長ならびにY弁社外監査役・代理人は、雇用関係にないことを理由として団体交渉には何としても応じないという不当労働行為意思の下に対応したのである。

  1. まとめ

 以上の通り、被申立人が当該文書を大黒運輸株式会社に発出して、大黒運輸株式会社にOに対する出入り禁止を通告させたことは、Oが申立人組合員であることを理由とした差別的な不利益取扱いであり、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いである。

第2 申立人が2019628日付け要求書、同年72日付け要求書、同年818日付け要求書及び同月28日付け要求書でそれぞれ申し入れた団体交渉の開催要求に対する被申立人の対応が、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するか

  1. 偽装請負であったこと

 第1で述べたように、被申立人が大黒運輸株式会社との間に結んだ業務委託契約(乙3)は、実際上は偽装請負であった。指揮命令、出勤管理や休みの許可、労働時間管理などすべてが被申立人によって行われていたのである。賃金が大黒運輸株式会社から支払われていたのは事実であるが、その元となる業務委託料金は、基本的に人数と労働時間によって被申立人と大黒運輸株式会社の間で決められていた。これは派遣会社との派遣契約と基本的に変わらない。Oの労働条件、職場環境の問題、安全配慮義務など、すべてに渡って、被申立人に使用者性があることは明らかである。

 被申立人は2019年5月17日付回答書(甲6)以降、一貫して「大黒運輸株式会社社員については、当社が貴組合と協議すべき性質のものではありません」と回答しながら、実際には申立人とOからの指摘を受けて、偽装請負の是正に動いた。被申立人は明らかにこの問題の深刻さを理解していたのである。

 Oに関わる問題は基本的にこの偽装請負に関わる問題であった。そのことを自覚した被申立人は、団体交渉に誠実に応じる義務がある。

  1. 団体交渉拒否の「正当な理由」について

 2019年8月1日の第3回団体交渉以降の要求に関して、被申立人は、第1準備書面8頁(4)において「8月1日の団体交渉においては、Oが女性社員に対して発言した事実を被申立人が問題としたのに対し、実際にOが女性社員を薬局で待ち伏せるなどして付きまとった事実があるか否かなどを申立人が問題としたため、両者の主張は平行線で、双方が譲歩して妥協点を見出すことが不可能であることは明らかであったからである」として、団体交渉拒否の「正当な理由」としている。

 申立人は、そもそも被申立人がOの言動を「セクハラ(ストーカー行為)」と決めつけて、「出入り禁止」処分を押し付けたことを問題として、事態の回復と、謝罪と補償を求めたものであり、被申立人が問題を「(Oの)発言した事実」だけに限定すること自体が不誠実である。

 さらに申立人は、第3回団体交渉後に被申立人が「賞罰規程」の写しを交付したものを検討し、さらにOの2019年8月12日付「弁明書」の提出に踏まえて、2019年8月18日付要求書にて団体交渉の開催を要求したのであって、「両者の主張は平行線で、双方が譲歩して妥協点を見出すことが不可能である」との被申立人の主張は何ら理由がなく、団体交渉誠実応諾義務をないがしろにし、不当労働行為意思を明白にするものである。

  1. 各要求項目に関して(省略)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください