安倍「働き方改革」について(民主労総ソウル本部との理念交流会報告)
韓日理念交流
「働き方改革」についての報告
2018/11/12
合同一般労働組合全国協議会幹事
群馬合同労働組合委員長 清水彰二
1 自己紹介
群馬合同労働組合の委員長、清水彰二と申します。合同一般労働組合全国協議会の幹事、それから旭非正規職支会支援共闘会議事務局長もやっています。群馬県は東京から北へ100キロのところにあります。
合同労組というのは個人で加盟できる労働組合です。地域単位、業種単位、雇用形態単位などで組織されます。職場に労働組合がない、あっても信頼できない、非正規雇用で組合に入れない、などという理由で、合同労組に相談・加入する労働者が増えてきています。
群馬合同労働組合は結成して13年、組合員は50人余りの小さな組合です。動労千葉とともに闘える地域の合同労組を作ろうということで結成しました。私もアルバイトをしながら、組合活動をしていますが、アルバイト先で労働条件の一方的な切り下げに抗議して解雇され、闘った経験があります。
組合は中央タクシーという分会を中心に闘っています。自宅から空港まで送迎する乗合タクシーを運行する会社です。「固定残業代」という制度で労働時間をごまかし、過労死や事故で運転手や乗客を殺しかねない会社でした。パワハラもありました。3人で分会を作って闘いを始めました。組合つぶしの運転業務外し、残業手当カットなどの攻撃と闘いながら勝利してきました。
全国に同じような合同労組が組織され、2010年に合同一般労働組合全国協議会を結成しました。職場で団結して、資本と闘う労働組合を作ろうと、努力しています。
日本の法律では、職場にたった一人でも、合同労組に加入すれば、団結権が保障されます。加入通告をして、要求書を提出すれば、団体交渉を行う義務が、雇用主にはあります。拒否をしたり、不誠実な対応を行えば、「不当労働行為」として、労働委員会に救済の申し立てを行うことができます。このような権利をも活用しながら、職場に闘いを組織しています。
2 日本の新自由主義と労働運動の状況
日本における労働運動は、国鉄分割民営化を転換点として、大きく後退してきました。日本における争議行為を伴う争議の件数は、1974年の9581件をピークに、2016年66件と激減しています(厚生労働省の2016年調査による)。1989年にナショナルセンターの「総評」(日本労働組合総評議会)が解散して「連合」(日本労働組合総連合会)に合流してから、桁違いの落ち込みになりました。
「総評」の労働運動は、労働者の闘いと団結こそが、労働者の生活を守るという労働運動でした。「連合」の労働運動は、会社の発展が労働者の生活を向上させる、会社と労働組合はパートナーという労働運動です。
動労千葉は、総評時代は重要な役割を果たしましたが、連合には行きませんでした。しかし連合の中からも、外からも職場に闘いを組織しようと、労働組合と活動家のネットワークとして全国労働組合交流センターを組織しています。
連合の時代になって、労働組合から闘争が一掃されました。それから30年が経ちました。一世代が交代する時間の長さです。「労働者階級」という物事の見方、イデオロギー、団結や闘争というイメージさえ社会的に消えてしまうくらいの困難があります。
そもそも日本の労働組合を理解する上で、戦後の日本的経営システムがどのようなものであったのかを説明したいと思います。賃金体系は年功賃金制度でした。年齢と学歴に応じて賃金額と賃金上昇比率が規定され,勤続年数に伴って基本賃金が上昇する賃金形態です。これと終身雇用、企業内労働組合の3つを特徴として「日本的経営」「日本型労使関係」と呼びました。
国鉄分割民営化は国鉄労働者の解雇を国家が強行して、労働組合と労働者の団結を解体し、終身雇用制度を解体し、規制緩和と構造改革のふたを開けました。そういう点で国鉄分割民営化が日本の転換点になりました。
国鉄分割民営化を行った当時の首相、中曽根康弘は、右翼軍国主義者でした。戦争と軍隊の放棄をうたった戦後憲法を葬り去って、再び天皇の軍国主義国家としての再生を悲願としていました。中曽根は、それを実現するためには、総評労働運動の解体が必要であり、そのためには中心になっていた国鉄労働運動を壊滅する必要があると考えました。本人がその狙いを後に語っています。
そこで出した策が、日本国有鉄道を民営化する、いったん全員解雇するという手口でした。そのやり方は、3人のうちの1人は新会社に行けないと打ち出して、労働組合の屈服と協力を引き出すというものでした。それまでストライキ闘争の中心であった「動力車労働組合」は、自分たちの雇用を守るために、階級的労働運動から転向して、当局と一体化して他組合の組織破壊の手先に転落しました。
反対する労働組合の組合員には見せしめの不当配転と処分が乱発され、いじめが横行しました。200人が自殺に追いやられました。最大組合の「国鉄労働組合」は、ストライキひとつ決断できず、団結して闘えずに組織の弱体化をもたらしました。
もともと「動力車労働組合」の千葉地方本部であった動労千葉は、1979年の分離独立のすえに、1985年、1986年の2回にわたる渾身のストライキに立ち上がり、40人の報復解雇という犠牲を出しながら、団結と組織を守りました。
しかし、総評は国鉄分割民営化の総括ができず、「闘っても勝てない」と崩壊、連合への合流に向かいます。
国鉄を頂点に、民営化の波は、電信電話公社(1985年)、郵政公社(2005年)などに広がり、国や地方公共団体が経営するあらゆる企業、特殊法人に及んでいます。それとセットで「規制緩和」を政府、政治家が競い合う政治状況があります。英語の本来のことばderegulation の意味は規制撤廃ですが、政府は「規制緩和」と言い換えました。
それは、社会全体の徹底した外注化・アウトソーシングに道を開き、非正規職化とブラック企業化が際限なく進行する状況を作り出しています。これを資本家階級は「成長戦略」と称して、競い合っている状況です。この状況は韓国でも、世界中でどこでも、同じであろうと思います。
国鉄分割民営化で重要なことは、一つは、雇用破壊です。
国鉄分割民営化は、公務員である国鉄職員をいったん全員解雇するというやり方でした。公務員である国鉄職員は、争議権は制限されますが、雇用は厳しく守られていました。中曽根はこれにあえて手をつけたのです。政府が民営化と規制緩和にかじを切り、率先して労働者の解雇をやってみせるということでした。
公務員の労働組合が主力をなしていた、総評を解体する重要な意味を持ちました。
雇用破壊は、非正規職化に道を開きます。
中曽根は、国鉄分割民営化と一体で、労働者派遣法を1985年に成立させ、1986年から施行させました。対象業務を13に限定してスタートした派遣法は、適用業務の拡大を続け、1999年に「原則自由化」、2004年に「製造派遣」解禁となって、工場労働に派遣が導入されるにいたりました。
大企業は、経営戦略にアウトソーシングを組み込むのが当たり前になりました。
2008年のリーマンショックで、経営危機に陥った企業は、「派遣切り」、派遣労働者の雇止めなどで危機の乗り切りをはかりました。派遣労働者が解雇された上、寮を追い出され、ホームレス化する状況が社会問題化しました。この時に私たち合同一般労働組合全国協議会の仲間は各地で派遣労働者の闘いを組織して、派遣先でのストライキも組織して闘いました。派遣労働者を「救済してあげる」対象とするのではなく、闘いの主体として組織しようという挑戦でした。この経験は、大きな意味を持ちました。
2009年、総選挙で自民党が大敗、民主党政権が誕生します。2012年まで続きます。
この中で労働契約法が改定され、「5年ルール」として、非正規労働者に5年継続雇用された場合、無期転換申込権が与えられることになりました。今年の4月から適用になりました。しかし、実際には5年の雇用延長の直前に雇止めがされる現実、法律を無視したり抜け道を作る現実、非正規労働者が泣き寝入りさせられる現実があります。私たちは、労働組合に結集して、無期雇用を要求して闘おうと呼びかけましたが、大きな流れを作ることができていません。
派遣法は、同じ派遣労働者を3年をこえて継続派遣することを禁止する一方、人を入れ替えれば期限なしに派遣を継続できるように改悪されました。
今や日本の非正規率は37.3%です。1984年は15.3%、1989年は19.1%でした。
さらに日本の雇用状況をみるときに、外国人労働力を、安くて、使い捨てのきく、無権利な労働者として導入する政策があります。1990年には出入国管理及び難民認定法改訂によって日系外国人労働力導入が行われました。外国人技能実習制度による詐欺的で奴隷的な外国人労働力導入も拡大してきました。現在行われている国会では、改憲問題とともに、入管法の改訂によって、「特定技能1号」「特定技能2号」という在留資格を新設しようとしています。外国人労働者を都合よく導入して使い捨てることのできる労働力として、大規模な導入が狙われています。こうした動きは日本の労働者の不安定化、低賃金化、分断に拍車をかけています。
3 新自由主義を推進するべく登場した安倍政権
本題の安倍政権の「働き方改革」ですが、まずこのような新自由主義の流れを徹底的に貫徹するものとしてそれがあることを押さえなければなりません。
安倍は極右の歴史修正主義者であることは前提にさせていただきます。
それと一体で、それを支えるものが、新自由主義による労働組合と団結の破壊です。
すでに日本の資本家階級の基本路線として、9割を非正規職化するという報告が打ち出されています(1995年日本経営者団体連盟の「労働問題研究会報告」)。国鉄分割民営化以降の31年は、民営化・外注化・非正規職化の新自由主義との、労働者の労働権と団結権をかけた闘いでした。
2001年には小泉純一郎内閣が誕生します。「構造改革なくして景気回復なし」をスローガンに、道路関係四公団・石油公団・住宅金融公庫・交通営団など特殊法人の民営化などと、「聖域なき構造改革」を打ち出し、郵政三事業の民営化を行いました。小泉内閣の経済財政政策において中心的役割を果たした竹中平蔵は「規制改革と官業の民間開放が、成長戦略の基礎である」と言いました。小泉のやり方は「古い自民党をぶっ壊して政治経済の構造改革を行う」「抵抗勢力を一掃する」という劇場型パフォーマンスでした。これは、新自由主義によって、旧来の生活基盤を破壊され、「就職氷河期」に見舞われ、不満が鬱積していた民衆の変革への期待を集め、「小泉旋風」を巻きおこしました。安倍晋三は、小泉内閣の時に、異例の抜擢をされ自民党幹事長に就任しました。
そして小泉の任期満了に伴う後継総裁として、2006年に第一次安倍内閣を発足させ、小泉構造改革を引継ぎ加速させる方針を打ち出しました。そして労働市場改革を構造改革の最大の柱の一つに位置づけました。そして第一次安倍内閣は「労働ビッグバン」を打ち出します。ここであげられた項目は、ニートやフリーターの戦力化、女性や高齢者の就業率向上、正規雇用と非正規雇用の区別の撤廃、非正規雇用に対する保険・年金の付与、「同一労働同一賃金条件」の法制化、「金銭解雇ルール」の法制化、ホワイトカラーエグゼンプションの導入、ワーク・ライフ・バランスの実現、などでした。
この構造改革の主眼は「終身雇用、年功序列という雇用形態への偏重から訣別し、同一労働同一賃金の原則の確立に取り組むべき」(竹中平蔵)というものです。
しかしこれは頓挫しました。これについて竹中平蔵は「既得権益を失う労働組合や、保険や年金の負担増を嫌う財界の反対で頓挫した」と語っています。
安倍は2007年9月に潰瘍性大腸炎を理由に首相を辞任、後を受けた麻生政権が2009年総選挙で大敗し、民主党に政権の座を奪われました。しかし2012年12月の総選挙で政権に返り咲き、第2次安倍内閣が始まりました。
4 安倍政権の「働き方改革」
- 労働者保護規制の撤廃が本質
今年6月に国会で成立した「働き方改革関連法」も、第一次安倍内閣がやろうとした労働市場の構造改革の貫徹であり、その核心に労働者の保護規制と団結を解体する思惑が貫かれています。
「高度プロフェッショナル制度」
- 「労働ビッグバン」では「ホワイトカラーエグゼンプション」と言われていた残業代ゼロ法。
- 導入対象を年収1075万円以上の高度専門職とし本人同意を条件
- 塩崎厚生労働大臣「小さく生んで大きく育てる」
- 経団連は年収400万円以上と主張、年収引き下げと職種拡大を狙う
- 労働基準法が定める労働時間・休憩・休日・深夜割増賃金などの規定の解体
- 8時間労働制の解体狙う
裁量労働制の拡大
- 制度の拡大を狙ったが、データの改ざんが明らかになり、撤回に追い込まれる。
- 業務遂行方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる職種に限って、実労働時間ではなく「みなし労働時間」で労働時間管理を行うことを認める制度
- 導入された「専門業種型」(1988年導入の19業務)、「企画業務型」(2000年導入)のうち後者に、あらたに「課題解決型提案営業」などを加えることを狙う
- 広く営業職に拡大する狙い。「電通」で過労自殺した女性労働者の仕事が該当。
同一労働同一賃金
- 「働き方改革」の旗印のように掲げる
- 労働者派遣法・パート労働者法・労働契約法に「職務内容、成果、意欲、能力または経験などを公正に評価し待遇を決定する」などの条文を盛り込む。
- 「正規か、非正規かといった雇用の形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保する。そして同一労働同一賃金の実現に踏み込む」(『一億総活躍プラン』)
- 能力主義の評価制度。労働と職務遂行能力を資本の経営コンサルタントが点数をつけて賃金を決める。団結の破壊。
- 年功制賃金の解体
- 日本の労働者階級が勝ち取ってきた生活給としての賃金体系の破壊
- 連合や全労連(全国労働組合総連合)も攻撃の本質をとらえず「格差是正」と評価
- 労働者のための改革という粉飾
第一次安倍内閣において「労働ビッグバン」が頓挫した経歴のある安倍は、「労働者が働きやすくするための改革」という粉飾を施して、同じ目的を果たそうとしました。「一億総活躍社会」「長時間労働是正」(「残業時間の上限規制」)「同一労働同一賃金」などです。
- 同一労働同一賃金
「同一労働同一賃金」はすでに触れたとおり、戦後の日本の基本形態であった年功賃金制度の解体ですが、非正規職労働者の処遇改善として押し出しました。連合、日本共産党・全労連(全国労働組合総連合)、社会民主党・全労協(全国労働組合連絡協議会)も非正規差別反対という立場から、「同一労働同一賃金」には反対していません。
- 残業時間の上限規制
安倍は「長時間労働の是正」を「働き方改革」の目的であるかのように装いました。しかしその実態は「残業時間の上限規制」については、月100時間までの残業を適法と法文化してしまいました。過労死認定ラインは月80時間です。しかも休日労働が年間の上限の例外になっています。
また最も規制が必要とされている建設業・自動車運転業務・研究開発・医師については適用除外とされました。
家族を過労死で亡くした「過労死遺族の会」が「過労死合法化法案」と糾弾しました。
- 「一億総活躍社会」
安倍は「働き方改革」を「一億総活躍社会」実現、すなわち「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持し、家庭・職場・地域で誰もが活躍できる社会」実現の一つの柱として打ち出しました。
具体的には「多様な就業」の促進がうたわれました。
安倍政権の成長戦略のひとつとして「限定正社員」制度が盛り込まれています。「ジョブ型正社員」とも言います。厚生労働省では「多様な正社員」という言い方をしています。
雇用は基本的には正社員と同じ無期雇用で、社会保険にも加入できますが、職務や勤務地などを限定します。業務や勤務地がなくなれば解雇されます。正社員と比べると、手当や一時金、退職金などが相当低くなります。 非正規並みの正社員制度です。すでに日本郵政グループやユニクロなど導入している企業は2011年の厚生労働省の調査で50%をこえています。
労働契約法の改正で非正規雇用労働者が5年継続雇用されると「無期転換申し込み権」を取得することになりました。この受け皿としてあらためて「多様な正社員」「限定正社員」が注目されています。しかしこの制度は、正社員を転換して、非正規職並みの労働条件に転落させるものとして使われようとしています。「同一労働同一賃金」がここで使われようとしています。
また「労働者の職業の安定」「地位向上」「完全雇用」を目的とする雇用対策法を「労働施策総合推進法」に改悪しました。職業紹介や職業訓練に関する法律が、「多様な事情に応じた就業」「生産性の向上」を目的に変更されました。
その柱が「テレワーク」、職場と離れた柔軟な働き方、です。とりわけ「非雇用型テレワーク」の推進は重要です。育児や介護で家庭を離れられない女性労働者などを労働基準法で保護されない就業形態に突き落とそうとするものです。
- 「生産性の向上」が「働き方改革」の目的
安倍の「働き方改革」の最大の柱は、「生産性の向上」です。
「最大のチャレンジは働き方改革だ。多様な働き方が可能となるように社会の発想や制度を大きく転換しなければならない。生産性革命と人づくり革命で一億総活躍だ」
「働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段である」
そしてそれを連合と一体となって推進してきたことが重要です。
「政労使がまさに3本の矢となって取り組んでいくことが必要である」
「生産性の向上」とは資本のために有効に使う、ということであり、「一億総活躍」とは資本の側から労働力として活用し尽くすということです。「働き方改革」は資本による「生産性の向上」のため、成長戦略実現のために都合のいい労働市場をつくり出す、規制を壊すという本質が貫かれています。
- 解雇の金銭解決制度
「働き方改革関連法」には載りませんでしたが、労働市場の構造改革にとって、安倍政権が重視しているものに、解雇規制の撤廃と国家戦略特区があります。
解雇の金銭解決制度は、第一次安倍政権から明確に打ち出されています。厚生労働省の諮問機関・労働政策審議会が、裁判で不当とされた解雇の金銭解決制度の創設に向けて、具体的な制度設計に入り、2019年から解決金の上限額などを議論するとされています。経済同友会は、金銭水準について「賃金の半年分から1年半分の範囲内とすべきである」との意見書を発表しています。
すでに「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型へ」を掲げて、大企業のリストラを「労働移動支援助成金」という税金を投入して後押ししています。
日本では労働者の解雇に関して、戦後歴史的に積み上げてきた闘いの地平があります。動労千葉を中心とする国鉄分割民営化解雇撤回闘争は31年の闘いの中で勝利しています。解雇撤回の闘いは労働組合の団結の中心になってきました。また整理解雇に対しても、4つの要件を満たさなければ、「解雇権の濫用」として違法と判断されてきました。「人員整理の必要性」「解雇回避努力義務の履行」「被解雇者選定の合理性」「手続の妥当性」の4つです。
こうした労働者階級との力関係を解体しようとするところに安倍の攻撃の本質があります。
- 成長戦略実現のための国家戦略特区
2014年版の世界銀行の報告書によると、「ビジネスのしやすさ」において、日本の順位は27位です。ちなみに、1位がシンガポール、米国(4位)、韓国(7位)だそうです。安倍政権は、海外から日本への活発な投資や柔軟な人材移転を妨げているのがさまざまな規制であり、「岩盤規制」だと攻撃しています。この「岩盤規制」を破壊するやり方として安倍政権が打ち出したのが「国家戦略特区」構想でした。
中でも「雇用特区」を設けて、解雇ルールや労働時間規制を破壊する手法が狙われました。これは大きな反発に見舞われ実現しませんでしたが、安倍の狙いをあけすけに語っています。解雇ルールに関しては、特区内の企業と労働者の間で解雇の条件や手続きを事前に労働契約で決めておけば、解雇をめぐる裁判でも契約に基づいた解雇を有効とするというものです。労働時間規制に関しては、週40時間が上限という労働時間の規制を適用しない(ホワイトカラーエグゼンプション)というものです。
国家戦略特区に指定されていた加計学園問題は、安倍の成長戦略が汚職と腐敗にまみれていることを暴き出して、安倍を追いつめています。
- 安倍政権との闘いは労働組合の問題
安倍首相は10月国会冒頭の施政方針演説であらためて改憲への意欲を語りました。中曽根康弘以来の、労働組合と改憲・戦争をめぐる重大な局面に私たちは立っていると思っています。
安倍は、連合を「成長戦略」実現のパートナーとして支配しようとしています。その手先になっているのがUAゼンセンです。UAゼンセンはもともとは繊維産業を主とする産業別労働組合でした。それが企業と一体となってユニオンショップ協定を結び、非正規労働者も含めてまるごと労働組合に加入させる形で拡大しました。流通・情報・化学など多方面の産業を組織して、組合員160万人の連合最大の組織になりました。UAゼンセンは、改憲・徴兵制推進の右翼労働組合です。極右・日本会議がUAゼンセンを育成したと言えます。このUAゼンセンが昨年の10月の連合大会で会長に就任して連合を牛耳るという一歩手前まで行きました。安倍の「働き方改革」はこれと一体で進んできたのです。
しかし、「働き方改革」と安倍の改憲・戦争・国家主義に対する組合員の怒りがこれを破綻に追いやりました。連合の重大な分岐が始まっています。私たちは、この情勢の中で、国鉄分割民営化以来の新自由主義に対して歴史的決着をつける闘いが必要であると思っています。動労千葉の解雇撤回と外注化・非正規化に対する闘いを軸に、国鉄闘争をあらためて労働者階級の結集をはかっていかなければなりません。
また私たち合同一般労働組合全国協議会は、まだまだ弱小組織ではありますが、新自由主義の中で生きるために立ち上がる労働者とひとつひとつ結びつき、全国に闘う労働運動の拠点を建設して、闘いの陣形を作り上げていきたいと思います。
韓日の血の通った国際連帯闘争はその大きな力になると確信しています。みなさん、どうもありがとうございました。