ブラック企業セブンイレブンと対決する(河野正史インタビュー記事)

23 4月 by gungoroso

ブラック企業セブンイレブンと対決する(河野正史インタビュー記事)

雑誌「序局」第19号(2018年9月)に掲載されたコンビニ関連ユニオン(準)代表で千曲ユニオン副委員長、セブンイレブン本部社員(OFC)の河野正史のインタビュー記事を掲載します。
まだ社会的には24時間営業問題など問題にもならなかった昨年秋の記事ですが、河野代表とコンビニオーナーの長い闘いが切り開いた現在であることがわかります。

東大阪市の時短営業中の松本オーナー(左)と握手する河野正史コンビニ関連ユニオン(準)代表

ブラック企業セブンイレブンと対決する

コンビニオーナーも労働者だ

労働組合のもとに団結しよう

不当労働行為を長野県労働委員会に申し立てた河野正史さん(千曲ユニオン副委員長)

コンビニ業界最大手にして、最も有名なブラック企業であるセブンイレブンから労働者の反乱が始まった。昨年(2017年)2月に降格され年収にして約150万円減給された河野正史(かわのまさふみ)さん(44歳)が所属する地域合同労組・千曲ユニオンは、今年(2018年)3月5日付でセブンーイレブン・ジャパン本部を相手に、長野県労働委員会に不当労働行為救済申し立てを行った。3月30日に長野県庁内で開いた記者会見は、大きな反響を呼んだ。河野さんから、不当労働行為を労働委員会に申し立てた経緯や、コンビニ業界のブラック体質、今後の展望などについて縦横に語っていただいた。(聞き手佐藤路世)

約150社のグループ会社「セブン&アイ・ホールデイングス」の筆頭にあるのが「株式会社セブンーイレブン・ジャパン」です。セブンイレブンは、もともとはイトーヨーカドーの子会社でしたが、フランチャイズ方式のコンビニ経営で、外注化・分社化・非正規職化の先端を走り、今やグループ企業のトップです。

災害時、自衛隊に先導されて金儲け

まず、初めに、どうしても言っておきたいことがあります。

今年7月の西日本豪雨で、被災地が壊滅的打撃を受けて、道路や交通が閉鎖されている時に、警察のパトカーと自衛隊の車に先導されたセブンイレブンのトラックが、泥をかぶっていないセブンイレブンのお店に物資を供給しました。これが被災者への生活支援物資として無料で配られたなら分かりますが、お金を失って買えない人がいる中で、セブンイレブンが生活必需物資を通常営業で売って金儲けをしたわけです。

西日本豪雨水害のあった店舗は、直後に120%売り上げが伸びています。セブンイレブンだけでなくファミリーマートなどコンビニは、政府と自衛隊の力で交通遮断道路を通過して、店舗に物資を供給して売りさばいた。実は、「大規模災害時には自衛隊の要請にこたえる」という協定が結ばれていることが分かりました。官邸や河野太郎のツィートによると、水と食料を被災地に送り、次のニーズにこたえる協定がある、などと書いています。だとしたら、無料が世界の常識、日本では金がなければ生きのびられない。

四国や広島、岡山では、オーナーさんもパートの店員さんも、工場さえも被災しているのに、セブンイレブンなどコンビニ資本は、国家権力と組んで、災害に乗じて強権を発動して独占的に金儲けする、こんなことは許せません。

千曲ユニオンとしては、安倍首相らが酒を飲んでへべれけになっていた7月5日の夜、大水害時に被災地の加盟店に対して千曲ユニオン・アピールを出しました。「セブン本部が営業をし続けるように指示しても、もし、命の危険が迫るような時には、逃げてください、身の安全を守って店を放棄してください」と各店舗に連絡しました。というのは、2018年2月6日から7日にかけての福井大豪雪の時に、「24時間営業義務」の停止を本部に問い合わせたら、「閉店は認めない」と言われて、オーナーさん夫婦が48時間働き続け、倒れた例があったからです。千曲ユニオンの連絡に西日本豪雨の被災地のオーナーさんたちが「本部は何も連絡してこない」と不満をもらし、「うちの従業員はみな無事でした」などとメールで反応してくれました。

ここで千曲ユニオンが言いたいことは、「コンビニオーナーは、労働者なのだ」ということです。コンビニオーナーは、「小企業経営者なのだから、労働者ではない」という言い方で、事実上24時間、365日拘束されています。本部に指揮命令、拘束されて、災害時でも閉店もできず、日頃から長時間労働をして、団交権もないし労基法も適用されないのが実態です。

多くのオーナーの実態は、多額のチャージとして売り上げの半分も本部に持っていかれて、店舗労働者の賃金と賞味期限切れ廃棄分、万引き分など差し引くと、過酷なものがあります。複数店舗を経営しているとそれなりの年収にいくのが普通ですが、店舗従業員は仕事はハードなのに最低賃金レベルですので、定着率は低く、慢性的な人手不足で、そのために、深夜時間帯などはオーナーやその家族が365日入らざるをえないケースが多く、オーナーや家族が過労で倒れたり、過労死する例がまれではありません。自ら廃業していくオーナーが増えているのが最近の実情です。それでも店舗経営者だからと我慢させられています。これでは過労死に追い込まれるまで働かされるし、災害時にも、まるで「滅私奉公」のように店を開けさせられています。オーナーにも生きる権利がある。奴隷じゃない!と言いたい。

千曲ユニオンが「オーナーも労働者だ」と主張するのは、労働者だから、労働力は売っても命までは売っていない1と確信を持ってもらいたいからです。オーナーも労働者だから労働基準法も適用されるし、労働組合を結成する権利もあるし、スト権もある。大災害の時や、オーナーや従業員の生命や健康を守るにはストをやって店を閉める権利もある!ということが言いたいからです。

コンビニ業界に就職して

次に言いたいことは、コンビニ業界の特質としてのブラック体質と、私が千曲ユニオンとともに立ち上がるまでの経過です。

私がセブンイレブンに入社したのは2001年です。その前の3年間は証券会社に勤めました。証券会社に勤めることによって、資本主義の矛盾に気づかされました。株式の売買、信用取引とかデリバティブとか金融システムの矛盾に気づき、転職を決意しました。

転職先を探して、こんなに利益を出している優良企業ならつぶれないだろう、と思ったのと、何より私は農学部出身なので、食品の安全に関われたらいいと思ってセブンイレブンの中途採用試験を受けました。あっさりと「来週から来てくれ」と言われました。後から知ったのですが、新規採用は毎年400人ぐらい、そのうちほとんどは、5年でやめてしまいます。就業規則で「年功序列賃金は30歳まで」と決まっている、そういう職場です。

私は、オペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC)という職種で、お店のサポート、本部への不満を聞きとったり、相談に乗ったりする仕事をしていました。OFCという職種には「みなし労働制」が適用され、長時間労働はごく普通のことでした。

セブンイレブンは、全店舗に商品発注のためのストアコンピューターを置いて管理しています。そして「単品管理」という発注方式を洗脳され、多くの発注を入れる仮説をたてます。もちろん賞味期限切れ商品が大量に出ます。異常に多い賞味期限切れ廃棄商品はお店経営の損失になります。「廃棄物をなくすために発注数を減らしたい」とお店は言うのですが、そういった時に相談に乗るのがOFCの仕事です。

ところが、本部は、おにぎり重点販売方針だとなると、200個しか売れないお店に、無理に300個注文させる。発注が増えれば本部は儲かる、お店は損失が増える。OFCとしては会社側につくのか、オーナーさんの苦情に耳を傾けて発注を適正なレベルにするとか、板挟みにされる大変な仕事です。

とりわけクリスマスのケーキや恵方巻きなどの予約競争をさせる時には、本部の至上目標数字がまず「ありき」で、お店は、注文させられて揚げ旬に廃棄する。私の個人的経験でも、予約させられたクリスマスケーキを20個ぐらい廃棄しました。

OFCは、そういう本部と店舗の板挟みに立たされ、多くのOFCは本部の日大アメフト部のような体育会的なパワハラに負けて、儲け至上主義に従い、オーナーさん、地域の人びとを苦しめる側に立たされてしまいます。私は、オーナーも労基法上の労働者だから、過剰な負担は拒否できる、と説得して、お店の味方として仕事をしました。

上司の絶対命令と「自爆営業」

2001年に、入社して初めに「上司の言うことは絶対です」と言われました。例えばこういうことがありました。当時の鈴木敏文会長が「キャベツの浅漬けがおいしい、浅漬けは、各店1日30個ぐらいは売れるはずだ」と発言したため、各店舗に30個置くことになりました。実際には売れないのに注文させられ、その結果、お店に負担をかけられないOFCは自分で買い支えをしました。「自爆営業」ですね。

入社時に次に言われたことが「労働組合は認めない」ということです。本社では、朝礼があって、上司の指示を「すべてを受け入れる」という態度表明として「(分かりま)した!した!」という大声を上げなければならないのです。「奉仕の精神をもって仕事をします」という「誓いの言葉」を大声で読まされます。まるで宗教団体のようです。セブンイレブンは、そういうやり方で働く人を強権支配しています。

私は、千葉の茂原市にある直営店で1年間は店員として、2年間は店長として働きました。セブンイレブンは、全国2万店舗あるのですが、500店舗ごとに10店舗くらいの割合で本社直営店になっていて、直営店で新入社員教育をしています。直営店は本社の言う通りを実行しますから、利益はゼロかマイナスで、店長らの過重労働で成り立っています。私が直営店で働いた当時は、自宅よりも店にいる時間の方が多かったです。深夜勤務予定のパートさんが欠勤した時など、朝7時に店に出て、深夜の1時、2時まで立ち通しで働き、ようやく帰宅する。家に帰ると玄関で倒れてしまうという生活でした。

そこに管理者(DM)が見回りにきて、相談に乗るのではなく「ゴミが捨ててない、お店のわきに雑草が生えている、商品の並べ方が間違っている」などと毎日言われました。少しでも反論すると「ふざけるな、言う通りにやれ」と脅され、暴力も振るわれました。

今回、降格処分への反論のために陳述書を書いたのですが、当時の苦しさ、口惜しさが思い出され、気分が悪くなってしまいました。

一日の客数が500人しかいない店に到底売れるはずのない数のクリスマスケーキを予約注文させられる。「前年より必ずプラスにせよ」という上からの命令で、お店は「自爆営業」を強制されます。「自爆営業」は、「自己買い」というれっきとした会社の制度・方針になっているのです。

動労千葉の労働学校で学ぶ

私の場合、茂原の店長時代に、動労千葉に出入りするようになって、パート店員さんたちに、労働基準法で有給休暇が取れるはず、と知らせて、皆に有給休暇をとってもらいました。動労千葉の労働学校に行き始めると、学校仲間が皆で私の体調を心配してくれて、動労千葉の組合員の方がわざわざ店を訪ねてきて「働き過ぎて体を壊すなよ」と声をかけてくれました。

国鉄分割・民営化後もJRと不屈に闘い続ける動労千葉の存在を知って、セブンイレブンの周りの労働者は苦しい中で皆辞めてしまうのだけど、自分は辞めずになんとか職場生産点で闘おうと考えました。動労千葉前委員長の中野洋さんの『甦る労働組合』を読んで感動し、中野さんから本に「セブンイレブンをにぎれ、天下国家を!」という一筆を書いてもらいました。動労千葉労働学校生徒の皆さん、中野さんの言葉は、今も私の支えになっています。

店長をしていると、すべてのシステムが本部の儲けのためだけにあること、そして今やコンビニは過剰資本になっていると、矛盾を実感します。セブンイレブンは、全国で約2万店舗になっているけど、これからはどんどんつぶれるだろうと思います。大量発注・大量廃棄のシステムは、私が直営店をやった経験では「利益がでない」仕組みです。その当時、私自身は、正社員としての賃金があったので店長をやれましたが、この仕組みでは「店舗オーナーは生活できない」と実感しました。セブンイレブンは、オーナーと店員、それに関連労働者の強搾取で成り立っている構造です。オーナーさんも入れる労働組合が絶対に必要だと感じました。店主は「小規模自営業者で、労基法で言う労働者でない」とよく言われますが、コンビニオーナーの実態は本部の指揮命令の下にあって働く労働者だと思います。

私自身は、いろいろ我慢して辞めず、誇りを持って働けるように努力し、直営店での研修後、最初は千葉地区のOFCになりました。OFCになって8店舗を担当し、店舗オーナーの悩みや苦情、売り上げを増やすための相談に乗りました。ほとんど休日なしの仕事でしたが、自分は誇りを持って働いていました。休日は週1日あるのですが、当時始まった「ナナコカード」「公共料金」「インターネット受付」など、店に分からないことがあると急に呼ばれるのです。

その上、OFCの仕事は、毎週火曜日(今は隔週)に東京の本部で北海道から九州、全国から参加する会議があります。会長の「ありがたい講話」を聴かされて、その後、個別会議の中で、予約注文など、成績の悪い人は立たされて、「何で販売数が伸びないんだ!」など大声で罵倒されます。立たされて罵倒されるのがいやなために、数字上の過剰な注文を増やすなどします。例えば、鈴木会長が「キャベツの浅漬けは各店30いくな」と発言したら、ゾーンマネージャーが各店に「会長の言うとおりにせよ」と指示します。数字上では、現場が「自爆買い」をしているのに、「会長の言う通りに並べたら売れました」ということになる。鈴木会長の「仮説と検証」という理論で、結論ありきの店舗への強制発注と成果発表が「自爆買い」を強制しているのです。

一人でも入れる労働組合に加盟

私の千葉時代は、店舗オーナーの側に寄り添い過ぎると、会議のたびに管理者から立たされて、あれやこれやと批判されました。私は、2005年8月2日に、当時は少なかった一人でも入れる労組、東京西部ユニオンに加盟しました。

そうこうするうち2006年3月7日に長野県飯田市に配転になりました。飯田市というのは東京から北海道よりも遠い所と言われています。名古屋まで新幹線で移動して、その後は自動車で中央自動車道を北上します。

2006年から3年間飯田市にいたのですが、この時にOFCとしてつきあった飯田の店舗オーナーさんたちとは、仕事を通じた信頼関係が強くあります。ちょうど、天皇の孫の誕生祝いの写真ポスターを店内に張れという話をめぐって、オーナーさんの中には、戦争体験者の方もいて、8店舗中、6店舗は写真をお店に張らないことになりました。この人たちが、私を支えてくれました。飯田時代は、残業代がでなくても日々の仕事が楽しく、やりがいがありました。

飯田時代の終わり頃、スピード違反で運転免許の3カ月停止処分を受けました。その直後に長野に移動になりました。長野に来た時は、3年以上経験のあるベテランOFCとして、後輩の相談に乗る指導・教育の仕事をしました。若いOFCの将来への不安やたくさんの相談に乗りました。長野に来て千曲ユニオンに加入しました。

2013年、会社側が8000人いる本部社員の36協定を締結する労働者代表を公募していることをメールで知って、応募して代表になりました。2013年4月に私が代表としてハンコを押しました。今回、セブン本部との団交に際して、36協定の資料を請求したところ、2013年に私が選ばれたはずなのに労基署への届出文書には別の人の名前が記載されていました。また、昨年あらためて36協定代表に名乗りを上げたら、「二度出ることはできない」と断られました。団体交渉で事実を明らかにして「おかしいじゃないか1」と抗議しています。36協定にしてもあまりにいい加減で、ただ形式を整えているだけです。闘う本物の労働組合が必要です。

「ブラック大賞」受賞と青年の自死

2015年にセブンイレブンは「ブラック企業大賞」を受賞しました。その時、私は情けない、と思いました。闘う労働組合があれば、ブラック大賞などとらなかったはずです。どれだけ多くの人が退職しなくて済んだか、自殺しなくて済んだか、と思います。

実は、2013年に飯田市のOFCをしていたT君という青年労働者が、地区マネージャーから激しいパワハラを受けて、急にいなくなり、亡くなったと知りました。その情報が入り、私は人事部を相手に「仲間が知らないうちにいなくなり、亡くなりましたと聞く、こんな職場でいいのか」と激しく抗議しました。弔い合戦をしなければ!と心に誓ったのです。

私は、仲間の自殺に、ここで立ち上がらなかったら労働組合員として意味があるのかと悩み、2013年10月、今度は私自身が過労うつ病になってしまいました。医者に行くと、「即刻すぐに休め」と指示されました。5カ月間仕事を休むことによって、この何年もの間、24時間、365日、仕事のことを考え続けた自分が、辛くも死なないで生きていたなと気づきました。

*ブラック企業大賞労働相談に取り組んでいる弁護士や市民団体、ジャーナリストなどで作られた実行委員会が毎年選ぶ。最も労働条件の悪い企業を選定する。

予約注文合戦と降格処分

私への不当労働行為、減給攻撃について話します。

私は、お店のオーナーとともに本部の間違ったやり方には抗議の声を上げてきました。予約注文合戦のことですが、飯田の管理者が「おせちの注文を早めにとれ」「予約初日が勝負だ」と言い出しました。私は長野の仲間と一緒に「おせちはおせちの時期が来たら普通に頑張ろう」と話し合いました。飯田の管理者が管轄している店は、初めのうちこそ一番でしたが、真っ当なやり方をした私たちの長野地区が、最後は逆転勝利しました。このことを会議で報告し「ウサギとカメの競争では、真っ当な努力をしたカメが勝つ、お店とお客様のタイミングに合わせた、あたりまえのやり方をすれば、それが結果としての数字を出す」と発言しました。そうしたら、会議主催者に、露骨にマイクの音量を下げられ、発言を妨害されました。

それぞれのお店の都合、工場の繁忙期との関係、物流運転ドライバーの仕事の関係など無視した無理な、早期予約の数字競争が、矛盾を生んでいるのです。セブンイレブンは、ドライバーのストライキに備えて、物流を多数の会社に外注しています。物流トラックのドライバーは、バラバラにされています。商品搬送車は、セブンイレブンのマークは同じでも、みな違う会社です。しかもコンビニ物流ドライバーは、基本一人乗務です。そのために二人乗務なら助かったのに、雪の中で倒れていて、運転手の命が助からなかった事件が新聞で報道されています。

このように店舗オーナーさんと一緒になって本部の管理者を弾劾したためでしょうか、労働組合運動をしている河野の存在が「うるさい」ということになったようです。2017年の2月、私の体調が悪い時に、本部から「OFCの仕事から外れてアシスタント役のAFCになってくれ」と言われました。明らかな降格です。「16年10月頃体調悪かった」「17年1月と2月に欠勤があった」というのが理由です。

私は、長野の主治医のカを借りて、自己努力の結果、心身のバランスをとるようにして仕事に迷惑はかけていません。主治医も産業医も「異動の必要性」を認めていないのに、上司が勝手に「健康のため」を口実にした降格異動は認められません。

会社は「降格」とは言わず「OFCから外れてみよ」という言い方をしました。結果は、降格と賃金引き下げです。生活できない賃下げで、私が退職することを狙う攻撃です。私は「納得いかない!」ということで17年3月から異動の撤回を求めて会社本部と団交を重ねてきました。

そして、今年3月、長野県労働委員会に救済申し立てをしました。救済申し立てをめぐる記者会見の後、いろいろな人から声をかけられ、反響の大きさに驚いています。「正社員の中から立ち上がってくれて本当にうれしい」とか、すでにセブンイレブンを辞めた人が「とうとう立ち上がった人に感謝したい」と声をかけられ、また多くの手紙を受け取りました。

店舗オーナーの人たちも、本部の強権支配の中で立ち上がることの困難を分かっているので、記者会見で知って、喜んでくれています。今年のメーデーの時のビラの受け取りはすごかったです。信濃毎日新聞に3月の記者会見の写真が出たので、長野の街を歩いていると「セブンイレブンの人ですね、新聞で見ました」と声をかけられます。

千曲ユニオンニュースをこれまでにNo.11まで出してきました。これを担当地域にビラ入れしています。ビラを入れるとお店の様子がよく分かります。千曲ユニオン労組員がビラをおいて話し込んでいます。地域合同労組は垣根を越えて団結し闘える労働組合です。私は、人がいない時、倒れられた時、冠婚葬祭の時、オーナーの頼りになる仕事をしてきました。セブンイレブン闘争を軸にして仲問の団結が広がっています。全国どこでも同じことをやれば合同・一般労働組合全国協議会のビラが全国のお店や工場に伝わります。

「店舗オーナーも労働者だ」という立場に立って「資本」と闘う、このことをはっきりさせることだと思っています。

コンビニ関連ユニオンをつくろう

これからの闘いについて話します。

私たち千曲ユニオンは、三大要求を掲げて本部と団体交渉をしています。三大要求、その第一が、コンビニの24時間営業強制を廃止すること、第二に、本部責任で、パートやアルバイト、店舗従業員の社会保険を全員加入させよ、そして第三が、いわゆる自爆営業(自己買い)の根絶!という要求です。

第一と第二は、店舗との契約事項であって、千曲ユニオンとの団体交渉事項ではないと会社側は逃げていますが、実質的には団交になっています。それは、私たち本部社員の労働条件は24時間営業や店舗の労基法違反、社会保険にも入れない最低賃金労働と表裏一体だからです。千曲ユニオンの団体交渉でかなり押し込めると思っています。この本部との団体交渉に、全国1万4000人の店舗オーナーさんが入ってくれれば、壁を突破できる可能性があります。

コンビニは非正規・低賃金の職場

アメリカのハーバード大ビジネス校は、日本のトヨタ自動車のカンバン方式と、セブンイレブンのフランチャイズ経営の二つを教材として教育、研究しているそうです。セブンイレブンは、大型スーパーマーケットであるイトーヨーカドーの子会社として出発して、独自の発注システムや商品管理、強搾取の低賃金で利益を上げて逆転し、今や小売業界のトップに躍り出ています。しかし、その先頭に立った鈴木会長が、創業者一族との抗争に敗れて16年4月に失脚しました。そして今は株式の4割以上を創業者伊藤財閥が支配しています。それは、新自由主義の時代の「1%対99%」の対立の構図そのものです。セブンイレブン資本を倒さないと、フランチャイズ方式で高額のチャージを搾取し、本部統制で詐欺的な営業をするやり方が大手を振ってまかり通り、広がってしまいます。

今では、本来公的な役所の窓口の役割、銀行窓口の役割、警察・消防の窓ロの役割などもコンビニがやっています。セブンイレブンが開発したコンビニ方式が全国に広がった、その方式をとる同業他社ファミリーマートなどと比べても明らかに低賃金なのが、セブンイレブンです。セブンイレブンこそが、社会保険さえない非正規職・低賃金労働を拡大し、「民営化・規制緩和・団結破壊」「外注化・分社化」を広めた、と思っています。セブンイレブンは、正社員でさえ30歳で定期昇給ストップ、いやなら辞めてくれ、という雇い方で、労働組合をつくらせない。だが今、全国のセブンイレブン労働者は、地方ごとバラバラだけれど、各地の地域合同労組に加盟し始めています。

全国のセブンイレブン始めコンビニ業界で働く労働者の団結をつくり出し、千曲ユニオンがその拠点となるという展望をもって闘っています。

そして、私が結論として一番言いたいことは、今年9月のUAゼンセン大会に合同・一般全国協として、戦争と改憲をめぐる階級的対決構造をつくりだしたいということです。本社社員、コンビニオーナー、パート店員、外注化された工場労働者や物流を担うドライバーたちなど、すべてのコンビニ関連労働者の団結体を全国規模でつくって、合同労組として立ち上げ、UAゼンセンをぶっかくような闘いを全国化したいと決意しています。

店舗オーナーさんや店員さん、工場労働者や物流ドライバーさんの過重労働、不当な犠牲が押し付けられていると思います。

労働委員会に提出する準備書面をつくっていて、店舗オーナーさんの証言が重要でした。店舗オーナーは、「経営者になりましょう」と甘い声をかけられていますが、実は本部の指揮命令下の労働者であること、労基法を無視した長時間労働で初めて成り立つのがコンビニ経営であること、現場の労働者は、過酷なまでの低賃金労働で、そのため東京の店でレジを打っているのはほとんど外国人労働者、というのが現実です。外国人労働者を含めて、コンビニ関連で働くすべての人が、職種や職場を越えて団結する労働組合を何としてもつくりたいと決意しています。

コンビニの労働者の闘いは全国に広がるし、それをやるのはわれわれです。正規と非正規の団結、オーナーさんも実は労働者だという階級的見方が勝利のカギです。社会を動かしているのは自分たち労働者だということです。

安倍倒し改憲阻止!大行進の運動を

今年9月のUAゼンセン大会は、9条2項をなくすという改憲方針を審議します。安倍政権の改憲攻撃の先頭に立つUAゼンセン大会執行部に対する対抗軸となる存在をめざして千曲ユニオンは頑張ろうと思っています。

安倍の「改憲と働き方改革」攻撃と真っ向から闘う労働組合があれば、たとえ、働き方改革法が法律として国会を通っても、職場で抵抗し、反対できる。社会を動かしているのは労働者だから、誇りを取り戻し団結すれば労働者の力は大きい。団結すれば生きられるという確信を広めたい。過労死で亡くなった労働者のご遺族、お母さんが国会前で発言され、記者会見で語っておられます。亡くなった伸間のことを忘れず、過労死をなくすために闘います。

千曲ユニオンの記者会見が新聞で報道され、昔担当したオーナーさんから手紙をもらい、「河野さんと一緒に働いた時代は楽しかった」「勇気づけられた」と聞いたり、声をかけられたり、闘ってよかったと実感しています。現場で働く人の判断の方が、会社の指令より重いし、正しい。

地域のお客さんの声、みんなの気持ちは、資本家には絶対に分からない。本部社員は資本の側につくか、みんなの側に立つかの間にいる。資本の利益のためではなく、工場やお店やトラックや事務所など、すべての働く人びと、多くの人びとと一緒に考え、問題を解決し、生活が成り立つ社会をめざして、闘い続けたいと思っています。

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